新型コロナウイルス感染拡大の影響がM&A市場に影を落としているものの、日銀による、潤沢な資金供給が買い手企業を後押ししたことで、2020年上半期のM&A件数は「11年ぶりの高水準」となった。今回は、株式会社ストライク執行役員広報部長の日高広太郎氏が、上半期M&A好調の理由や、下半期の見通しなどを解説する。

 

auカブコム証券の河合氏は「コロナ禍で業績が悪化する企業と改善する企業の差が大きくなり、『負け組』を『勝ち組』が吸収する大規模なM&Aが動きだすだろう」と予測。「大型のM&Aをきっかけに、株式市場に大量の資金が流入する可能性がある」と期待する。

 

『負け組』を『勝ち組』が吸収する大規模なM&Aが動きだす
『負け組』を『勝ち組』が吸収する大規模なM&Aが動きだす

 

M&Aをきっかけに株式相場全体が上昇することは珍しくない。たとえば、米ウォール街では週の初めにM&Aが発表されることが多いことから「合併の月曜日(マージャー・マンデー」という決まり文句がある。

 

昨年11月は米ネット証券の同業買収など、多くの買収が成立し、ダウ工業株30種平均が最高値を更新する場面もあった。企業が潤沢な手元資金を成長戦略に利用し、将来的な高成長に期待する投資家の資金が株式市場に流れ込む――。歴史的な低金利の中、日本でもこうしたシナリオに期待が高まっている。

 

復活の兆しがないわけではない。4~6月は金額未確定ながら、比較的大型の案件も散見された。三井E&Sホールディングスが、艦船事業を三菱重工業に譲渡する方向で協議入りしたほか、オリンパスはデジタルカメラなどの映像事業を、投資ファンドの日本産業パートナーズに年内をめどに売却すると発表した。

短期的には不透明感、一時的に案件枯渇も

中期的な期待とは裏腹に、短期的なM&A市場の動きは楽観できる状況ではない。日本企業のM&A件数は、1~6月期には総じて底堅く推移したものの、今年の夏場から秋口にかけては不透明感も漂っている。M&Aは通常、取引完了までに半年程度を要するが、コロナ感染の影響下、新規案件の仕込みや着手に遅れが出ているためだ。

 

市場関係者の一部からは、秋口にかけて一時的に案件が枯渇し、7~12月期のM&A件数は、前年実績に比べて減少するリスクがあるとの懸念も出ている。

 

取引金額の上位20は次の通り(金額は計画公表時のもの)。

 

1.三菱商事、中部電力と共同で蘭エネルギー企業エネコを子会社化(約5000億円)

2.アークランドサカモト、LIXILビバをTOBなどで子会社化(1085億円)

3.ニチイ学館、米投資ファンドのベインキャピタルと組みMBOで非公開化(約999億円)

4.前田建設工業、前田道路をTOBで子会社化(861億円)

5.総合メディカルホールディングス、投資ファンドのポラリスと組みMBOで非公開化(763億円)

6.米ベインキャピタル、三井E&Sホールディングス傘下の昭和飛行機工業をTOBで子会社化(694億円)

7.大王製紙、丸紅と共同でブラジルの衛生用品メーカー大手Santherを子会社化(584億円)

8.新生銀行、ニュージーランド最大手のノンバンクUDC Financeを子会社化(515億円)

9.ノーリツ鋼機、DJ・クラブ機器大手のAlphaTheta(旧パイオニアDJ)を子会社化(350億円)

10.豆蔵ホールディングス、投資ファンドのインテグラルと組みMBOで非公開化(344億円)

11.オーデリック、MBOで非公開化(306億円)

12.グローリー、セルフ注文・決済機器大手の仏アクレレック・グループを子会社化(242億円)

13.META Capital、澤田ホールディングスをTOBで子会社化(208億円)

14.SBSホールディングス、東芝傘下の東芝ロジスティクスを子会社化(199億円)

15.東海カーボン、炭素黒鉛製品メーカーの仏Carbone Savoieを子会社化(197億円)

16.ツムラ、漢方製剤用原料の中国「盛実百草」を子会社化(187億円)

17.共英製鋼、カナダのMCアルタスチールから電炉事業を取得(155億円)

18.タムロン、創業家資産管理会社のニューウェルを子会社化(144億円)

19.カルビー、サツマイモ加工卸のポテトかいつかを子会社化(139億円)

20.シャープ、NEC傘下のNECディスプレイソリューションズを子会社化(92.4億円)

 

 

日高 広太郎

株式会社ストライク 執行役員 広報部長

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