学習塾は休業「要請」や「協力の依頼」の対象に
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う「緊急事態宣言」後、身の回りのさまざまな契約に関して施設自体の対応も変化しています。
今回は、子育て世代が頭を悩ませている、塾や習い事の会費(月謝)がどうなるのかを考えます。
4月7日に、正式名称「新型インフルエンザ等対策措置法」に基づく緊急事態宣言が政府より出され、同法24条9号に基づいて、都道府県の各本部が私人や団体に対して、休業の「協力」要請をできるようになりました。
これにより、東京都は1,000平方メートル以上の学習塾を休業「要請」の対象、1,000平方メートルに満たないものは休業への「協力の依頼」の対象としています。詳しくは、東京都の防災ホームページに書いていますので、気になる方はご覧ください。
実際は「要請」に至らない1,000平方メートルには満たない学習塾についても「協力の依頼」を受け、軒並み閉鎖になっています。
学習塾の場合はどうなる?
それでは、大手〜個人経営の学習塾の場合、どうなるのでしょうか。各ケースごとに、みてみます。
◆休校になった場合
授業料=授業を受ける対価です。
塾は、授業を受ける権利を提供「できない」または「していない」ので、対価である授業料をとることができません。
つまり、授業料を払う必要はありません。
◆オンライン授業になった場合
いち早くオンライン授業やリモート指導に切り替えた大手塾などは、授業を行っているのでその対価を払うことになります。一部では授業スタイルの変化のためか、減額して対応している塾もあるそうです。
習い事の場合はどうなる?
ピアノや英会話、ダンスなど、習い事はどうでしょうか。
家庭教師などは、都の休業要請の対象外とされています。しかし、密室での家庭教師、楽器を伴う習い事などは、少人数ながら先生と生徒の密接度合いも高く、習う生徒側が自粛するか、先生からレッスンを中止している場合も見受けられます。
◆生徒が自らレッスンに行くのを自粛していた場合
規約にもよりますが、習い事の授業を受ける権利自体は提供されているのに、自分が行かなかったケースです。これは振り替えのルールや何日前まではキャンセルができるといった特別な決まりがない限り、レッスン料の支払い義務は残るというのが建前になります。
◆レッスンする側がクローズした場合
これはレッスンを受ける権利が提供されていないため、レッスン料を支払う義務はなくなります。
◆オンライン対応になった場合
レッスンを行っているので、対価を払うことになります。
授業料返金など、まずはルールを確認しましょう
塾や習い事も前払いになっていて、取り決め上「不可抗力によって授業・レッスンができなかった場合でも返金はできません」とされている場合は多いです。民法の原則は、契約で変更することができるため、この決まり自体は有効です。また、授業・レッスンはなくても、会員型の場合、会員としての管理費や施設維持費は引き続きかかり続けることになります。
一方で、規約上は返金しないことにしていたとしても、実際に授業やレッスンをしていない以上、誠意をもって返金する姿勢を示している塾や習い事も多くあります。
とはいえ、ゴールデン・ウィーク後に「緊急事態宣言」が解除されるかどうか、わかりません。そこで再開時期を未定とし、振り替えにするか、返金対応にするか、未定としているところもあるようです。
まずは、塾にしろ習い事にしろ、授業料返金についてのルールがないかを確認しましょう。その上で、今の状況でも課金があるのか、ないのか、それぞれきちんと確認することをお勧めいたします。
「今後の課金をいっさい止めたい」と思うのであれば、きちんと退会手続きを取った方がよいです。実際に、従前より柔軟な手続きでの退会に応じているところも増えています。
筆者個人の話ですと、以下のようになりました。
●自分のジム…3月からまったく行けず、4月はクローズなのに、4月分まで満額支払い退会(返金対応なし)
●長女の塾…回数分は無事返金
●長男の私立の学童…返金こそありませんが、4月分の利用料を今後に繰り越し
巣ごもり状態は、しばらく続くかもしれません。このような状況では今それぞれができること、例えば、オンラインレッスンなどがもっと広がれば、お互いのためによいのにと思っています。
水谷 江利
世田谷用賀法律事務所 弁護士