不動産投資において、物件の開発を手がける「デベロッパー」を知ることは、目利きのために重要だ。しかし海外不動産となると、最新の整理された情報を入手することは容易でない。そこで本連載では、フィリピンの不動産投資事情に詳しいハロハロアライアンス・ディレクター鈴木廣政氏に、フィリピンのデベロッパーについて最新格付けランキングを聞いた。第3回目は、いよいよベスト10の発表だ。

クォリティとコスパを「現地」の生情報をもとに評価!

本記事では、弊社のフィリピン本社スタッフが、実際に現地で物件を取り扱った経験と、現地の富裕層・不動産投資家の意見を参考にして選んだ、デベロッパー(不動産開発業者)のランキングを掲載しています。

 

まず、開発してきた物件・プロジェクトに関して、管理などを含め、全体的に事業の良し悪しを評価した「クォリティ評価」を10点満点で採点。

 

ただし、高価格帯の物件は低~中価格帯の物件に比べて、当然物件の内容が良くなり、それを同一で比較するのは不公平感がいなめません。

 

そこで、価格に対してのクオリティも併せて評価しました。いわゆる「コストパフォーマンス評価」と呼ばれる評価軸を、こちらも10点満点で採点。クォリティ評価とコストパフォーマンス評価の総合点(20点満点)で順位をつけています。

同率6位…G&W Architect

ホームページが見当たらないほど無名のデベロッパーだが…?

 

ジー&ダブル アーキテクト

クォリティ評価・・・6

コストパフォーマンス評価・・・7

総合点 ・・・13

 

プロファイル

ホームページが見当たらないくらい無名のデベロッパーだが、15年以上前からFort Bonifacio Global City(以下BGC)にいくつものプロジェクトを開発しており、人気の物件が多くある。特に1階、2階にある商業施設はBGCのなかでも家賃が安く、評判がいい。

 

現地スタッフのコメント

「BGCの街ができたときには気がつくと10棟ほど建てていた会社です。マカティでは見かけず、あまり有名ではありませんが、中国系、韓国系の方をはじめ、多くの方に人気があります。素材はよいとはいえませんが、利便性が高いです」

 

同率6位…GeoEstate Development

Francisco H. Licuanan IIIがCEOを務める

 

ジーイーオー エステートデベロップメント

クォリティ評価・・・5

コストパフォーマンス評価・・・8

総合点・・・13

 

プロファイル

富裕層向けのものだったコンドミニアムを、マカティのオフィスワーカー向けに、中産階級の給与で手頃な価格の物件を提供したいという思いで発足されたプロジェクトがGeoEstate Developmentの代表作Beaconである。CEOのMr. Licuananは2004年まで16年間Ayala Landに勤務していた。

 

現地スタッフのコメント

「プロジェクトの数は少ないですが、低価格にも関わらず、ユニットの問題、故障、水漏れなどがなく、空室物件はほとんどありません」

 

同率6位…Cityland Development Corporation

一階にローカルマーケットが入っていることが多く、人気のつくり!

 

シティランド デベロップメント コーポレーション

クォリティ評価・・・5

コストパフォーマンス評価・・・8

総合点・・・13

 

プロファイル

1988年6月28日に証券取引委員会に登録され、1992年8月1日に商業運転を開始。マカティ中心街にあり、値段も良心的なことから、中所得層に人気のブランドである。

 

現地スタッフのコメント

「手がけるコンドミニアムの一階にはだいたいローカルマーケットが入っており、賃料が手頃です。マカティの中心にある物件は、現地の人に大人気。昼間でも大勢の人でごった返しているイメージがあります」

 

同率6位…Duros land properties inc.

現地の方の成長や繁栄を願い、街を大切にしながら開発していく

 

デュロスランド

クォリティ評価・・・6

コストパフォーマンス評価・・・7

総合点・・・13

 

プロファイル

Duros land properties inc.はセブを中心に不動産開発を行っている会社である。Duros Group of companiesの子会社であり、親会社はフィリピンにおける建設、学校、電力および食品産業のための貿易、供給、サービスを含む多様な事業を行っている。

 

現地スタッフのコメント

「もともと家具屋さんから始めた貿易会社で、街を大切にしながら開発をしていくイメージです。現地の方の成長や繁栄を願い協力的に支援をしてる会社ですね」

 

同率6位…Robinsons Land

フィリピン最大級の企業の不動産部門だが…

 

ロビンソン ランド

クォリティ評価・・・6

コストパフォーマンス評価・・・7

総合点・・・13

 

プロファイル

1980年に設立。モールを中心とした複合型のコンドミニアムが多く、親会社のJG サミットホールディングスは大手財閥のゴコンウェイグループを形成している。不動産・ショッピングモール開発の他に、セブパシフィック航空、ロビンソンズバンク、ロビンソンリテール、サンセルラー、JGサミットペトロケミカルなども傘下にしている。

 

現地スタッフのコメント

「これといってとてもいい物件があるという訳ではなく、それぞれの物件のイメージに統一感がない様に感じます。ただ、コンドミニアムの管理、セキュリティなどはよくマネージメントされています。物件の良し悪しに格差があるので、プリセールでは購入しない方がいいでしょう」

同率6位…Alveo

購入しやすい価格帯でありながら、高級感も漂う

 

アルヴェオ

クォリティ評価・・・7

コストパフォーマンス評価・・・6

総合点・・・13

 

プロファイル

Ayala landの傘下にあるAlveoは、Ayalaの中で最も幅広い層に人気のある、購入しやすい価格帯のブランドである。1995年に設立、本格的なプロジェクトや開発は2002年に始動した。当初の会社名はCIIだったが、2008年にAlveoへ社名変更し、そこから急速に成長した会社である。

 

現地スタッフのコメント

「この7年くらいで物件の質がかなり上がってきています。段々と高級感も出てくるようになりました」

 

同率4位…Federal Land Inc.

日本企業との共同事業も行う

 

フェデラル ランド

クォリティ評価・・・6

コストパフォーマンス評価・・・8

総合点・・・14

 

プロファイル

Federal Land Inc.は、GTキャピタルホールディングスのメンバーであり、Metrobank Groupのパートナー。1972年にFederal Homes.Inc.としてスタートし、その後、フィリピンの主要な不動産開発業者として有名な今のFederal Land Inc.となった。BGCのGrand Hyatt Residences とHotelのみBonifacio Landmark Realtyという別会社を Federal Land Inc.の傘下で設立し、プロジェクトパートナーには日本のオリックスと鹿島建設が携わった。近々では野村不動産と三越伊勢丹HDによる三越伊勢丹デパートをFederal Land Inc.の傘下で開発する予定だ。

 

現地スタッフのコメント

「Federal Land Inc.は今まで1000万円前後の物件の開発実績が多く、それらのコストパフォーマンスはかなり高いです。700万円程度の物件でも建築施工がしっかりとしていて、築10年以上が経っても空室率が目立ちません。その一方、億ションなどの最高級物件については、正直ちょっとノウハウ不足では...と感じる点も見えます」

 

同率4位…Mega World

近年様々な面で成長を続けている

 

メガワールド

クォリティ評価・・・7

コストパフォーマンス評価・・・7

総合点・・・14

 

プロファイル

1989年設立で、1996年からプロジェクトを加速させた。Ayalaに次いで街を開発できる不動産開発会社。プロジェクトは幅広くカジノや複合施設、PEZA(経済特区)エリアの開発も行っており、Boravcay島やMactan島の開発も進めている。また、マクドナルドの株を49%持っている。コンドミニアムに関して、2016年以降引き渡しのプロジェクトは、質が上がってきている。

 

現地スタッフのコメント

「どの街もとてもよい場所に抑えていて、デベロッパーに何かしらの権力が感じられます。また2014年以降に完成した物件からは徐々に良いクオリティになっています。それ以前の物件は湿気がどこも強く、素材がよくないように感じます。マクドナルドやモールが必ず隣接していて、便利な物件が多いです」

 

3位…Rockwell Land

開発する「街」のクォリティに最大級の評価!

 

ロックウェルランド

クォリティ評価・・・9

コストパフォーマンス評価・・・7

総合点・・・16

 

プロファイル

Rockwell Landは、自社が保有している火力発電所を1995年に開発、マカティの中心に今や高級住宅地として知られている巨大な街Rockwell Centerを開発した。ロペスグループの一員として、住居、オフィス、複合施設全てをシームレスに生活できる様にコミュニティを作り、生活空間の基準を引き上げ続けている。革新性や独創性などに関しては、フィリピンでは類のない品質を保っている。今後はセブにもプロジェクトを広げていくようだ。

 

現地スタッフのコメント

「素材は最高級ではないのですが、開発する街のクオリティが高く、客層がフィリピン国内で最もよいです。マカティのロックウェルセンターに関しては、全てのコンドミニアムがモールによって地下で繋がっているので台風でも問題ありません。こちらのセキュリティメンテナンスはコンドミニアムの中では1、2を争います」

 

2位…Shang Properties

アジアから世界に広がるShangri-Laブランド

 

シャング プロパティーズ

クォリティ評価・・・8

コストパフォーマンス評価・・・8

総合点・・・16

 

プロファイル

1987年以来フィリピンの不動産投資および開発に携わり、1991年にフィリピン証券取引所(PSE)に上場した。 Shang Propertiesの主要事業は、ホテル以外にもオフィスやモール、住宅開発まで広がり、ホテル事業はフィリピン全土に5つ、コンドミニアムは5つ、高級オフィスビル1つと不動産開発業者としての存在を確立している。コンドミニアムはそれぞれレベルが高くホテルのイメージをうまく連動させている。

 

現地スタッフのコメント

「Shang Propertiesはフィリピンで数々の最高レベルのホテル、コンドミニアム、オフィス物件、ショッピングモールを開発してきました。高いデザイン性、メンテナンス技術、ホテルレベルのサービスにより、フィリピン現地にて圧倒的な人気を誇っています。特筆すべきは、物件の老朽化の早さが目立つフィリピンで、築20年以上の物件でも綺麗さ、賃料、人気が高い水準で保たれている点です」

 

1位…Ayala Land Premier

1部屋10億円以上の物件までも手掛ける最高峰ブランド

 

アヤラ ランド プレミアー

クォリティ評価・・・9

コストパフォーマンス評価・・・8

総合点・・・17

 

プロファイル

1988年設立フィリピン最大級の財閥アヤラグループの傘下。街ごと開発できる力を持つ。なかでもAyala Land Premierは最高級のコンドミニアムである。古い物件でも価値が高く、2016年年以降さらにクオリティが高いプロジェクトを進めている。

 

現地スタッフのコメント

「この15年くらいで飛躍的に物件の質が上がってきており、今では1部屋10億円以上の物件までも手掛ける最高峰ブランドです。一方、2009年までの物件はどちらかというとAlveoに近い物件が多いですね」

圧倒的な「上位3社」の存在感

[図表1]フィリピン・デベロッパーランキング6位〜1位

 

 

というわけで、フィリピンのデベロッパーランキング、上位の結果はご覧の様になりました。6位に6社が並ぶなど、混戦状態ではありましたが、トップ3はそこまでの企業より頭一つ抜けた存在であるということが如実に分かる結果です。

 

物件の質に止まることなく街や国といった大きな規模で市場を見つめる会社が上位に多いことも特徴の一つと考えられます。下記の図表2は6位から1位に挙げられた各デベロッパーの詳細です。

 

[図表2]フィリピン・デベロッパー詳細(6位〜1位)

 

 

 

次回は、その他注目のデベロッパーをご紹介します。

 

 

鈴木 廣政

ハロハロアライアンス/ディレクター
GATE of ASSETS 財団/ 常任理事
公益財団法人 国際人材育成機構/マニラ駐在員事務所開設準備室長 

 

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