高齢になるにつれて発症のリスクが高まる脳梗塞。本連載では、書籍『脳梗塞に負けないために 知っておきたい、予防と治療法』(幻冬舎MC)より一部を抜粋し、国民病ともされる脳梗塞の種類や予防法、治療法を、医師である梶川博氏・森惟明氏が徹底解説します。
「ABI、baPWV検査」では、何が分かるのか
ABI検査(足関節上腕血圧比)は足首と上腕の血圧を測定し、その比率(足首収縮期血圧÷上腕収縮期血圧)を計算します。動脈の内膜にコレステロールを主成分とする脂質が沈着して内膜が厚くなり、粥状硬化ができて血管の内腔が狭くなる「アテローム動脈硬化」の進行程度、血管の狭窄や閉塞などが推定できます。
動脈硬化が進んでいない場合、横になった状態で両腕と両足の血圧を測ると足首の方がやや高い値を示します。しかし、動脈に狭窄や閉塞があると足首の方の血圧は低下します。動脈の狭窄や閉塞は下肢の動脈に起きることが多いとされるため、上腕と足首の血圧の比によって狭窄や閉塞の程度を数値化できます。
baPWV検査(上腕-足首間脈波伝播速度)は、心臓の拍動(脈波)が動脈を通じて手や足にまで届く速度を測定します。動脈壁が厚くなったり硬くなったりすると動脈壁の弾力性がなくなり脈波が伝わる速度が速くなります。腕と足の4箇所のセンサー間の距離と脈波の到達所要時間を計測し、計算式(両センサーの距離÷脈波の到達所要時間)にあてはめて得られた数値が高いほど動脈硬化が進行していることを意味します。
ABI、baPWV検査の方法は?
ベッドの上に仰向けの状態で両側の腕と足首に、血圧計の帯(カフ)、心電図の電極、心音マイクを装着します。ABIとbaPWVは同時に測定します。検査時間は10分程度です。
ABIの測定値が0.9以下の場合は、症状の有無にかかわらず動脈硬化が疑われます。下肢の比較的太い動脈が慢性的に閉塞し、足が冷たく感じたり、歩くとお尻や大腿の外側などが痛んだりと、「閉塞性動脈硬化症(ASO)」が進行すると、足先が壊死してしまうこともあります。
下肢血管エコー検査やMRI検査(下肢静脈MRV)を行い、血管の状態をさらに詳しく調べる必要があります。年齢によって異なりますが、baPWVの測定値が1400㎝/sec以上の場合は、動脈硬化が進行しており、くも膜下出血や、脳梗塞、狭心症や心筋梗塞などの病気にかかりやすくなっていると言われています。
※本記事は連載『脳梗塞に負けないために 知っておきたい、予防と治療法』を再構成したものです。
梶川 博
医療法人翠清会・翠清会梶川病院、介護老人保健施設、地域包括支援センター会長
森 惟明
医学博士
医療法人翠清会・翠清会梶川病院、介護老人保健施設、地域包括支援センター会長
日本脳神経外科学会認定専門医
日本脳卒中学会認定専門医
日本神経学会・日本認知症学会会員
広島県難病指定医、
広島県「もの忘れ・認知症相談医(オレンジドクター)
日本医師会&広島県医師会
日本医療法人協会&全日本病院協会広島県支部所属。
広島県広島市出身 1957年修道高等学校卒業、1963年京都大学医学部卒。
1964 聖路加国際病院でインタ−ン修了、医師国家試験合格、アメリカ合衆国臨床医学留学のためのECFMG試験合格、1968年京都大学大学院修了(脳神経外科学)医学博士。
1970年広島大学第二外科・脳神経外科(助手)、1975年大阪医科大学第一外科・脳神経外科(講師、助教授)。
1976年ニューヨーク モンテフィオーレ病院神経病理学部門(平野朝雄教授)留学。1980年梶川脳神経外科病院(現医療法人翠清会・翠清会梶川病院、介護老人保健施設、地域包括支援センター)開設。医学博士。1985年槇殿賞(広島医学会会頭表彰)、1996年日本医師会最高優功賞。
著者プロフィール詳細
連載記事一覧
連載脳梗塞に負けないために 知っておきたい、予防と治療法
医学博士
大阪府立北野高校を経て、1961年京都大学医学部卒。大阪北野病院でインタ−ン修了。
1961年アメリカ合衆国臨床医学留学のためのECFMG試験合格。
1967年京都大学大学院修了(脳神経外科学)医学博士。1968年日本脳神経外科学会認定医。1969年京都大学脳神経外科助手。
1971年シカゴノースウエスタン大学脳神経外科レジデント。1975年京都大学脳神経外科講師。1979年京都大学脳神経外科助教授。1981年高知医科大学(現高知大学医学部)脳神経外科初代教授。
1992〜1999年厚生省特定疾患難治性水頭症調査研究班班長。1992年第2回高知出版学術賞受賞。
1996〜2000年高知県医師会理事。1999〜2001年国際小児神経外科学会倫理委員会委員長。
2000〜2001国際小児神経外科機関誌「Child's Nervous System」編集委員。2000年高知大学名誉教授。著書多数。
著者プロフィール詳細
連載記事一覧
連載脳梗塞に負けないために 知っておきたい、予防と治療法