めまい、頭重感、顔のしびれ…その身体の不調、「脳梗塞」かも

高齢になるにつれて発症のリスクが高まる脳梗塞。本連載では、書籍『脳梗塞に負けないために 知っておきたい、予防と治療法』(幻冬舎MC)より一部を抜粋し、国民病ともされる脳梗塞の種類や予防法、治療法を、医師である梶川博氏・森惟明氏が徹底解説します。

脳梗塞はどのようにして起こるのか?

脳梗塞を起こす血管の詰まり方にはいろいろあって、治療の仕方や予防の方法が全く異なる場合もあるので、鑑別診断が重要です。

 

正しい治療や予防のためには「鑑別診断」が重要 (画像はイメージです/PIXTA)
正しい治療や予防のためには「鑑別診断」が重要
(画像はイメージです/PIXTA)

 

詰まり方には大きく3通りあります。

 

1つ目は、比較的太い頸部および頭蓋内の脳動脈にコレステロールなどが沈着し(動脈硬化=粥状硬化)、動脈の内腔が狭くなったところに血栓ができて(狭窄や閉塞)、そこから先へ血液が流れていかなくなって脳の組織が死んでしまうもので「アテローム血栓性脳梗塞」といいます。

 

2つ目は、心房細動など不整脈を起こす心臓病により、心腔内にできた血栓がはがれて脳の動脈へ移動し、動脈を塞いで起こる梗塞で、これを「心原性脳塞栓症」といいます。

 

3つ目は、直径1mm未満の脳内の細い動脈が同じくコレステロールなどの沈着で詰まってできる直径15mm以下の小さな脳梗塞(ラクナ梗塞)です。

 

脳卒中の専門医は、脳梗塞の患者さんを診療するとき、まず本人や周囲の人たちの話を聞きます。その後、診察やいろいろな検査を行い、この3つのタイプのどれに当てはまるかを見極め、その上で治療を行っています。


ここで、重症の心原性脳塞栓の患者さんの例を2つ提示いたします。もっとも、脳梗塞はこのような重症の方ばかりではありませんので、その点はご留意ください。

 

1例目(図表1)は70代後半の男性。突然の意識障害と右片麻痺で発症しました。既往歴として心房細動があります。

 

[図表1]70代男性の症例

 

発症後1時間の単純CT検査にて、左中大脳動脈水平部に一致した高吸収値陰影(矢印)を認めますが、対側もやや高吸収値のため判断が難しく、左中大脳動脈の方がより高い(白色)ようです。MRA検査にて左中大脳動脈閉塞(矢印)と明瞭に診断できました。この患者さんは急性期を脱し、回復期リハビリテーション病棟で右片麻痺と失語症のリハビリを受けて在宅復帰されました。

 

2例目(図表2)は80代後半の女性。突然の意識障害と左片麻痺で発症しました。人工弁置換術を受けた既往歴があります。

 

[図表2]80代後半女性の症例

 


左図:発症後2時間の単純CTにて、向かって左側の右半分の脳の腫れのために溝が見えなくなっています。専門的にいえば、

 

1)右レンズ核の輪郭の不明瞭化

2)右島皮質の不明瞭化(Insular ribbonの消失)

3)右大脳半球全域における皮髄境界の不明瞭化

4)脳溝の消失(tight brain)

 

を認めます。

 

中央図:MRIの拡散強調画像DWIでは、右大脳半球のほぼ全域にわたる広範な高信号域を認めます。MRA(未提示)では右内頸動脈閉塞が確認されました。

 

右図:発症翌日の単純CTでは、右大脳は全般にわたって著明な脳浮腫を伴う広範な低吸収域(脳梗塞)となっています。この患者さんは意識を回復することなく急性期に亡くなられました。

 

以上、心原性脳塞栓の重症例ばかりの画像をお示ししましたが、他のタイプの脳梗塞も後でたくさん出てきます。また、画像診断も長足の進歩がみられています。CTや通常のMRI撮像法(T1,T2,FLAIR)では、梗塞巣の信号変化がみられない超急性期においても拡散強調画像(diffusion weighted image:DWI)では発症後30分~1時間頃より細胞性浮腫が高信号としてあらわれます(中央図)。

どのような症状が出たら脳梗塞を疑うべきなのか?

脳卒中全般にいえる特徴として、神経症状が突発することが挙げられます。脳梗塞では、閉塞した脳血管ごとに神経症状の出方が異なります。その血管の支配領域(栄養している領域)に応じた症状が出現するのです。

 

梗塞の部位や大きさにより、症候は多彩で程度もいろいろですが、意識障害、運動麻痺、感覚障害あるいは半盲、失語などの高次脳機能障害、頭痛や頭重感、ふらつきや失調症状、脳神経麻痺症状(物が二重に見える、顔面の麻痺やしびれ、物の飲み込みが悪いなど)が起こります。

 


したがって、神経症状の状況や発症部位から、どの血管が詰まったのかを推測することが可能です。例えば運動性片麻痺では、上肢に強い片麻痺であれば「中大脳動脈閉塞」を、下肢に強い片麻痺であれば「前大脳動脈閉塞」を、四肢麻痺や脳神経麻痺、意識障害であれば「脳底動脈閉塞」を推測します。また、ふらつき、めまい、失調症状などは小脳を栄養する動脈閉塞が推測されます。

 

まとめますと、脳梗塞では、主に以下のような症状が突然起こります。

 

・半身が突然しびれたり、動かしにくくなったりする(半身の脱力感としびれ感)
・平らなところを歩いていて、足がもつれたり、つまずいたりする(平衡障害)
・目の前が急に真っ暗になったり、ぐるぐる回るようなめまいに襲われたりする。また、視界の一部が見えなくなったり、あるいは片側が全く見えなくなったりする(視野障害)
・急にろれつが回らなくなったり(構音障害)、言葉が出てこなかったりする(失語)などの言語障害を来す

頭痛や頭重感:くも膜下出血や脳出血などの出血性脳卒中に比べると軽いのは通例ですが、頭重感は多い。ボーっとする(意識障害)。重症例では昏睡に陥ることもあります。

脳神経麻痺症状:
・ 物の飲み込みが悪くなる、食物や飲み物が口角からこぼれる
・物が二重に見える
・顔がしびれる

 

身体の運動機能に障害が起こって麻痺を来すことが多いため、あっけなく寝たきりとなります。通常、発作時に頭痛はない場合が多く(“痛くない脳卒中”)、意識を失うことはまれです。何回か発作を起こした場合、細い血管があちこちで詰まって小さな梗塞がたくさんできると、脳の働きが低下して、「血管性認知症」を起こすことがあります。ですから、症状や症状の出方には細心の注意をはらう必要があるのです。

 

※本記事は連載『脳梗塞に負けないために 知っておきたい、予防と治療法』を再構成したものです。

医療法人翠清会・翠清会梶川病院、介護老人保健施設、地域包括支援センター会長
日本脳神経外科学会認定専門医
日本脳卒中学会認定専門医
日本神経学会・日本認知症学会会員
広島県難病指定医、
広島県「もの忘れ・認知症相談医(オレンジドクター)
日本医師会&広島県医師会
日本医療法人協会&全日本病院協会広島県支部所属。

広島県広島市出身 1957年修道高等学校卒業、1963年京都大学医学部卒。

1964 聖路加国際病院でインタ−ン修了、医師国家試験合格、アメリカ合衆国臨床医学留学のためのECFMG試験合格、1968年京都大学大学院修了(脳神経外科学)医学博士。
1970年広島大学第二外科・脳神経外科(助手)、1975年大阪医科大学第一外科・脳神経外科(講師、助教授)。
1976年ニューヨーク モンテフィオーレ病院神経病理学部門(平野朝雄教授)留学。1980年梶川脳神経外科病院(現医療法人翠清会・翠清会梶川病院、介護老人保健施設、地域包括支援センター)開設。医学博士。1985年槇殿賞(広島医学会会頭表彰)、1996年日本医師会最高優功賞。

著者紹介

医学博士

大阪府立北野高校を経て、1961年京都大学医学部卒。大阪北野病院でインタ−ン修了。

1961年アメリカ合衆国臨床医学留学のためのECFMG試験合格。
1967年京都大学大学院修了(脳神経外科学)医学博士。1968年日本脳神経外科学会認定医。1969年京都大学脳神経外科助手。
1971年シカゴノースウエスタン大学脳神経外科レジデント。1975年京都大学脳神経外科講師。1979年京都大学脳神経外科助教授。1981年高知医科大学(現高知大学医学部)脳神経外科初代教授。
1992〜1999年厚生省特定疾患難治性水頭症調査研究班班長。1992年第2回高知出版学術賞受賞。
1996〜2000年高知県医師会理事。1999〜2001年国際小児神経外科学会倫理委員会委員長。
2000〜2001国際小児神経外科機関誌「Child's Nervous System」編集委員。2000年高知大学名誉教授。著書多数。

著者紹介

連載脳梗塞に負けないために 知っておきたい、予防と治療法

脳梗塞に負けないために 知っておきたい、予防と治療法

脳梗塞に負けないために 知っておきたい、予防と治療法

梶川 博 森 惟明

幻冬舎メディアコンサルティング

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