相続人の要望を踏まえた遺産分割の方法を示す
POINT6 遺産分割協議書案をあらかじめ作成して反故にしない
これまで紹介してきた通り、隠しごとが露呈する場合の多くは、トラブルの発生が原因です。各種の訴訟はもちろん、税務調査などにより相続がスムーズにいかないと、事態を明らかにしようとする動きが始まり、隠されていた事実が見つかってしまうのです。ですから隠しごとを露呈させないためには、「円滑な相続」こそ一番大きなカギと言えるのです。
そこでおすすめなのが、遺産の分割方法を記した「遺産分割協議書案」を社長の生前に作成することです。相続人の要望を聞きながら、いろいろな配慮を盛り込んだものを作り、子供たちなど相続人全員の承認をもらっておけば、トラブルを防ぐ効果は遺言書以上です。
また、自分の一方的な決定で作成できる遺言書に比べて、自分が亡くなった後の協議書作成にかかる相続人同士の調整とそのトラブル処理がどれだけ大変かがわかるでしょう。そして、相続人の方々が抱いている自分への想いや、彼らに対する自分の想いも改めて知ることができるのです。
法的な効力はないが、秘密の拡散を防ぐことは可能
ただし、法的に絶対的な効力がある遺言書に対して、生前に作成した「遺産分割協議書案」には法的効力があるとは言えず、万全ではありません。相続の開始までに相続人が変わってしまったり、相続人の誰かが「手続きに納得できない部分がある」と主張したり、実印を変更したりすれば無効になるかもしれないのです。
とはいえ、相続人全員が納得できるものを前もって作っておけば、万が一隠しごとがばれた時にも相応な協議を持つ場ができ、最悪の場合でも秘密が拡散するのを防ぐことができます。「遺言分割協議書案」を基にして遺言書を作っておくのもよいかもしれません。
佐野 明彦
新月税理士法人 代表社員
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