アジア・オセアニアリートは堅調
経済活動再開を織り込む
■足元のアジア・オセアニアのリート市場はすべての地域で上昇しました。香港も反発に転じました。7月7日現在、アジア・パシフィック・リート指数(除く日本、現地通貨ベース)は5月末比+3.5%、香港は同+14.6%、シンガポールは同+3.2%、オーストラリアは同+0.8%となりました。
■香港は、中国政府の香港に対する関与を強める国家安全法を嫌気した5月の下落が押し目買いの好機とみられ上昇しました。シンガポールではサーキットブレイカーと呼ばれる厳格な外出規制の解除、オーストラリアでは低金利政策の継続などが下支えとなり、経済活動再開を織り込んだ上昇の動きが続きました。ただし、新型コロナ感染第2波や世界経済減速に対する懸念から、上昇は緩やかなものとなっています。
ネット販売需要高まり、物流施設、データセンターの選好続く
■セクター別の傾向をみますと、シンガポール、オーストラリアのリート市場では引き続きデータセンターや物流施設に投資するリートが選好されやすいとみられます。イーコマース事業者大手のアマゾンは、オーストラリアに超大型の物流施設を拡張することを示しました。オーストラリアでもネット販売の需要が加速度的に高まっており、効率的な物流体制の整備が急がれています。
割安銘柄の見直しや、香港のデモ鎮静化に注目
■シンガポール、オーストラリアのリート市場では、段階的に商業施設等の営業が再開される中で、過度にバリュエーション(価格評価)が低下した大手商業施設リートや住宅リートを中心とする割安銘柄への見直しが注目されます。オーストラリア政府は6月に新規住宅購入や増改築に対する補助金を発表しました。販売活性化に繋がれば住宅リートの支援材料になるとみられます。
■香港リート市場については、6月30日に香港国家安全法が施行され、暴力的なデモが減少するとみられるため底堅い推移を予想します。香港では、2019年3月の逃亡犯条例改正への反対を契機に断続的に国民のデモ活動が起き、香港リートが保有する商業施設等の営業にも影響を与えました。香港への証券投資を控える要因にもなっていたことを考慮すると、本件はひとつの転換点になりうると考えます。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『アジア・オセアニアのリート市場は回復続く』を参照)。
(2020年7月10日)
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2020年6月8日 アジア・オセアニアのリート市場は香港を除き反発継続