各国が批准に向けて国内調整を進める環太平洋経済連携協定(TPP協定)。TPPには衣料品輸出分野でスリランカのライバル的関係にあるベトナムも加盟していることから、協定の発効によるスリランカのアパレル業界への影響が懸念されています。この問題について全2回でお伝えします。

TPP発効で、ベトナム製が価格面で優位に

これからの10年で、スリランカがアメリカに向けて輸出する衣料品のうち最大17%のシェアを、ベトナムに持って行かれてしまうかもしれない。スタンダード・チャータード銀行は、数年のうちに各参加国によって批准される予定の、ベトナムも参加している環太平洋経済連携協定(TPP協定)による影響を分析してレポートした。

 

アメリカに向けて輸出されるベトナム製の衣料品は、TPP協定が発効された場合、スリランカよりも10~14%安くなるとされる。TPP協定はアメリカとその他11ヶ国による貿易協定で、ベトナムもその参加国のひとつだ。数年のうちに参加国により批准される予定であり、TPP参加国を合わせると全世界のGDPの4割を超える巨大貿易圏となる。

 

2015年の指標では、アメリカはスリランカで製造される衣料品のうちの44%、金額にして21億ドル相当を輸入している。スタンダード・チャータード銀行は、TPP協定が発効されなければ、スリランカからアメリカへの衣料品輸出は2025年までに110億ドルに増えるが、TPP協定が発効されれば、このうちの9~17%がベトナムによって奪われると予測している。

スリランカのFTA締結は対インド・パキスタンのみ

物品、サービス、投資、そして政府調達までもを対象にしたTPP協定は約10年の交渉期間を経て、オーストラリア・ブルネイ・カナダ・チリ・日本・マレーシア・メキシコ・ニュージーランド・ペルー・シンガポール・ベトナム、そしてアメリカによる批准手続きが進められている。

 

TPPが発効すれば、各参加国の関税のうち92%が一気に下がり、合計2兆ドルもの関税がゼロになる。一方で、スリランカが締結した自由貿易協定(FTA)はインドおよびパキスタン間の2協定のみで、自由化できた関税分類品目も80%に達しなかった。またいずれの協定も物品・サービス・投資、そして人の移動以上のことを対象にできなかった。

 

後半は、ベトナムにはないスリランカの強みについてお伝えします。

この連載は、GTACが提携するスリランカのメディア「ECHELON」が2016年4月に掲載した記事「VIETNAM MAY GRAB A TENTH OR MORE OF SRI LANKA’S US CLOTHING MARKET SHARE AFTER TPP」を、翻訳・編集したものです。

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