※本連載では『日本一社員が成長できる=幸せな会社』(クロスメディア・パブリッシング)より一部を抜粋し、現代を生きる日本人の「働き方」について、具体的な事例をもとに解説していきます。 ※税理士法人ネイチャー国際資産税にお金の相談をする

女性の「7人に1人は生涯未婚」という現代の在り様

◆女性もキャリアを積む時代

 

働く女性が増えていることは統計の数字にも表れており、その数字を見れば自ずと女性が働く理由も見えてきます。

 

まず、総務省の2018年の統計によると、日本国内で働く女性(15歳~65歳)は2946万人で69.6%。これは過去最高の数字で、7割近くの女性が何かしらの職業に就いていることになります。政府が掲げる「女性の活躍推進」の成果との見方もありますが、私が働く女性が増えていると感じる理由はそれだけではありません。

 

たとえば、2015年の生涯未婚率(50歳時の未婚割合)は、女性は7人に1人(男性は4人に1人)です。1990年は男女ともに生涯未婚率が20人に1人程度でしたので、結婚しない人は男女ともに大幅に増えたことになります。

 

また、平均初婚年齢も女性は29.4歳(男性は31.1歳)になっています。かつてと比べて今では5歳近く初婚年齢が遅くなっています。この初婚年齢は今後ますます遅くなることが予想されます。

 

さらに、結婚した後も継続して働く女性は増えています。2000年の共働き世帯は942万世帯だったのに対し、2018年には1219万世帯にまで増加しています。働く人の賃金がなかなか上がらないため、夫の給与だけでは子どもの教育費を賄えず、共働きを選択せざるを得ないという家庭の事情も大きいでしょう。

 

なお、離婚する夫婦は毎年20万組います。こちらは統計的に大幅な増減はありませんが、結婚して出産・育児を境に退職するケースは多いものです。しかし、いったんキャリアが途絶えてしまった女性が再び社会に出て新たにキャリアを構築していくことは、決して簡単ではありません。

 

企業としても、女性の社会進出が今後も加速していくなかで、女性が働きやすい環境をいかに経営戦略に組み込んでいくかは、大きな課題といえるでしょう。

 

子育てのジレンマ
子育てのジレンマ(※写真はイメージです/PIXTA)

 

「育休世代のジレンマ」企業の対応が求められている

◆子育てによってキャリアをあきらめない

 

もちろん当社では、結婚、出産、育児というさまざまなライフステージで、働き続けられる環境や制度の導入を重要な経営課題として取り組んできました。

 

たとえば管理職候補の優秀な女性社員が、自らの将来のライフプランやキャリアプランを考えるとき、「管理職に昇進して会社でバリバリ働く代わりに、子育てはあきらめる」。あるいは、「キャリアはあきらめて家庭に入る」、多くは二者択一しかないのが現実です。

 

「育休世代のジレンマ」という言葉があります。どんなに育休や産休といった制度が整った会社にいても、育休を経て復帰すると、仕事の責任や範囲が限定される部署へ異動させられたり、出世や昇進とは縁遠いキャリアコースに転換させられたりするケースが多いといいます。そして結局は自分の思いどおりのキャリアを歩むことができなくなり、ほどなくして会社を辞めてしまうのです。

 

私は、その両方、つまり子育てもしてキャリアもあきらめずに当社で働くことができるという環境を作ってあげることが、何より大事だと考えます。

 

結婚生活や子育てが大切な時期ですから、ある程度は仕事量もセーブしてプライベートな時間を充実させたいと思うのは当然のこと。優秀だからという理由だけで「会社のために責任のある立場で手腕を振るってほしい」とお願いすれば苦しめるだけでしょう。思いつめて、退職に追い込んでしまう可能性もあります。

 

そこで、会社に籍を置いたまま家庭や子育てに専念してもらえるように産休・育休や時短の勤務体制を選べるようにしています。そして、家庭のことが一段落して本人自身が会社や仕事の優先度を上げていきたいと決意したら、管理職や部下を率いる責任ある立場になってもらえるようにする。このような土台を作っておくことが、女性の自由なキャリア選択につながっていくと考えます。これまで当社では産休・育休の取得者は3名います。そのうち1名は、休暇を終えて復職をしています。

 

2019年から2020年にかけて「働き方改革」の施行が本格化し、さまざまな企業がその対応に迫られています。しかし、義務だからと制度だけ導入しても、結局、制度を運用する経営者が社内の風土を変えなければ形ばかりで中身は何も変わらないのです。

 

社員の「責任を負いたくない」病を解消させる方法は

◆管理職のお試し期間を設けて自らの能力を確認する

 

自らキャリアを積み上げて、「重要な職務に就きたい」「責任のある仕事を任される立場になりたい」と考える人がいる一方で、「管理職など自分にできるのか?」「部下の責任まで負わなければいけないのは荷が重い」「大変そう」などネガティブに考える人もいます。

 

これは女性に限った話ではありません。男性も同じで、一概にはいえませんが、若い世代の人たちを中心に「責任を負いたくない」病が蔓延しているように感じます。確かに、管理職となり部下をもつようになると、責任は増大します。もちろん、職務に沿った昇給は行いますし、責任が増すぶん仕事のやりがいも増えるものです。

 

ネイチャーでは、管理職としてやれる実力があるのに、「部下をもって仕事をするのは……」と、そんな漠然とした不安がある人を対象に、役職の「お試し期間」を設けることがあります。一度経験してみてもなお、自分には「荷が重い」と感じ本人が望むなら役職を降りることも可能という制度です。

 

一度その役職になると「戻ることはできない」「ダメという烙印を押されたら恥ずかしい」などの理由から躊躇してしまう人でも、「お試し」であればやってみようと挑戦する敷居が下がります。

 

「自分にどこまで部下を動かす能力があるのか」「責任ある役職に耐える力があるのか」などは、実際にその環境に身を置いてみないとわからないものですし、周りから見ても適切に測れるものではありません。逆に最初は躊躇していたものの、いざ責任のあるポジションに立つと、本人も周囲も思っていた以上の力を発揮するようなケースもあります。

 

これまでも、実際、お試し期間を経験した結果「自分には不向きだ」との申し出があって、話し合ったうえで役職を降りた人もいました。あくまでも自らの意思で降りたのであって、私や人事側から役職を降ろしたわけではないので、体面など気にすることもありません。能力不足によって役職を降ろされるわけではないので、モチベーションが下がったり、周りからの視線を気にしたりするということもないようです。むしろ役職に就いてみた経験があるからこそ、いまの自分自身の働き方のラインを知ることができるようになります。

 

もちろん、一度うまくいかなかったらそれで終わりではありません。また時機が来たら声をかけることもあります。このような流動的な人事が日常的に行われていると、管理職に挑戦することも、降りるということも、当然のように受け入れられていくようになるものです。

 

芦田 敏之

税理士法人ネイチャー国際資産税

 

日本一社員が成長できる=幸せな会社

日本一社員が成長できる=幸せな会社

芦田 敏之

クロスメディア・パブリッシング(インプレス)

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