ポイント
中欧・東欧諸国、具体的にはポーランド、チェコ、ハンガリー、ルーマニアの経済は、ユーロ圏のぜい弱さと比較すると、力強い成長を見せています。この背景に何があるのか、また投資家のパフォーマンスに、どのように寄与するかについて見ていきましょう。
中欧および東欧諸国の経済は、驚くほど力強い成長を見せていて、ユーロ圏の景気後退とは一線を画しています。この成長力は、消費者信用にけん引された国内需要の伸びによって実現されています(図表1参照)。
3つの側面を検証しましょう。
1.労働市場のタイト化
史上最低水準の失業率と力強い雇用の伸びに裏付けられた、非常にタイトな労働市場によって、個人消費が大きく伸びています(図表2、3参照)。
この労働市場の状況は、これら4カ国において力強い名目賃金の上昇を実現しています。具体的には、チェコの7.1%からルーマニアの21.6%というように、ユーロ圏の2.4%の伸び率と比較すると、はるかに高い賃金の伸びとなっています(図表4参照)。
2.賃金上昇による消費者物価の上昇
中欧・東欧諸国の現状の2番目のポイントが、ユーロ圏とは異なり、既にこれらの諸国で発生している賃金上昇によるインフレです。総合およびコアインフレ率の双方が上昇しています(図表5参照)。
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3.中央銀行の政策
インフレ懸念が台頭してくると、中央銀行はインフレ抑止のため政策金利を引き上げることを期待されます。ところが、チェコ及びルーマニアについてはある程度、政策金利が引き上げられましたが、他の国では、これまで実施されませんでした(図表6参照)。
最も心配なのがルーマニアの状況です。昨年からの金融引締め政策は維持するものの、金融政策の正常化を開始したことから、同国のインフレ率は、既にインフレ・ターゲットの上限を超えています(図表7参照)。
中欧、東欧諸国に投資するにあたって、金融政策の正常化がすぐに来るかどうかについて注意が必要です。金融政策の正常化は、より高いコアインフレ率をもたらすものの、強い国内需要によって正当化されるものです。ユーロ圏は、このような内需主導の景気拡大を目指していましたが、全く反対の輸出主導の景気拡大となりました。
とにかく投資家は、経常収支の赤字の拡大や公的部門の資金調達が危うくなること、更には財政赤字の拡大といった経済リスクに備えることが必要です。これらのことは、特にルーマニアとハンガリーについて重要になります。
結論
中欧・東欧4カ国の、賃金上昇による経済成長は、ユーロ圏の景気後退の影響をほとんど受けていません。この事実は、特に株式市場への投資機会があると見ています。
ピクテの新興国欧州運用チームの見方
新興国は、高い経済成長率が期待されるものの、高い経済成長率によって、必ずしも全ての株式が値上がりするわけではありません。この事実は、特に中欧・東欧4カ国に当てはまると考えます。
例えばポーランドの場合、2019年初来の金融セクターやエネルギーセクターといった株価指数の構成比の高いセクターがアンダーパフォームしています。対照的に、構成比が中規模の生活必需品やコミュニケーション・サービスセクターがアウトパフォームしています。
消費者主導の経済成長は、景気拡大政策において資金の出し手である、銀行やエネルギー会社の犠牲のもとで成り立っています。
さらに、中欧・東欧4カ国は、同じMSCI新興国欧州株価指数の構成国である、ロシアやトルコよりも割高です(図表9参照)。
結果として、中欧・東欧4カ国は、強い確信度に基く、選択的な個別銘柄投資を行う市場と見ています。現在、ポーランドのポジションは相対的に高く、中でも個人消費関連銘柄に偏っており、金融機関や銀行の組入れは小さくなっています。
※当資料で使用したMSCI指数は、MSCIが開発した指数です。同指数に対する著作権、知的所有権その他一切の権利はMSCIに帰属します。また、MSCIは、同指数の内容を変更する権利および公表を停止する権利を有しています。
※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内容が変更される場合があります。
当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『中欧・東欧諸国はユーロ圏を凌駕』を参照)。
(2019年7月31日)
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