実践的基礎知識オルタナティブ編(4)<代表的な戦略①ロングショート戦略、マーケットニュートラル戦略>

ピクテ投信投資顧問株式会社が、実践的な投資の基礎知識を初心者にもわかりやすく解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するコラムを転載したものです。

代表的な戦略①ロングショート戦略、マーケットニュートラル戦略

オルタナティブ投資の絶対収益型投資戦略の代表的なものにロングショート戦略があります。市場の方向性(上昇/下落)に関わらず収益を得ようとする投資戦略です。ロングショート戦略の中でポートフォリオ全体のβ値をゼロにする戦略をマーケットニュートラル戦略と呼びます。

ロングショート戦略、マーケットニュートラル戦略

ロングショート戦略は、株式や債券などを買い持ちする「ロングポジション」(価格上昇することで儲かり、価格下落することで損をする)だけではなく、信用取引による空売りや先物取引の売り建て「ショートポジション」(価格上昇することで損をし、価格下落することで儲かる)を組み合わせることで、マーケット(β)の方向性(上昇/下落)に関わらず利益を得ようとする投資戦略です。

 

図表1の例では、割安な水準にあり上昇が期待できると考える銘柄Lを買い持ちし「ロングポジション」を取り、一方で割高な水準にあり上昇が期待できない、もしくは下落すると考える銘柄Sを空売りし「ショートポジション」を取ることで、ロングショート戦略を組成します。この場合、それぞれの「ロングポジション」「ショートポジション」は等金額投資することにします。 また、銘柄Lと銘柄Sのβ値は同じであるとします。

 

[図表1]ロングショート戦略の考え方
[図表1]ロングショート戦略の考え方

 

ロングショート戦略のリターンは、「ロングポジション」のリターンと「ショートポジション」のリターンを足し合わせたものになります。このとき、銘柄Lのβ値と銘柄Sのβ値が同じであるため、市場平均のリターン部分が相殺されることになります。このように、銘柄Lと銘柄Sを正しく選択できれば、市場の方向性(上昇/下落)に関わらず収益を得ることが可能になります。

 

また、この例のようにロングショート戦略の中でポートフォリオ全体のβ値をゼロにする戦略をマーケットニュートラル戦略と呼びます。

 

ロングショート戦略の例①

具体的な例でロングショート戦略を見てみましょう。下の図表2の例①では、β値が1.20でα値の違う銘柄X(α値:0.03)と銘柄Y(α値:-0.05)を用い、銘柄Xを数量1,000買い(ロング)、銘柄Yを同じ数量1,000売り(ショート)する、とします。

 

[図表2]ロングショート戦略の例①
[図表2]ロングショート戦略の例①

 

市場平均が30%上昇した場合に(上段)、銘柄X、Yともに想定通りのα値、β値で価格変動するとします。[図表1]で紹介している資本資産価格モデル(CAPM)を使って銘柄X、Yのリターンを計算すると、銘柄Xは+39.0%、銘柄Yは+31.0%となり、銘柄Xの株価は1,390円、銘柄Yの株価は1,310円となります(図表2参照)。

 

銘柄Xを数量1,000買い(ロング)した場合の損益は、+390,000円となり、銘柄Yを数量1,000売り(ショート)した場合の損益は-310,000円となります(図表2参照)。その結果、ロングショート戦略の合計損益は+80,000円となります(図表2参照)。

 

一方で、市場平均が30%下落した場合に(下段)、銘柄X、Yともに想定通りのα値、β値で価格変動するとします。上記同様に資本資産価格モデル(CAPM)を使って銘柄X、Yのリターンを計算すると、銘柄Xは-33.0%、銘柄Yは-41.0%となり、銘柄Xの株価は670円、銘柄Yの株価は590円となります。

 

銘柄Xを数量1,000買い(ロング)した場合の損益は、-330,000円、銘柄Yを数量1,000売り(ショート)した場合の損益は+410,000円となります。その結果、ロングショート戦略の合計損益は+80,000円となります。

 

 

このように、銘柄Xを買い(ロング)、銘柄Yを売る(ショート)戦略は、市場全体の動きに関わらず収益を得ることができ、この場合は適切であったと言えます。

ロングショート戦略の例②

下の図表3の例②では、β値が1.20でα値が0.07の銘柄Aとβ値が1.05でα値が0.05の銘柄Bを用い、銘柄Aを数量1,000買い(ロング)、銘柄Bを同じ数量1,000売り(ショート)する、ロングショート戦略を取ったとします。

 

[図表3]ロングショート戦略の例②
[図表3]ロングショート戦略の例②

 

市場平均が30%上昇した場合に(上段)、銘柄A、Bともに想定通りのα値、β値で価格変動するとします。1ページの図表1で紹介している資本資産価格モデル(CAPM)を使って銘柄A、Bのリターンを計算すると、銘柄Aは+43.0%、銘柄Bは+36.5%となり、銘柄Aの株価は1,430円、銘柄Bの株価は1,365円となります(図表3参照)。

 

銘柄Aを数量1,000買い(ロング)した場合の損益は、+430,000円となり、銘柄Bを数量1,000売り(ショート)した場合の損益は-365,000円となります(図表3参照)。その結果、ロングショート戦略の合計損益は+65,000円となります(図表3参照)。

 

一方で、市場平均が30%下落した場合に(下段)、銘柄A、Bともに想定通りのα値、β値で価格変動するとします。上記同様に資本資産価格モデル(CAPM)を使って銘柄A、Bのリターンを計算すると、銘柄Aは-29.0%、銘柄Bは-26.5%となり、銘柄Aの株価は710円、銘柄Bの株価は735円となります。

 

銘柄Aを数量1,000買い(ロング)した場合の損益は、-290,000円、銘柄Bを数量1,000売り(ショート)した場合の損益は+265,000円となります。その結果、ロングショート戦略の合計損益は-25,000円となります。

 

この銘柄Aを買い(ロング)、銘柄Bを売る(ショート)戦略は、市場全体が上昇するときに収益を得られるものの、市場全体が下落したときには収益を得ることはできないことになります。

先物を利用したマーケットニュートラル戦略

先ほど紹介した例②のロングショート戦略の場合、市場全体が上昇しているときには損益はプラス、市場全体が下落しているときには損益はマイナスになっています。これは、β値の違う銘柄AとBをそれぞれロング、ショートした結果、ポートフォリオ全体でβ値が残る(1.20-1.05=0.15)ため、市場全体と同じ方向に損益がぶれることになります。

 

このように、ロングショート戦略においてポートフォリオ全体のβ値がプラスのポジションの場合はロングバイアスと言い、反対にβ値がマイナスのポジションの場合はショートバイアスと言います。

 

それでは、紹介した例②のロングショート戦略に、打ち消せなかったβ値の分だけ先物をショートして、β値をゼロにするマーケットニュートラル戦略を考えて見ましょう(図表4参照)。

 

[図表4]先物を利用したマーケットニュートラル戦略の例
[図表4]先物を利用したマーケットニュートラル戦略の例

 

銘柄Aと銘柄Bを同じ数量だけ(この場合1,000)それぞれロング、ショートした場合、ポートフォリオ全体では1.20-1.05=0.15のβ値が残ります。ロングポジションだけですと1,000,000円分のポジションがありますので、この1,000,000円分に残ったβ値分の150,000円分(1,000,000×0.15=150,000)の先物をショートすることで、β値を0にするマーケットニュートラル戦略が完成します。先物の株価は10,000円ですので、ショートする数量は15(150,000÷10,000=15)になります。

 

市場平均が30%上昇した場合に(上段)、銘柄A、Bともに想定通りのα値、β値で価格変動するならば、ロングポジションでの損益が+430,000円に対して、ショートポジションでの損益は-365,000円となり、ロングショート戦略の損益は+65,000円となります。ここに先物の損益-45,000円を合計するとマーケットニュートラル戦略の損益は+20,000円となります。

 

一方で、市場平均が30%下落した場合に(下段)、銘柄A、Bともに想定通りのα値、β値で価格変動するならば、ロングポジションでの損益が-290,000円、ショートポジションでの損益は+265,000円となり、ロングショート戦略の損益は-25,000円となります。ここに先物の損益+45,000円を合計するとマーケットニュートラル戦略の損は+20,000円となります。

 

このように、銘柄Aをロング、銘柄Bをショートにするロングショート戦略で打ち消せなかったβ値分を先物を利用してショートしたマーケットニュートラル戦略を取ると、例①の様に市場全体の動きに関わらず収益を得ることができるようになります。

 

なお、上記のロングショート戦略の例ではロングバイアスのためマーケットニュートラル戦略にするために、残ったβ値分だけ先物をショートしましたが、ショートバイアスのロングショート戦略の場合にマーケットニュートラル戦略を取るには不足するβ値分だけ先物をロングする必要があります。

 

また、マーケットニュートラル戦略で先物を利用する代わりに、オプションを組み合わせたり、スワップを取り入れたりと様々な形態があります。

 

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『実践的基礎知識オルタナティブ編(4)<代表的な戦略①ロングショート戦略、マーケットニュートラル戦略>』を参照)。

 

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1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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