2015年11月に行われたサザビーズ、クリスティーズのアート・メインセール。今回は、「コンテンポラリーアート」のレビューをお届けします。

サザビーズはこの分野で過去最高の出来高を記録

サザビーズは、亡くなった元オーナーのコレクションの売り出しであるトーブマンセールの出来高3億7,703万ドルのうち、コンテンポラリー・アート(現代美術)の分野の出来高は1億3,046万ドルで、通常のコンテンポラリー・アートセールの出来高2億9,485万ドルと合わせると、合計4億2,531万ドルとなり、同社のこの分野の合計出来高では過去最高額となった。

 

フランク・ステラ(※1)やサイ・トゥオンブリー(※2)など、現在、マーケットで勢いのある作品の記録を更新し、堅調な結果を残した。しかし、トーブマンセールでは、高すぎるエスティメート(落札見積価格)にマーケットは嫌気を示し、価格が伸び悩んだ作品も多く見られた。抽象表現主義の巨匠、ロスコ作品も今回は全く勢いが見られなかった。

過去2年間で最も低い数字となったクリスティーズ

対するクリスティーズは、アーティスト・ミューズセールの出来高4億9,135万ドルのうち、戦後・現代アートの分野の出来高は1億3,380万ドルで、通常の戦後・現代アートのセールの出来高、3億3,180万ドルと合わせると、合計4億6,560万ドルとなった。これは過去2年間で最も低い数字で、今年の5月の合計出来高、8億8,164万ドルと比較すると、およそ2分の1にまで減少している。

 

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今回、この急落で、最も影響が表れたのがアンディー・ウォーホル(※3)であった。ウォーホル作品は新興コレクターからの需要が高まり、強気なマーケットを保っていたがここで天井圏に達したと言ってよいだろう。今回多くの作品が不落札となった事で、今後はエスティメートが見直される可能性が高まっている。

 

今回のセールは、世界経済の不安からアートマーケットの減速が懸念されていたが、数字上は印象派・近代の分野への影響は少なかったのに対し、コンテンポラリーの分野には、その影響が如実に表れた形となった。

 

これまでコンテンポラリーの分野に大きく差をつけられていた印象派・近代の分野が、今回5年ぶりにコンテンポラリーの出来高を上回る結果となった。マーケット全体の先行きは不透明であるが、業界関係者の多くは、異常であったコンテンポラリー分野のマーケットが、ようやく健全に戻りつつあると、ポジティブにとらえている。
 

※1 フランク・ステラ

アメリカの画家、彫刻家。戦後アメリカの抽象絵画を代表する作家の1人。

※2 サイ・トゥオンブリー

アメリカの画家、彫刻家。作風は時代によって大きく変化している。

※3 アンディー・ウォーホル

アメリカの画家・版画家・芸術家でポップアートの旗手と言われている。

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