2020年は新型コロナの感染拡大により、ほぼすべての業界でイレギュラーな状況が続いている。それは不動産業界も同じ。果たして不動産市況は、今後どのようになっていくのか。考えていこう。

コロナ禍でもマンション価格は下がらない

不動産投資家において、一番身近な投資先である賃貸物件はどうだろうか。

 

これまで東京を中心とする首都圏のマンション価格は、東京での五輪開催が決定した後、順調に推移し、新築、中古ともに上昇を続けてきた。民間企業の調べでは、7年前と比べて、新築マンションの平均価格は約1.3倍、中古マンションは1.4倍になったという。

 

そのような好況のなかでのコロナショックだったが、マンション価格は経済の低迷に対してすぐに影響は受けない、というのが定説だ。

 

過去の例を見てみよう。1991年のバブル崩壊後、マンション価格は上昇を続け、下がり始めたのはその数年後だった。2008年のリーマンショックでは、その前から下落に転じていたが、その底値あたりで推移していき、2013年には上昇へ。2019年にはバブル期と同水準にまで到達している。

 

そもそも新築マンションは、土地の仕入れ、建築費、人件費などの費用を先行投資しているため、簡単に価格を下げることはできない。商品設計上の事情もあり、新築マンション価格は景気変動とは異なる動きをする。

 

また昨今、新築マンションの供給数が下降するなか、中古マンションのニーズは高まりを見せている。リノベブームなどもあり、いわゆる“新築神話”から解放され、近年、成約戸数の増加に合わせて、中古マンション価格も上昇している。

 

そのようななか、前出の沖村氏も「賃貸物件は、家賃が安定しているので、現在の価格に大きな変化は出ておら、安定感があります」という。人が生活するうえで絶対的に必要な衣食住の“住”をまつわる賃貸ニーズは、コロナ禍のなかでも顕著に推移していくと考えられる。

 

不動産投資家にとって、賃貸物件は今後も有力な投資先となりそうだ。しかし東京においては五輪というビッグイベントの開催が危ぶまれている。これは大きな懸念ではないだろうか。

 

「東京は引き続き、高いポテンシャルを持っている街です。2020年以降も、再開発は加速する傾向にあり、新たなビルの建設、新駅の開発、新路線の計画など、利便性を向上させる魅力あるものがたくさんあります」と沖村氏。

 

コロナ禍のなか、話題性には乏しかったものの、今年3月には「高輪ゲートウェイ」駅が暫定開業、6月には東京メトロ日比谷線「虎ノ門ヒルズ」駅が開業。「WITH HARAJUKU」「東京ミズマチ」「虎ノ門ビジネスタワー」「有明ガーデン」と続々と新スポットが誕生し、リニア中央新幹線の開業など、ビッグプロジェクトも控えている。

 

人口減少期に入った日本において、東京は人口増加が続く数少ない地域だ。国立社会保障・人口問題研究所の推測によると、東京の人口増加は、2030年まで続き、その後は減少に転じる。そのなかでも千代田区、港区、中央区を中心に、都心では人口増加が予測されており、不動産投資においても有力エリアといわれている。

 

さらに人口増加に加えて注目したいのが、単身者世帯の増加である。1世帯当たりの構成数は下がり続け、東京では2020年1.96人に対し、2040年には1.85人と予測。それによって単身者世帯数も増加すると考えられている(図表1)。このことからも、単身者向け賃貸物件の需要は、今後も高まり続けると予測されているのだ。

 

出所:東京都総務局総務局統計部人口統計課「東京都世帯数の予測」
[図表1]東京都の一般世帯数の推移 出所:東京都総務局総務局統計部人口統計課「東京都世帯数の予測」

 

もちろん、絶対はない。今回のコロナ禍により、リモートワークが拡大したのは前述の通り。それにより、東京にいる必要がなくなったと、地方に移住する流れも生まれている。また自然災害も見逃せない。首都圏直下地震の今後30年以内の発生率は 70%といわれ、不動産投資において大きな懸念材料だ。

 

今回のコロナ禍のように、いつ何が起きるかはわからない。状況をしっかりと見極める力が試されている。

 

 

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