2019年7月のマーケットの振り返り③

マンスリーマーケットレポート

三井住友DSアセットマネジメント株式会社 調査部
2019年7月のマーケットの振り返り③

三井住友DSアセットマネジメント株式会社が、2019年7月のマーケットについて振り返り、「1. 概観、2. 景気動向、3. 金融政策、4. 企業業績と株式、5. 債券、6. 為替、7. リート、8. まとめ」のそれぞれについて解説します。今回は、「6. 為替、7. リート、8. まとめ」を見ていきましょう。※本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供するマーケットレポートを転載したものです。

6.為替

<現状>

 

円は対米ドルで下落しました。7月のFOMCでの大幅な利下げ観測が後退したことや米中協議の進展期待などから世界経済減速への警戒感がやや弱まり、円が売られました。一方、円は対ユーロ、豪ドル、英ポンドで上昇しました。ユーロ圏では低調な経済指標を受けてECBによる利下げ期待が高まりました。英国では、与党・保守党の新党首にボリス・ジョンソン氏が就任し、欧州連合(EU)からの合意なき離脱(Brexit)への警戒感が高まりました。また、豪州では豪州準備銀行(RBA)のロウ総裁が金利は長期にわたり低水準で維持されるとの見通しを示したことなどから豪ドルが下落しました。

 

<見通し>

 

円の対米ドルレートは、FRBの追加利下げが見込まれる一方、日銀の緩和余地が限られていると見られることから、一時的に円高傾向で推移する可能性があります。しかし、米国の景気が底堅いことから大局的にはレンジの範囲で推移することが想定されます。ただし、米中通商問題の行方には注視が必要です。

 

円の対ユーロレートは、欧州景気の低迷を背景にECBが9月ないし12月に利下げを行うと見られることや、イタリアやBrexitなど政治的な不透明感がユーロ圏の上値を抑制すると見られます。加えて、米中通商問題の行方には注視が必要です。

 

円の対豪ドルレートは、豪の消費セクターの弱さなどを背景とする追加利下げ観測に加え、米中通商問題によるセンチメントの悪化や中国経済への悪影響が懸念されることが豪ドルの重石となる見通しです。中国を含めたグローバル経済が持ち直しに向かえば、豪ドルは底堅さを取り戻していくと見られます。

 

各通貨の対円レート (注)データは2017年7月1日~2019年7月31日。 (出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
各通貨の対円レート
(注)データは2017年7月1日~2019年7月31日。
(出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

7.リート

<現状>

 

グローバルリート市場(米ドルベース)は、欧米をはじめ世界的に中銀が金融緩和方向へシフトする中、長期金利が概ね低下傾向に動いたことから相対的に利回りの高いリートが選好され、前月末比で0.42%上昇しました(現地通貨ベース)。一方、円ベースの月間変化率では、米ドルが主要通貨に対して上昇し円安となったため、為替はプラスに寄与し、円ベースでは前月比1.20%の上昇となりました。

 

<見通し>

 

FRBが7月末の利下げに続き9月にも追加利下げをすると見られることや、ECBが9月に利下げや量的緩和再開のアナウンスを行うと見込まれることなどから、低金利環境が当面継続すると予想され、リートにとって好材料となりそうです。一方で、中期的に見れば米国の不動産市況はピーク圏にあり、その市況の下支えとなる経済成長はペース鈍化の流れにあることは重石となりそうです。ただし、リートの安定的な賃貸収入や相対的に高い利回りは着目されやすい展開が続くと見られ、リートが選好されやすい状況が続くと考えられます。

 

代表的グローバルリート指数の推移 (注1)データは2017年7月1日~2019年7月31日。 (注2)日本円ベースは2005年1月1日の米ドルベースを基準に指数化。 (出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
代表的グローバルリート指数の推移
(注1)データは2017年7月1日~2019年7月31日。
(注2)日本円ベースは2005年1月1日の米ドルベースを基準に指数化。
(出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

8.まとめ

<株式>

 

S&P500種指数採用企業の予想EPS増益率は19年が前年比+1.9%(前月同+2.4%)、20年が同+11.3%(同+11.5%)と小幅下方修正となりました(19年7月31日発表、リフィニティブI/B/E/Sベース)。一方、日本の予想経常利益増益率は19年度(20年3月期決算)が前年度比+4.0%(前月同+2.9%)、20年度(21年3月期決算)が同+7.7%(前月同+6.7%)(東証一部除く金融、QUICKコンセンサスベース、19年7月31日現在)と上方修正されました。ただ、米中貿易摩擦が再び激化するリスクが高まっており、日本の収益見通しが再び慎重となる可能性があります。日米ともに業績の見通しに対する不透明感が強まると考えられ、日米株式市場は上値の重い展開となりそうです 。

 

<債券>

 

米国では、FRBが7月に続き9月にも利下げを行うと見られることから当面低位での推移が続くと見られます。景気が持ち直しに向かえば緩やかにレンジを切り上げる見通しですが、米中通商問題の行方には注視が必要です。

 

欧州では、コアインフレ率が下振れ傾向にあることや、通商問題やBrexitを巡る懸念が企業心理悪化を通じてマイナス要因となっていることから、ECBは9月に利下げやQE再開のアナウンスを行う見込みです。このことから、金利は低位での推移が続くと見られます。

 

日本では、コア物価上昇率がゼロ近傍に鈍化する見通しです。秋には消費増税も予定されており、日銀への追加緩和期待がくすぶり続けること等から、長期金利は当面マイナス圏での推移が継続する見通しです。

 

<為替>

 

円の対米ドルレートは、FRBの追加利下げが見込まれる一方、日銀の緩和余地が限られていると見られることから、一時的に円高傾向で推移する可能性があります。しかし、米国の景気が底堅いことから大局的にはレンジの範囲で推移することが想定されます。ただし、米中通商問題の行方には注視が必要です。

 

円の対ユーロレートは、欧州景気の低迷を背景にECBが9月ないし12月に利下げを行うと見られることや、イタリアやBrexitなど政治的な不透明感がユーロ圏の上値を抑制すると見られます。加えて、米中通商問題の行方には注視が必要です。

 

円の対豪ドルレートは、豪の消費セクターの弱さなどを背景とする追加利下げ観測に加え、米中通商問題によるセンチメントの悪化や中国経済への悪影響が懸念されることが豪ドルの重石となる見通しです。中国を含めたグローバル経済が持ち直しに向かえば、豪ドルは底堅さを取り戻していくと見られます。

 

<リート>

 

FRBが7月末の利下げに続き9月にも追加利下げをすると見られることや、ECBが9月に利下げや量的緩和再開のアナウンスを行うと見込まれることなどから、低金利環境が当面継続すると予想され、リートにとって好材料となりそうです。一方で、中期的に見れば米国の不動産市況はピーク圏にあり、その市況の下支えとなる経済成長はペース鈍化の流れにあることは重石となりそうです。ただし、リートの安定的な賃貸収入や相対的に高い利回りは着目されやすい展開が続くと見られ、リートが選好されやすい状況が続くと考えられます。

 

 

※上記の見通しは当資料作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。今後、予告なく変更する場合があります。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2019年7月のマーケットの振り返り③』を参照)。

 

(2019年8月5日)

 

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