中国は人民元安と貿易戦争に勝てるか

ピクテ投信投資顧問株式会社が、日々のマーケット情報を分析・解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報を転載したものです。

 

ポイント

ピクテ・アセット・マネジメントのグレーター・チャイナ債券ファンドの運用責任者が、香港のサウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙に、中国の13兆米ドル相当の国内債券市場がうまく機能していて、人民元安や米中貿易戦争に打ち勝つ背景となっていることを寄稿しました。

 

 

中国の国内債券市場の開設が、どのように米中貿易摩擦や、人民元安および成長率鈍化に対応していくかについて検証していきましょう。

 

人民元安、米中貿易摩擦の激化および経済成長率の鈍化は、中国を襲う嵐のようです。しかしながら、中国の13兆米ドル相当の国内債券市場がうまく機能していて、人民元安や米中貿易戦争に打ち勝つ背景となっています。

 

人民元は、節目となる1米ドル=7人民元の水準を最近10年間ではじめて割り込みました。短期的にボラティリティが高まることがありますが、人民元は今後の新たな均衡点を探る動きが見られます。

 

一例として、中国は近隣諸国への輸出によって、貿易黒字が積みあがっています。これは、米国という買い手がいなくなったことによる、米国への輸出減を補いつつあります。

 

主要な工業国の中央銀行が、景気刺激のために金融緩和を実施していることから、米国をはじめとする先進国と中国との金利差は拡大しつつあります。

 

一方中国は、ベンチマークとなる借入金利を積極的に引き下げる可能性は低いようです。かわりに、民間部門の債務残高を減らしつつ、中小企業を対象とした景気刺激策を実施すると見られます。これは中小企業は、貿易戦争のマイナスの影響を最も受けやすいことに対する措置です。

 

さらに、中国人民銀行はいろいろな手法を通じて、金融システムに潤沢な流動性を提供しています。例えば、公開市場操作、中期貸出ファシリティ、および法定準備率の引下げなどです。これらの政策は、全て国内の債券市場にとって追い風になると見ています。

 

長期的に見て、人民元は国際通貨として取引され、人民元高となる潜在能力があると考えます。これは、国内債券市場への投資家に対して、リターンを向上させることになります。

 

人民元は、近隣諸国との貿易決済や借入などを通じて、取引量が増える見通しです。ひとつの要因として、中国企業の世界的な活動があり、また一帯一路政策による巨額のインフラ投資も背景となっています。

 

ただし、中国政府の政策はこれで終わりではありません。高齢化が進み、インフレ圧力が低下して、経済成長率は鈍化していきます。そのため、安定した収益が見込まれる設備投資へのニーズが高まると見ています。

 

このような経済情勢の変化に対して、金融当局は資本市場の自由化を開始して、海外からの資本投資を促しています。この動きの中心となるのが、中国の国内債券市場の開設です。

 

2017年の「ボンドコネクト(債券通)」システムの開始によって、海外の投資家は中国国内に口座を持つことなく、香港で取引できるようになりました。また金融当局は、DVP(債券の引渡しと代金の支払いを同時に行う決済)を導入して、決済リスクを大幅に減らすことができました。

 

 

また海外の機関投資家は、2021年11月まで債券の金利収入に対して3年間の免税措置を受けることができます。さらに中国人民銀行は、海外投資家の現先取引やデリバティブ取引の規制緩和を計画しています。

 

中国の債券は国際的な投資家にとって必須の資産となるべきです

 

このような中国当局の動きは、世界的な債券指数の提供会社に対して、ベンチマークとなる主要な債券指数に中国債券を組入れることを促しています。

 

このような債券指数に期待して、2019年第2四半期末の海外投資家の国内市場の中国債券のポジションは記録となる2兆元(2.2兆香港ドル)に達していて、2018年年末の1.8兆元から大きく増加しています。

 

海外投資家は、現在中国債券の2%しか保有していません。ただし、この比率は来年に向けて上昇する見通しです。

 

現在、記録的な16兆米ドル相当のグローバル債券がマイナス金利となるといった状況下、人民元建の債券は投資家に対して魅力的な利回りを提供しています。

 

2019年8月26日現在、中国の10年国債の利回りは3.03%であり、同じ年限の米国国債の利回りが1.45%、日本国債がマイナス0.28%、ドイツ国債がマイナス0.68%となっています。

 

分散投資を行うグローバルの投資家にとって、中国の債券は必須の資産となるべきです。中国国内の債券と、米国国債の相関係数は0,2であり低相関となっています。また、中国国内債と欧米の株式市場との相関係数は、さらに低くなっています。

 

同様に、中国国内債券市場のデフォルト率の低さにも注目すべきです。デフォルト率は1.5%未満にとどまり、これは多くの先進国や新興国の水準を下回ります。

 

中国国内の債券市場において、デフォルト率の急上昇や、市場全体のリスクが高まる可能性は現段階では見られません。中国当局は、銀行に対して中小企業への融資の拡大を促していますが、金融システムの危機につながるような、リスクの高い貸出については厳しくチェックしています。

 

例えば、中国当局はシャドーバンキングの活動を抑えるために、資産運用業務における規制の穴を埋めていきました。また、地方政府のノンバンクからの簿外借入を廃止し、借入金を減らすために公的機関と民間企業の提携を解消しています。

 

中国人民元建の国内市場は、世界第二位の経済大国の変化しつつある需要に応えるために、急速に成長しています。短期的には嵐に見舞われているとしても、中国の国内債券市場は魅力的な存在であり、主要なグローバル投資家に組入れられていくと見ています。

 

 

※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内容が変更される場合があります。

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『中国は人民元安と貿易戦争に勝てるか』を参照)。

 

 

(2019年10月3日)

 

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ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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