米国やEUの下着市場で存在感を示すスリランカ製品
TPPが発効すれば、スリランカがアメリカに輸出する衣料品のシェアのうち9~17%分が、TPP参加国のベトナムに奪われると予測されている。しかしながら、一部の経済アナリストたちは、大した問題にはならないと見込んでいる。その理由として、スリランカの衣料品セクターは非常に洗練されており、ベトナムよりも先進的であるためと説明する。
貿易データを見るとそのことは明らかだ。アメリカに向けたベトナムの衣料品は2014年に合計92億ドルで、それに比べ、スリランカは僅か20億ドルを下回る輸出量だった。しかし、衣料品の種類別で見ると、スリランカ製の4分の3以上は、ベトナムよりも高いマーケットシェアを占めている。
「スリランカ製のブラジャーは、EU圏とアメリカのいずれに対しても、中国に次いで2番目に多く供給し、それぞれの市場で10%のシェアを誇っています。水着は、アメリカ市場で8%のシェアを獲得し、中国とインドネシアに続き3位なのです」とスタンダード・チャータード銀行は説明する。
ベトナムもじきにスリランカの技術力に追いついてくるだろう。今の競争力、そして成長を維持するために、スリランカは絶えずベトナムの先を行き、バリューチェーンに磨きをかける必要がある。
スリランカの大手衣料品メーカーは、TPPを利用してアメリカとの貿易を拡大できるよう、ベトナムにアパレル工場を設立する計画に目を向けている。かつて切り縫いのみに注力していた衣料品産業も、今やグローバルなアパレル業界に対してサービスを提供する立場へと進化し、国際的な衣料ブランドに向けて、デザインやマーケティングのサービスを提供しているのだ。
日本やEUとも関係を深めるベトナム
TPPの他に、ベトナムは2016年初頭にEU圏と自由貿易協定を結び、日本とも同様の協定がまとまりつつある。これが意味するのは、ベトナムは最大衣料品輸入国の3ヶ国に優遇されるということだ(EU圏、日本、そしてアメリカは世界で製造された衣料品の80%を輸入する)。スリランカは、EU圏が衣料品輸出に対する関税を免除する一般特恵関税の優遇関税(GSPプラス)*を近いうちに再開させることに期待している。
中国もまた巨大な衣料品輸入国として台頭してきている。スリランカは中国と交渉を進める際には、このことを念頭に置くべきだろう。
*一般特恵関税(GSP)
GSPとは、貿易の拡大によって開発途上国の経済発展と、ガバナンスの向上を目指し、開発途上国からの輸入に対し、先進国が関税の免除または軽減をするメカニズムのこと。またその中でもGSPプラスは労働・環境・人権の分野における基準を満たす途上国に対し、特別の貿易特恵を与える制度であるが、スリランカは人権問題の懸念から、EUによるGPSプラスの適用からはずされている。