兄弟で「不動産を共有する」とトラブルになりやすいワケ

普段は何気なく住んでいる住居も、立派な財産のひとつ。しかし、その資産価値を守るためには、知っておくべきことがあります。本連載では、司法書士の正橋史人氏に、所有する土地や建物を守るうえで必要な基礎知識について解説いただきます。

共有名義の不動産…持ち分の価値はいくらになる?

資産は様々な種類がありますが、そのなかでもいまだ代表的な位置にあるのが不動産でしょう。東京都内の一等地にあるような不動産は、これからも資産としての役割を果たすでしょうし、住居として保有している不動産も後世に残すものとしてとても身近な資産といえます。

 

ただ、そのような重要な資産である不動産も、「ある状況に置く」ことによりその資産価値が大幅に下落したり、住宅の場合にその居住を継続することが不安定になる可能性が生じることがあります。

 

その状態とは、「生計を異にする者と不動産を共有する」ことです。

 

なぜ、生計を異にする者と不動産を共有することが、資産価値の下落を生じさせる要因になるかというと、不動産の共有持分は他の共有者の同意なくして他者に売却することが可能であるからです。

 

例を挙げると、甲という土地をA、Bの2人で2分の1ずつ共有しているような場合、不動産全体の売却はA、Bがそろって契約しなければできないのは当然のことですが、Aの持分2分の1については、Aが単独でC社に売却することが可能です。

 

このように、AがC社に不動産の持分を売却し、BとC社の共有となった場合に、Bにとってどのような問題が生じるでしょうか?

 

まず、不動産の各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる(民法249条)こととされているため、当該不動産について何らかの使用を要求されることが考えられます。このような状態になるというだけでも、とても煩わしいということが想像できると思います。

 

また、不動産の各共有者は、いつでも共有物の分割請求ができる(民法256条1項)とされており、共有者間で分割の協議が調わない場合は、裁判所に対して分割を請求することができる(民法258条1項)とされています。

 

共有物の分割とは共有関係を解消することであり、様々な手法がありますが、ここでいうと共有者から共有者へ持分の買取りを請求できる権利があるいうことです。

 

当然、裁判所を通しての手続であるため、適正な価格での買取りとなることと考えられますが、この適正な価格がどのように判断されるかは不明です。ただ、仮に不動産全体の価格が2000万円であった場合、その不動産の共有持分の価格を適正に評価した場合、必ずしも1000万円の評価とはなりえないと考えられます。なぜなら、不動産の共有持分のみでは、不動産を単独で自由に使用することができないため、不動産の市場価格としては大幅に下落することが考えられるからです。

 

「いや、そもそも不動産の持分なんて買い取る人はいるの?」

 

そのような疑問があるかと思いますが、実際に不動産の持分を買い取る会社は存在しますし、そのような電車の中吊り広告を見かけることも多くなってきました。

 

つまり、先ほどの2000万円の不動産のケースで考えると、C社はAから不動産の持分を購入した段階で1000万円ではなく「適正価格」である500万~700万円で購入しており、共有者の1人になったうえで、他の共有者にも共有持分の「適正価格」での購入を促すということになります。

 

安く仕入れ、高く売却するのが経済活動の基本であり、これらのことはすべて適法ですが、突如他人であるC社と不動産を共有することとなったBにとっては脅威であるといえるのではないでしょうか?

 

このように、不動産が共有状態であるということにより、リスクが内在しています。当然、生計を共にしている者との共有でも同一のリスクはありますが、そのような場合に自己の持分のみを売却することは、「損」となるのであまり考えられないでしょう。

 

ですので、当然夫婦で住宅を共有するような場合は、特に問題ありません(住宅資金を拠出している場合、その共有持分を取得するのは当然のことでもあります)。

 

夫婦以外で「不動産の共有」は避けたい
夫婦以外で「不動産の共有」は避けたい

「兄弟で不動産を共有」はトラブルになりやすい

さて、このようなリスクを生じさせないためには、なるべく共有状態を生じさせないという必要があります。

 

とはいっても、様々な理由から共有状態は不可避的に生じてしまうものです。

 

そのなかで共有状態がトラブルとなりやすいのが兄弟による共有状態であり、その次が親子による共有状態でしょう。

 

兄弟による共有状態は、相続により法定相続分どおりに不動産を共有させた帰結として生じやすいです。このような共有状態はよくあることであり、共有者全員で不動産の売却等をしっかりと話し合える状態であれば何の問題もありません。

 

しかし1人が不動産の売却に反対して、売却ができないなか、他の共有者が直ぐに金銭が欲しい場合、他者に持分が売却されてしまう可能性があります。共有の不動産が存在する場合、その管理や運用を各共有者で話し合える状態を保つように心がけることが資産価値維持のためには重要です。

 

 

司法書士法人鈴木総合事務所 司法書士

長野県生まれ。早稲田大学社会科学部卒業。都内の司法書士事務所で経験を積み、のちに司法書士法人鈴木総合事務所に移る。
「数次相続に関する遺産分割協議書作成における先例・判例と留意点」(雑誌:「市民と法」95号 2015-10 民事法研究会)
「フレーム・コントロールの原点 登記制度の視かた考えかた」(書籍:伊藤塾 編 /弘文堂 第5章執筆担当)等に寄稿。
司法書士法人鈴木総合事務所は、東京都千代田区神田で30年以上にわたって不動産に関する手続を中心に業務を扱っている。
司法書士法人鈴木総合事務所ウェブサイトはこちら

著者紹介

連載土地・建物の価値を守る「不動産名義」の基礎知識

  • 【第1回】 兄弟で「不動産を共有する」とトラブルになりやすいワケ

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