原油価格は経済活動再開などを背景に反発
■北米の代表的な原油価格指標であるWTIは、4月20日、▲37.63米ドルと史上初のマイナス価格になりました。原油生産の1割という歴史的な減産にも拘らず、「供給過剰を解消できない」との見方が大勢を占めたことに加え、先物の清算日を目前に控え投げ売りが出たことによります。
■その後は、「先物の中心限月が6月限に代わったこと」、「5月から合意された減産が実施されたこと」、「各国で経済活動再開の動きが始まったこと」、「米国原油在庫が16週ぶりに減少に転じたこと」などからWTIは上昇に転じ、足元では32米ドル台まで回復しました。しかし、昨年末比では▲47%と依然として半値水準程度に留まっています。
2020年の原油需要見通しは過去最大の減少
■5月13日に公表されたOPEC月報の5月号では、2020年の世界の原油需要予想は、前月見通しから223万バレル下方修正され日量9,059万バレルとなりました。
■2020年の原油需要を前年比でみると、OPECは日量908万バレルの減少、国際エネルギー機関(IEA)は前月見通しから70万バレル上方修正し同860万バレルの減少と予想しています。両社とも、新型コロナによる経済活動の低迷により、過去最大の需要減少を見込んでいます。
今後は、協調減産を継続し、経済正常化を待つ展開
■原油価格は反発に転じていますが、サウジアラビアの財政均衡レートは80米ドル、ロシアの同レートは40米ドル、米国シェールオイル企業の採算レートは40~50米ドル程度と言われており、現状の原油価格とは依然として大きな隔たりがあります。原油価格の本格的な上昇には、「産油国による大規模な協調減産の継続」と「経済正常化に伴う原油需要の回復」が必要となります。足元、世界は経済活動再開に踏み出していますが、感染再拡大も懸念されており、経済正常化にはなお時間を要しそうです。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『原油価格回復もまだ十分ではない(2020年5月)』を参照)。
(2020年5月21日)
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