改めて注目される、サイバー・セキュリティの重要性

ピクテ投信投資顧問株式会社が、日々のマーケット情報を分析・解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報を転載したものです。

 

ポイント

地政学的な緊張の高まり、規制強化の動き、5G(第5世代移動体通信)システム始動・・・この3つはお互いに全く関係がなさそうですが、この3つの事象は、今、奇しくも「サイバー・セキュリティ」の重要性に改めてスポット・ライトを当てています。

 

米トランプ政権による中国通信大手ファーウェイに対する制裁措置は、米中貿易戦争が単に米国の貿易赤字を解消するというよりももっと根深い問題であることを示すものでした。争点は「国防」であり、「セキュリティ」関連業界にとって恩恵をもたらす可能性があると考えられます。

 

「情報」が力を持つ今の世界において、守るべきは物理的な領土よりむしろ「デジタル」領域であることは間違いありません。このことは、2016年の米大統領選挙において、ロシアがソーシャル・メディアを経由して介入工作を行ったという疑惑などにも現れています。破壊的な攻撃を回避すること、情報を守ること、意図的で悪意をもった情報操作などから市民を守ることなどは、多くの先進国にとって最優先課題のひとつとなっています。

 

世界のサイバー・セキュリティに対する投資額は年10%程度のペースで拡大が続いています。これは、世界経済の成長に比べると、約3倍にも相当する高ペースでの成長といえるでしょう。

[図表1]サイバー・セキュリティは拡大中 世界のサイバー・セキュリティ・ソリューションへの投資額(米ドルベース、単位:10億ドル) 出典:IDC, 2018
[図表1]サイバー・セキュリティは拡大中
世界のサイバー・セキュリティ・ソリューションへの投資額(米ドルベース、単位:10億ドル)
出典:IDC, 2018

ヨーロッパのサイバー・セキュリティ産業の台頭

セキュリティ産業は歴史的にみると、北米が中心でしたが、ここにきて大きな広がりをみせています。ヨーロッパでも、数多くのサイバー・セキュリティ分野の開発者や事業が育ちつつあります。

 

これには、いくつかの背景があると考えられます。

 

サイバー・セキュリティの問題について、ヨーロッパ各国政府は、各国が個々に取り組むのは困難であると認識しています。このため、サイバー・セキュリティ分野のビジネスをヨーロッパ地域全体で推し進めてきました。欧州連合(EU)のイニシアティブにより、サイバー・セキュリティ分野における新たな官民連携パートナーシップに対して、これまでに累積で4.5億ユーロの投資が行われてきました。また、英国では、税法の改正がスタート・アップ企業への投資を後押ししており、サイバー・セキュリティ企業の中にはこうした恩恵を受ける企業が存在します。

 

 

また、2008年のリーマン・ショック以降、欧州の金融機関では人員削減を行っていますが、こうした流れの中で優秀な人材がサイバー・セキュリティを含むテクノロジー産業に向かっていることなども、ヨーロッパのサイバー・セキュリティ分野の進展の背景の1つと考えられます。

 

さらに、「規制」強化の動きも忘れてはなりません。2018年に施行されたEU一般データ保護規則(GDPR)によって、幅広くサイバー・セキュリティに対する需要が拡大しています。

 

加えて、米中の対立によって、その他の国が恩恵を受ける可能性もあるわけですが、セキュリティ・サービスの分野でもそれが当てはまり、ヨーロッパ企業は“米国・中国以外”の存在として恩恵を受ける可能性があると考えられます。

 

あくまでも現時点の推定ではありますが、調査会社による予測では、今後5年にわたってヨーロッパのサイバー・セキュリティ市場は、年率2ケタ成長が続くとされています注1

 

 

注1:出典ReserchAndMarkets.com, TechSciReserch

 

[図表2]サイバー攻撃による経済的損失 2018年におけるタイプ別サイバー攻撃による損失(米ドルベース、単位10億ドル) 出典:Accenture, “Thecostofcybercrime”, 2019
[図表2]サイバー攻撃による経済的損失
2018年におけるタイプ別サイバー攻撃による損失(米ドルベース、単位10億ドル)
出典:Accenture, “The cost of cybercrime”, 2019

課題を抱えるIoT

IoT(モノのインターネット)の拡大に伴い、サイバー・セキュリティの問題はますます重要性を増しています。

 

世界的に5Gが本格始動する中で、さらにより多くのデバイスがインターネットに接続され(=コネクテッド・デバイス)、IoT化が進展していくものと予想されます。世界のコネクテッド・ディバイスは現在では140億個程度みられますが、これが2021年までに250億個にまで拡大することが予想されています。そして、サイバー攻撃全体の1/4がこうしたコネクテッド・デバイス(冷蔵庫から玄関のインターフォンにまでおよぶ)をターゲットとしたものになる可能性があるとされています注2

 

注2:出典 Gartner.「Leading the IoT」and ”Top Strategic IoT Trends and Technologies Through 2023”

 

コネクテッド・デバイスの増加にともない、私的なデータは爆発的に増加すると考えられますが、それにともなって、これらの正確性や信頼性を証明することの重要性も増しています。人工知能(AI)を活用したツールはこれらの問題を解決するのに役立つと考えられるほか、長期的には量子コンピューティングが大容量のデータを処理する能力やスピード・アップを可能にするものと考えられます。

活発なM&A動向

ここ最近のテクノロジーの発達や、規制強化の動き、さらには地政学的な緊張の高まりに直面し、多くの国々が国防(特にサイバー領域)に傾注するといった状況はサイバー・セキュリティ市場のさらなる成長を促し、また、投資の観点からは良好な投資機会となる可能性があることを示唆していると考えます。

 

こうしたことの証左の1つとして、サイバー・セキュリティ分野における最近のM&A(買収・合併)の活発な動きが挙げられます。例えば、データベースやアプリケーションを保護するためのソフトウェアやソリューションを提供するインパーバ(米国)をプライベート・エクイティ投資会社トーマ・ブラボ(英国)が約21億ドルで買収したことや、シスコ・システムズ(米国)が、クラウドベースの認証サービスを提供するデュオ・セキュリティ(米国、未上場)を23.5億ドルで買収するといったニュースがありました。

 

サイバー・セキュリティ分野への投資は、中長期的な成長トレンドを活かす機会だけではなく、世界的な予測しがたい大きなイベントが発生するような場合には、ある程度の“防御”にもなる可能性があるとみています。

 

 

※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内容が変更される場合があります。

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『改めて注目される、サイバー・セキュリティの重要性』を参照)。

 

 

(2019年7月2日)

 

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1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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