中欧・東欧諸国はユーロ圏を凌駕

ピクテ投信投資顧問株式会社が、日々のマーケット情報を分析・解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報を転載したものです。

 

ポイント

中欧・東欧諸国、具体的にはポーランド、チェコ、ハンガリー、ルーマニアの経済は、ユーロ圏のぜい弱さと比較すると、力強い成長を見せています。この背景に何があるのか、また投資家のパフォーマンスに、どのように寄与するかについて見ていきましょう。

 

中欧および東欧諸国の経済は、驚くほど力強い成長を見せていて、ユーロ圏の景気後退とは一線を画しています。この成長力は、消費者信用にけん引された国内需要の伸びによって実現されています(図表1参照)。

 

[図表1]中欧・東欧4カ国における消費者信用の伸び 前年比、% ※緑線:ポーランド、灰色:チェコ、赤線:ハンガリー、青線:ルーマニア、時点:2019年4月 出所:ピクテ・アセット・マネジメント
[図表1]中欧・東欧4カ国における消費者信用の伸び(前年比、%)
※緑線:ポーランド、灰色:チェコ、赤線:ハンガリー、青線:ルーマニア、時点:2019年4月
出所:ピクテ・アセット・マネジメント

 

3つの側面を検証しましょう。

1.労働市場のタイト化

史上最低水準の失業率と力強い雇用の伸びに裏付けられた、非常にタイトな労働市場によって、個人消費が大きく伸びています(図表2、3参照)。

 

[図表2]失業率 % ※緑線:ポーランド、灰色:チェコ、赤線:ハンガリー、青線:ルーマニア、時点:ハンガリーとルーマニアは2019年3月、ポーランドは2019年4月、チェコは2019年5月 出所:ピクテ・アセット・マネジメント
[図表2]失業率(%)
※緑線:ポーランド、灰色:チェコ、赤線:ハンガリー、青線:ルーマニア、時点:ハンガリーとルーマニアは2019年3月、ポーランドは2019年4月、チェコは2019年5月
出所:ピクテ・アセット・マネジメント

 

[図表3]雇用の伸び 前年比、6ヵ月平均、% ※緑線:ポーランド、灰色:チェコ、赤線:ハンガリー、青線:ルーマニア、時点:チェコとハンガリーは2019年3月、ポーランドとルーマニアは2019年4月 出所:ピクテ・アセット・マネジメント
[図表3]雇用の伸び(前年比、6ヵ月平均、%)
※緑線:ポーランド、灰色:チェコ、赤線:ハンガリー、青線:ルーマニア、時点:チェコとハンガリーは2019年3月、ポーランドとルーマニアは2019年4月
出所:ピクテ・アセット・マネジメント

 

この労働市場の状況は、これら4カ国において力強い名目賃金の上昇を実現しています。具体的には、チェコの7.1%からルーマニアの21.6%というように、ユーロ圏の2.4%の伸び率と比較すると、はるかに高い賃金の伸びとなっています(図表4参照)。

 

[図表4]名目賃金の伸び 前年比、6ヵ月平均、% ※緑線:ポーランド、灰色:チェコ、濃い赤線:ハンガリー、青線:ルーマニア、薄い赤線:ユーロ圏、時点:チェコ、ハンガリーおよびユーロ圏は2019年3月、ポーランドとルーマニアは2019年4月 出所:ピクテ・アセット・マネジメント
[図表4]名目賃金の伸び(前年比、6ヵ月平均、%)
※緑線:ポーランド、灰色:チェコ、濃い赤線:ハンガリー、青線:ルーマニア、薄い赤線:ユーロ圏、時点:チェコ、ハンガリーおよびユーロ圏は2019年3月、ポーランドとルーマニアは2019年4月
出所:ピクテ・アセット・マネジメント

2.賃金上昇による消費者物価の上昇

中欧・東欧諸国の現状の2番目のポイントが、ユーロ圏とは異なり、既にこれらの諸国で発生している賃金上昇によるインフレです。総合およびコアインフレ率の双方が上昇しています(図表5参照)。

 

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[図表5]総合及びコアインフレ率平均 前年比、% ※緑線:ポーランド、灰色:チェコ、濃い赤線:ハンガリー、青線:ルーマニア、薄い赤線:ユーロ圏、時点:チェコ、ハンガリーおよびユーロ圏は2019年3月、ポーランドとルーマニアは2019年4月 出所:ピクテ・アセット・マネジメント
[図表5]総合及びコアインフレ率平均(前年比、%)
※緑線:ポーランド、灰色:チェコ、濃い赤線:ハンガリー、青線:ルーマニア、薄い赤線:ユーロ圏、時点:チェコ、ハンガリーおよびユーロ圏は2019年3月、ポーランドとルーマニアは2019年4月
出所:ピクテ・アセット・マネジメント

3.中央銀行の政策

インフレ懸念が台頭してくると、中央銀行はインフレ抑止のため政策金利を引き上げることを期待されます。ところが、チェコ及びルーマニアについてはある程度、政策金利が引き上げられましたが、他の国では、これまで実施されませんでした(図表6参照)。

 

[図表6]中央銀行の政策金利 % ※緑線:ポーランド、灰色:チェコ、濃い赤線:ハンガリー、青線:ルーマニア、薄い赤線:ユーロ圏、時点:ユーロ圏は2019年5月、その他は2019年6月 出所:ピクテ・アセット・マネジメント
[図表6]中央銀行の政策金利(%)
※緑線:ポーランド、灰色:チェコ、濃い赤線:ハンガリー、青線:ルーマニア、薄い赤線:ユーロ圏、時点:ユーロ圏は2019年5月、その他は2019年6月
出所:ピクテ・アセット・マネジメント

 

最も心配なのがルーマニアの状況です。昨年からの金融引締め政策は維持するものの、金融政策の正常化を開始したことから、同国のインフレ率は、既にインフレ・ターゲットの上限を超えています(図表7参照)。

 

[図表7]ルーマニアの消費者、生産者物価指数 前年比、% ※緑線:消費者物価上昇率、灰色:生産者物価上昇率、赤色破線:インフレターゲットの上限・下限、 時点:生産者物価上昇率は2019年4月、消費者物価上昇率は2019年6月 出所:ピクテ・アセット・マネジメント
[図表7]ルーマニアの消費者、生産者物価指数(前年比、%)
※緑線:消費者物価上昇率、灰色:生産者物価上昇率、赤色破線:インフレターゲットの上限・下限、 時点:生産者物価上昇率は2019年4月、消費者物価上昇率は2019年6月
出所:ピクテ・アセット・マネジメント

 

中欧、東欧諸国に投資するにあたって、金融政策の正常化がすぐに来るかどうかについて注意が必要です。金融政策の正常化は、より高いコアインフレ率をもたらすものの、強い国内需要によって正当化されるものです。ユーロ圏は、このような内需主導の景気拡大を目指していましたが、全く反対の輸出主導の景気拡大となりました。

 

 

とにかく投資家は、経常収支の赤字の拡大や公的部門の資金調達が危うくなること、更には財政赤字の拡大といった経済リスクに備えることが必要です。これらのことは、特にルーマニアとハンガリーについて重要になります。

結論

中欧・東欧4カ国の、賃金上昇による経済成長は、ユーロ圏の景気後退の影響をほとんど受けていません。この事実は、特に株式市場への投資機会があると見ています。

ピクテの新興国欧州運用チームの見方

新興国は、高い経済成長率が期待されるものの、高い経済成長率によって、必ずしも全ての株式が値上がりするわけではありません。この事実は、特に中欧・東欧4カ国に当てはまると考えます。

 

例えばポーランドの場合、2019年初来の金融セクターやエネルギーセクターといった株価指数の構成比の高いセクターがアンダーパフォームしています。対照的に、構成比が中規模の生活必需品やコミュニケーション・サービスセクターがアウトパフォームしています。

 

[図表8]MSCIポーランド株価指数 ※緑線:金融、灰色:生活必需品、濃い赤線:コミュニケーション・サービス、青線:エネルギー、薄い赤線:MSCIポーランド株価指数、時点:2019年6月30日 出所:ピクテ・アセット・マネジメント
[図表8]MSCIポーランド株価指数
※緑線:金融、灰色:生活必需品、濃い赤線:コミュニケーション・サービス、青線:エネルギー、薄い赤線:MSCIポーランド株価指数、時点:2019年6月30日
出所:ピクテ・アセット・マネジメント

 

消費者主導の経済成長は、景気拡大政策において資金の出し手である、銀行やエネルギー会社の犠牲のもとで成り立っています。

 

さらに、中欧・東欧4カ国は、同じMSCI新興国欧州株価指数の構成国である、ロシアやトルコよりも割高です(図表9参照)。

 

[図表9]中欧・東欧4カ国のバリュエーション % ※青の棒グラフ:今後12ヵ月の予想株価収益率(PER、倍、左軸)、赤のひし形:過去12ヵ月の株価純資産倍率(PBR、倍、右軸)、時点:2019年6月30日 出所:ピクテ・アセット・マネジメント
[図表9]中欧・東欧4カ国のバリュエーション(%)
※青の棒グラフ:今後12ヵ月の予想株価収益率(PER、倍、左軸)、赤のひし形:過去12ヵ月の株価純資産倍率(PBR、倍、右軸)、時点:2019年6月30日
出所:ピクテ・アセット・マネジメント

 

 結果として、中欧・東欧4カ国は、強い確信度に基く、選択的な個別銘柄投資を行う市場と見ています。現在、ポーランドのポジションは相対的に高く、中でも個人消費関連銘柄に偏っており、金融機関や銀行の組入れは小さくなっています。

 

※当資料で使用したMSCI指数は、MSCIが開発した指数です。同指数に対する著作権、知的所有権その他一切の権利はMSCIに帰属します。また、MSCIは、同指数の内容を変更する権利および公表を停止する権利を有しています。

 

※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内容が変更される場合があります。

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『中欧・東欧諸国はユーロ圏を凌駕』を参照)。

 

 

(2019年7月31日)

 

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ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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