最終回では、スリランカの中央銀行の金融政策に振り回される通貨ルピーと貿易についてお伝えをします。 ※本連載では、内戦の終結以降、高い経済成長を誇ってきたスリランカですが、歪な経済構造を背景にして、昨今、表面化してきた様々な問題について見ていきます。

低金利が続けば信用危機や通貨危機のリスクが拡大

金利上昇が遅れているため、通常ならば信用危機や通貨危機が起こる。もし両方が起こると、国内の可処分所得に大きく傷つく。一方、信用危機が起きても通貨危機が起きなければ回復は速い。例えば2009年の信用危機の際は、1ドル=118スリランカ・ルピーであったので、早期に元の水準に戻すことができた。

 

かつては通貨の下落は「輸出超過」につながった。なぜなら国民が貧しくなり、国内消費が抑制されたからである。2012年に同様のことが起きており、前政権が崩壊する要因の一つだとされる。

輸出業界が主張する「Jカーブ効果」

また古い人の中には、実際には当てはまらないことも多いとされている「Jカーブ効果」をよく持ちだす人もいる。しかし、世界的な金融問題のために通貨危機が起きれば「Jカーブ効果」と似たようなことは起こりうる。

 

例えば米国で信用危機が起こると、米国の国内経済が収縮して輸入需要が影響を受け、米ドルは上昇するだろう(2009年)。そうなると輸出国の輸出は減少し、その後輸入国である先進国の経済が安定すると輸出は増加する。これは、輸出国の通貨変動とは関係なく起こることである。しかし、輸出推進派はこのような現象を「Jカーブ効果」の証拠であると言い、通貨切り下げを求める。

 

実質賃金が低下してしまった輸出業者は、通貨切り下げを好み、労働者の賃金を減らして利益を作ろうとする。また、奴隷のように安い賃金に基づいて、より大きな市場シェアを獲得しようとする。加えて、スリランカでは、電気や水道などの公共料金は通貨によって変動しないために、通貨切り下げを求めるさらなるインセンティブが生まれる。

 

多くの輸出業者はドル建ての借り入れがあるので、かつてのように執拗に通貨の切り下げを求めなくなっている。通貨の切り下げ(と更なる切り下げを求める誤った「Jカーブ効果」の創出)への要求を防ぐことも、毎月ないし3ヶ月毎に電気と水道料金を、付加価値税を含め調節すべき理由である。

この連載は、GTACが提携するスリランカのメディア「ECHELON」が2016年3月に掲載した記事「THE ECONOMY IN 2016: LIMPING TO STABILITY FROM A RUNAWAY BUDGET」を、翻訳・編集したものです。

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