大手ハイテク株を中心に調整
4月以降の大幅上昇の反動
■今年の春以降堅調に推移していた米国株式市場ですが、先週木曜日からテクノロジー株を中心に大きく下落しています。9/2の終値から9/8までの調整は、NYダウで▲5.5%、S&P500種指数で▲6.95%、ナスダック総合指数に至っては▲10.0%に達しました。
■今回の相場調整の特徴は、大型テクノロジー企業の調整が特に大きいことです。時価総額が大きい銘柄の上記期間の下落率は、アップルが▲14.1%、マイクロソフトが▲12.5%、テスラが▲26.2%です。ただ、これらの銘柄の4月以降の株価上昇率は極めて大きく、その反動が表れていると見られます。
極端に増加したオプション取引
個別株オプションが株価変動要因に
■さて、今回の株価の大幅上昇と急落にはもう1つの特徴があります。それは個別銘柄の積極的なオプション取引が株価変動の背景になっていることです。ナスダック総合指数のコールオプション(あらかじめ決めた価格で株等を買う権利)とプットオプション(あらかじめ決めた価格で株等を売る権利)は、今年の6月以降コールオプションの取引高が大きく伸びています。コールオプションを買い持ちしている投資家は、株価の上昇時に利益を上げることができますので、株価の上昇にかけたポジションが極端に高まっていたことを意味します。
短期的に行き過ぎていた反動。次第に落ち着きを取り戻そう
■先週木曜日からの調整を受けて主要銘柄のコールオプションの取引高は先週木曜日比で約半減し、過去1年の取引高平均とほぼ同水準となりました。上値を追う動きは沈静化すると考えられます。また、プットオプションの取引は落ち着いており、下値不安が高まっているわけではないと思われます。
■一方、相場環境全般を見ますと、米国景気は緩やかながら回復傾向にあります。また、金融緩和は当面継続される見込みです。財政政策は、第4弾の財政支出が遅れていますが、株価の下落により事態の進展につながることが期待できます。また、いわゆる機関投資家などの市場参加者を広く見ますと、株式の上昇にかけたポジションは比較的低いとの指摘が市場では聞かれます。このように、今回の株価の下落は、短期的に行き過ぎていた相場の反動と考えることが妥当と思われます。
※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『急落した米国株式市場』を参照)。
(2020年9月9日)
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