1.概観
【株式】
米国の株式市場は、米中双方が追加関税引き上げを表明し合うなど米中対立が一段と激しさを増したことからリスク回避志向が高まり、下落しました。欧州の株式市場は、米中対立の激化やユーロ圏の経済減速等が嫌気され、下落しました。英国の欧州連合(EU)離脱問題等も重荷となりました。日本の株式市場は、米中貿易摩擦の激化でリスク回避の動きが高まったことや、円高が進行したことなどから下落しました。
【債券】
米国の長期金利は、低下しました。米中対立激化によるリスク回避志向の高まりや、米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げ期待が金利を押し下げました。欧州の長期金利は、米中通商問題に加えて、ユーロ圏の景気後退懸念から欧州中央銀行(ECB)の緩和期待が高まり、ドイツの10年国債利回りは低下しました。日本の10年国債利回りは、米長期金利の動きにつれて低下しました。米国の社債利回りも低下しましたが、国債との利回り格差は拡大しました。
【為替】
円は米ドル、ユーロ、豪ドルなどに対し上昇しました。米中互いに報復関税をかけ合うなど米中対立の一段の高まりからリスク回避の流れとなり、円が買われました。世界経済減速懸念の高まりから、FRBやECBなどの主要中銀による利下げ観測が高まったことなども円買いの要因となりました。ドル円レートは一時=104円台半ばと約8カ月ぶりの円高水準となりました。
【商品】
原油先物価格は、米中貿易摩擦の激化などによる世界景気減速への懸念から、原油需要が細るとの見方が強まり下落しました。
2.景気動向
<現状>
米国は、19年4-6月期の実質GDP成長率改定値が前期比年率+2.0%となりました。速報値から0.1ポイント下方修正されたものの、個人消費が上方修正され、改めて米景気の底堅さが意識されました。
欧州は、19年4-6月期の実質GDP成長率が前期比年率+0.8%となりました。また、ドイツの4-6月期の実質GDP成長率はマイナスに転じました。
日本は、19年4-6月期の実質GDP成長率が前期比年率+1.8%となりました。予想以上に設備投資が堅調でした。
中国は、19年4-6月期の実質GDP成長率が前年同期比+6.2%となり、前期の同+6.4%から減速しました。内需を中心に景気が下振れました。
豪州は、19年4-6月期の実質GDP成長率が前年同期比+1.4%となりました。また、1-3月期の伸び率が上方修正されました。
<見通し>
米国は、米中対立が再燃したことや、在庫調整にはしばらく時間がかると見られることから、景気の持ち直しは20年以降になる見込みです。
欧州は、世界経済減速への不透明感を背景に製造業の低迷が長引いており、回復のペースは緩慢になると見られます。域内の政治リスクも懸念材料です。
日本は、外部環境の不透明感などからしばらく足踏みとなりそうです。経済対策効果の発現などを踏まえると、持ち直しは20年4-6月期以降となりそうです。
中国は、米中対立の再燃による企業心理悪化やデレバレッジの影響などが景気下押し圧力となりますが、政府の中期的な景気対策が下支えとなりそうです。
豪州は、外部環境の不透明感が重石となるものの、設備投資の回復や減税効果が徐々に現れると見られることから、緩やかな成長が続くと予想されます。
※上記の見通しは当資料作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。今後、予告なく変更する場合があります。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2019年8月のマーケットの振り返り①』を参照)。
(2019年9月4日)