2019年入管法改正で新たに整備された「登録支援機関」とは?

今回は、2019年入管法改正で新たに整備された「登録支援機関」の概要と、これが中小企業等にどのようなビジネスチャンスをもたらすのかを解説します。※わが国の人手不足解消の一手として政府が打ち出した「特定技能」という新しい在留資格。企業は外国人を雇用する際に、必ずその知識が必要となります。この資格はどのような経緯で新設され、また、どういった定義がなされているのでしょうか。本記事では、外国人雇用や外国人就労の支援を専門としている行政書士・社会保険労務士の井出誠氏が、「特定技能」と現状の就労系在留資格を比較しながら詳しく解説します。

「登録支援機関になる」というビジネスチャンス

2019年4月1日からの改正入管法が施行に伴い、入国管理局は出入国在留管理庁に格上げされ、新しい在留資格である「特定技能」も創設されました。それと同時に「特定技能外国人」受入れスキームのなかで「登録支援機関」という新しい制度もスタートし、この4月1日から「登録支援機関」の登録申請も受付が開始されています。

 

ところで、そもそも読者の皆さんは「登録支援機関」という言葉をご存知でしょうか? こちらは、世の中の関心が非常に高い「特定技能」という言葉に比べて認知度が低く、聞き覚えのない方も多いと思われます。

 

しかし、今回の入管法改正の中で非常に重要な役割を占めることになった「登録支援機関」は、個人事業及び中小零細企業にとって、新たなビジネスチャンスともなり得る制度です。今後、何らかの形で外国人雇用にかかわる可能性がある方であれば、ぜひ知っておいていただきたい内容ですので、この機会に理解を深めていただきたいと思います。

 

昨年度、人手不足に関連した企業の倒産件数は過去最高件数を記録しました。このような背景から多くの企業が人手不足解消のため期待を寄せる「特定技能」という新たな就労系在留資格が誕生しました。

 

「ぜひウチの会社も〈特定技能外国人〉を雇用したい」と考えている経営者の方々も多いと思います。しかし、14業種の特定産業分野であれば、どのような企業でも「特定技能外国人」を受け入れることは可能かというと、そうではありません。やはりそこには、受け入れ機関(会社)として一定の義務が課されています。

 

改正入管法では、「特定技能外国人」を受け入れる企業に対して、外国人の日常生活上、職業生活上、社会生活上等の総合的な支援を行うことを求めています。特定技能外国人に対しての総合的な支援を適切に行える企業でなければ、「特定技能外国人」を受け入れることは難しいということです。

 

そうはいっても、総合的な支援体制を中小零細企業が整備するには相当なコストと労力が必要になります。それを理由に「特定技能外国人」の受け入れを断念せざるを得ないということでは、せっかく創設された「特定技能」という新しい制度が使われづらい制度になってしまいます。

 

そこで、これらの支援業務は、必ずしも受け入れ機関自身が行うことに限定されておらず、新たに創設された「登録支援機関」へ外部委託することが可能な仕組みが取られているのです。

 

「登録支援機関」とは、受入れ機関との支援委託契約により、1号特定技能外国人支援計画に基づく支援の全部の実施を行うために新たに発足する機関であり、登録支援機関になるためには、出入国在留管理庁長官の登録を受ける必要があります。登録の期間は5年間で更新が必要です。

 

以下では、登録支援機関とは具体的に、特定技能外国人に対してどんな支援を行う必要があるのか、登録支援機関には誰がなれるのか、登録支援機関になるためにはどのような要件を満たす必要があるのか、登録支援機関になるための手続きはどうすればいいのか…など、これから登録支援機関になりたいと考えている経営者の方・企業の担当者の方向けに解説していきたいと思います。

「支援」の具体的な内容、「支援機関」になる条件

●登録支援機関はどんな支援を行う必要があるのか

 

「登録支援機関」とは、特定技能外国人を雇用する会社(特定技能所属機関)との契約により、委託を受けて、特定技能外国人に対して日本での活動を安定的かつ円滑に行うことができるようにするための職業生活上、日常生活上または社会生活上の支援の全部を行う法人または個人とされています。

 

さて、ここで言う「支援」とは具体的にはどのようなものなのかといいますと、例えば、特定技能外国人に対する入国前の生活ガイダンスの提供があります。これは、当該外国人が理解することができる言語により対面やテレビ電話、チャット、書面などで行う情報提供をことです。外国人に対する在留中の生活オリエンテーションの実施についても定期的な面談等が必要になりますし、当該外国人の銀行口座の開設や携帯電話等生活する上で必要な契約に関する支援もここに含まれています。

 

次に、入国時及び帰国時の空港等への送迎や外国人の住宅確保に向けた支援の実施も必要になります。もう少し見ていきますと、生活するための日本語習得支援、外国人からの相談や苦情への対応、各種行政手続きに関する情報提供及び支援、外国人と日本人との交流促進に関する支援、外国人が非自発的離職時の転職支援など、支援内容は本当に多岐にわたります。そのうえ出入国在留管理庁との関係においても、各種届出や受入れ機関に対する指導、助言、報告徴収など様々な責務を担うことになりますので、簡単ではありません。全般的に多言語対応も必要になりますので、通訳者の雇用または外部委託等も必要になってきます。

 

●登録支援機関には誰がなれるのか

 

登録支援機関に求められる支援業務の内容はなんとなく理解できましたでしょうか。続きましては、誰が登録支援機になれるのか? という疑問にお答えいたします。

 

登録支援機の登録はNPO法人など非営利目的の法人に限られているわけではなく、株式会社などの営利企業であっても登録することは可能です。また、法人に限定されているわけでもなく、所定の要件を満たせば個人やボランティアサークルなどの法人格のない団体であっても登録支援機関になることができます。ゆえに、例えば法人格のない社会保険労務士事務所や税理士事務所など日ごろから企業をサポートしている士業の個人事務所なども要件を満たせば登録支援機になることができるのです。日々の労務管理や会計管理と合わせて、顧客満足及びビジネス領域を拡大させることにも繋がることでしょう。

 

●登録支援機関になる為にはどのような要件を満たす必要があるのか

 

個人でも要件を満たせば登録支援機関になれるわけですから、対象となる裾野は非常に広いわけですが、あくまで要件を満たせばという話になりますので、続きましては、この登録支援機関になるためにどのような登録要件を満たす必要があるのかを見ていきましょう。まずは下記要件一覧をご覧ください。

 

★支援責任者及び1名以上の支援担当者を選任していること

★以下のいずれかに該当すること

①登録支援機関になろうとする個人又は団体が、2年以内に中長期在留者(就労資格に限る。)の受入れ実績があること

②登録支援機関になろうとする個人又は団体が、2年以内に報酬を得る目的で業として外国人に関する各種相談業務に従事した経験を有すること

③選出された支援責任者及び支援担当者が、過去5年間に2年以上中長期在留者(就労資格に限る。)の生活相談業務に従事した経験を有すること

④上記のほか、登録支援機関になろうとする個人又は団体が、これらと同程度に支援業務を適正に実施できると認められていること


★外国人が十分理解できる言語で情報提供等の支援を実施することができる体制を有していること

★1年以内に責めに帰すべき事由により特定技能外国人又は技能実習生の行方不明者を発生させていないこと

★支援の費用を直接又は間接的に外国人本人に負担させないこと

★5年以内に出入国又は労働に関する法令に関し不正又は著しく不当な行為を行っていないことなど

 

上記要件について、質問の多い内容にも触れていきたいと思います。

 

まず支援責任者と支援担当者についてですが、1人での兼務も可能です。逆にそれぞれ複数名選任しておくことも可能です。次に、今後外国人を総合的かつ適正に支援していくうえで、法人または個人に対して、過去の外国人中長期在留者の受け入れ実績や相談実績などが求められています。ここでいう中長期在留者は、就労ビザの外国人を想定しておりますので、日本人の配偶者など身分系ビザの方は含まれません。

 

外国人が十分理解できる言語で情報提供等の支援を実施することができる体制を有していることについては、特定技能外国人の日本語レベルをN4レベルと想定しますと、丁寧な情報提供及びヒアリングを行う上では、やはり母国語での支援実施が必要となりますので、自社内に対応できる外国人及び通訳者を雇用するか、もしくは通訳者または通訳会社などとアライアンスを組んでおく必要が出てきます。これら以外にも当然に入管法令や労働法令を過去もきちんと守ってきた個人または法人でなければ登録支援機関の登録を受けることは難しいといえます。

登録支援機関になるには、どんな手続きが必要か?

さて、ここまでお読みいただき、なんとなく登録支援機関について理解できたという方で、ウチもやはり登録支援機関の登録を行いたいと思った個人または法人経営者の方へ、ちょっと実務的な内容となりますが、その具体的手続きについてお伝えしたいと思います。

 

平成31年4月1日から受付が開始された登録支援機関の登録申請ですが、「申請先」は、地方出入国在留管理局または地方出入国在留管理局支局(空港支局を除く)となります。都道府県ではありませんのでご注意ください。

 

「申請方法」については、出入国在留管理局への持参または郵送が可能です。出入国在留管理局は、慢性的に混雑しているため、郵送による方法がお勧めかもしれません。申請は行政書士等の代理人でも行うことができます。

 

下記に列挙する登録申請書(登録手数料として、収入印紙28,400円が必要)及び添付資料を出入国在留管理局へ申請し、無事に登録支援機関の登録が認められれば、登録支援機関登録通知書が交付され、出入国在留管理庁のホームページで公表されます。その後5年に1度、登録の更新を受ける必要があります。

 

【提出書類等】

1 登録支援機関登録申請書
2 登記事項証明書(法人の場合) / 住民票の写し(個人事業主の場合)
3 定款又は寄付行為の写し(法人の場合)
4 役員の住民票の写し(法人の場合)
5 登録支援機関概要書
6 登録支援機関誓約書
7 支援責任者の履歴書、就任承諾書及び誓約書の写し
8 支援担当者の履歴書、就任承諾書及び誓約書の写し
9 返信用封筒(392円分の切手を貼付)
10 手数料納付書

 

さて、ここまで足早に登録支援機関に関する基本情報を述べてきました。今回の入管法改正において重要なポジションを担うことになった登録支援機関ですが、この登録が認められれば、複数の受入れ機関(会社)との間で支援委託契約を締結することも可能です。

 

また、受入れ機関から徴収する料金に関しても入管法令上の上限は特にありませんので、営業活動次第では、個人または企業にとってとても大きなビジネスチャンスになりうるとも言えます。

 

まだまだスタートしたばかりの制度ですので、未だ見えない部分も多い登録支援機関ではありますが、今後もこの連載を通じて、登録支援機関に関心をお持ちの皆様にとって少しでも役に立つ情報を発信していければと考えております。

 

 

井出 誠

行政書士・社会保険労務士

社会保険労務士ブレースパートナーズ 代表
行政書士ブレースパートナーズ 代表

 

社会保険労務士ブレースパートナーズ 代表
行政書士ブレースパートナーズ 代表
一般社団法人外国人雇用支援機構 理事 社会保険労務士(東京都社会保険労務士会所属)
行政書士(東京都行政書士会所属)

1975年東京都八王子市生まれ。中小企業の人事労務管理、外国人雇用支援、外国人就労ビザ手続サポート業務を中心に活動。

〈取扱業務〉
外国人雇用コンサルティング(外国人就労ビザ申請・外国人起業サポート等)
人事労務コンサルティング(人材採用コンサルティング・高齢者雇用支援・労使トラブル対応等)

〈著書〉
『相続川柳 相続を 気軽に学ぶ 五七五』(東京堂出版)

〈ウェブサイト〉
行政書士/社会保険労務士ブレースパートナーズ
https://www.visa-consulting.tokyo/
https://brace-partners.com/

著者紹介

連載経営者が知っておくべき「外国人雇用」の基礎知識…新しい在留資格「特定技能」とは?

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