労力も財力も必要な相続の「隠しごと対策」
POINT1 自分の死後に守りたいものは何か確認してみる
隠しごとを放っておくと自身の名誉や家族の幸せ、親族や友人との関係などが傷つきます。対策はいろいろとあるのですが、何を守るかによってとるべき手段は違ってきます。また、対策によって、難易度や実現するための負担が大きく異なります。
後で詳しく解説しますが、別会社を設立したり各種の契約を結んだりと専門家の助けなくしてはとれない手段も多々あります。
相続における隠しごと対策は「一つの事業」と言っても過言ではないほど大変なことなのです。ですから対策を考える時には、最初に「死後も守りたいものは何なのか?」をしっかり確認してみる必要があります。
ただし当然のことながら、秘密を知られたくない人の範囲が大きくなれば、隠しごとの対策は難しくなります。ましてや最も親しい妻や家族にもばれないよう、秘密を墓場まで持っていくには非常に大きな労力と出費が伴います。
生前にトラブルの元を断っておくためには、お金で処理せざるを得ないことも多々あります。相続対策においては本末転倒ですが、財産を大きく減らす覚悟までする必要があります。妻にも家族にも告げず、死後も秘密を守り抜くというのはそれほど大変なことなのです。
死後も秘密を守り抜くのは「家族への思い」ゆえ!?
わかりやすいようそのレベルをHIGH、MIDDLE、LOWの三段階に分けてみました。
機密度HIGH:一切を闇に葬り、妻、家族などすべての人に対する威厳を守る
〈対応〉
・秘密を知っている人物がのちに公開しないよう十分な経済的、心理的なケアを行う
・隠しごとが露呈するきっかけになりそうなデータ、物証の完全消去
隠し財産や借金、愛人、隠し子などすべての隠しごとについて、一切誰にも知られないよう秘密を守り通すのが「機密度HIGH」です。
死後の秘密に対する考え方は人それぞれ異なります。中には「自分はもういないのだから、死後に隠しごとがばれるのはかまわない」と考える人もいれば、「誰にも知られたくない!」とこだわる人もいます。人生観や死生観は人によって大きな違いがありますが、その違いが死後の秘密に対する考え方のギャップを生んでいると言えるのかもしれません。
加えて家族に対する愛情によっても、隠しごとへの思いは異なります。隠しごとの多くはもともと自分勝手な思いから発したものです。それでも「隠していた借金について心配させたくない」「受け入れがたい事実を知らせてショックを与えたくない」などと考えるのは、やはり家族を大切に思っているがゆえでしょう。
家族への思いがなければ「後は野となれ山となれ」と諦めることは簡単です。それを「死後も誰にも知られたくない」と頑張るのは、バイタリティのあふれるオーナー社長ならではと言えるかもしれません。