元サザビーズのオーナーのコレクションに注目集まる
今シーズンのサザビーズ(※1)は、今年4月に91歳で亡くなった元サザビーズのオーナー、A・アルフレッド・トーブマン氏のコレクションがメインとなった。
トーブマンセールの出来高3億7,703万ドルのうち、印象派・近代の分野の売上げは、近代セールの出来高3億671万ドルと合わせると、合計で5億4,524万ドルとなり、この分野では同社において過去最高の出来高となった。元会長のコレクションを5億ドルという多額のギャランティーを条件に社の威信をかけて獲得した結果、数字上では成功を収めたと言ってよい。
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しかしトーブマンセールに関しては、出品作品のクオリティーがまちまちで、多くの作品がエスティメート(落札見積価格)下限以下での落札となるなど精彩に欠けた内容であった。
一方、通常の印象派・近代セールは、ソリッドな結果であり、ビッドも活発で、ピカソ、ゴッホ、モネといったマーケットの柱となる作家の作品が好況であったことから市場に安心感をもたらした。
対するクリスティーズ(※2)が、最近力を入れているのは、テーマをもって分野を超えた作品を集めたセールである。アーティストのインスピレーションの源、ミューズにフォーカスしたキューレイテッドセールであるアーティスト・ミューズセールがメインとなる。
アーティスト・ミューズセールの出来高4億9,135万ドルの内、印象派・近代の分野の売上げは、3億4,226万ドルで、通常の印象派・近代セールの出来高1億4,554万ドルと合わせると、合計で4億8,780万ドルとなり、サザビーズの結果を下回ったものの、堅調な結果であった。アーティスト・ミューズセールではモディリアーニの裸婦像が1億7,040万ドルで落札されるなど大きな注目を集めたが、通常の印象派・近代セールではスターロット(注目作品)の不在で、盛り上がりに欠ける内容であった。
経済失速懸念の中でも中国人バイヤーの買い意欲は健在
中国経済失速などによる世界経済の不安がアートマーケットに影響を及ぼす事が懸念されていたが、この分野に関しては全般的に引き続き好況であることが確認された。特にトップレベルのマーケットは良質の作品が枯渇状態にある中、今後も熾烈な獲得争いが続くものとみられている。中国人バイヤーの買いの力は依然衰えておらず、今回も多くの作品が中国人によって落札された。
デイセール(※3)については、昨年の11月、今年の5月から両社とも出来高は上昇しており、このクラスのマーケットも安定していると言ってよい。しかし、先行きは不透明であり、今後、ある程度の調整が起こる可能性は否めない。中でも数百万ドル~1千万ドルレベルのミドルレンジの作品については影響が出始めており、特に注視が必要である。
※1 サザビーズ
1744年、イギリスのロンドンに設立された、現在も操業する世界最古のオークションハウス。
※2 クリスティーズ
1766年、イギリスのロンドンに設立された、現在世界で最も規模の大きいオークションハウス。
※3 デイセール
オークションでは注目作品が夕方以降のイブニングセールに出品されるのに対し、日中に行われるデイセールスでは比較的手ごろな価格の作品が出品されるのが一般的です。