3.景気動向
<現状>
米国は、18年4-6月期の実質GDP成長率が前期比年率+4.2%となり、1-3月期の同+2.2%から急加速しました。
欧州は、18年4-6月期の実質GDP成長率が前期比年率+1.5%となりました。+1%台前半とみられる潜在成長率並みの成長を続けています。
日本は、18年4-6月期の実質GDP成長率が前期比年率+1.9%と、2四半期振りにプラス成長となりました。
中国は、18年4-6月期の実質GDP成長率が前年同期比+6.7%と、18年における政府の成長目標値+6.5%前後を上回りました。
豪州は、18年1-3月期の実質GDP成長率が前期比年率+4.2%と、6四半期連続のプラス成長となりました。
<見通し>
米国は、財政支出増加や減税に支えられ、個人消費を軸に順調な成長を続ける見通しです。
欧州は、金融政策や財政政策の支えによるサービス業の堅調な拡大等から、+1%台前半と推計される潜在成長率を上回る成長となる見通しです。
日本は、良好な雇用・所得環境を背景とした内需の拡大から、緩やかな成長軌道を辿ると見込まれます。
中国は、政府による経済政策やIT産業の高成長により、安定した成長を続けると予想されます。
豪州は、資源セクターの調整が一巡するため、景気拡大の足取りが、よりしっかりする見込みです。
米国の実質GDP成長率
日本の実質GDP成長率
4.企業業績と株式
<現状>
S&P500種指数の18年8月の予想EPSは172.81米ドル(前年同月比+22.2%)と、22カ月連続で過去最高を更新し、かつ10カ月連続で前年同月比二桁の伸びとなりました。東証株価指数(TOPIX)の予想EPSは133.53円(同+15.0%)と、15カ月連続で二桁の伸びとなりました(いずれも予想はトムソン・ロイターズI/B/E/Sベース)。
米国株式市場は、前半は米中貿易摩擦懸念や米国とトルコの関係悪化などから軟調となりました。後半は、米国とメキシコのNAFTA再交渉の2国間協議での合意などが好感されS&P500、ナスダックが過去最高を更新しました。ただ、月末にトランプ大統領が中国からの輸入品2,000億ドル相当を対象とした追加関税を9月前半にも課す意向を示したことで、上値が抑えられました。一方、日本株式市場は、前半は米中貿易摩擦への懸念に加え、人民元・中国株の下落、トルコリラの急落などが重石となりました。後半は米国株式市場の好調とドル高円安傾向が相場を支えました。日経平均株価は8月30日にザラ場で2万3,032.17円と節目の2万3,000円台を一時回復しました。
<見通し>
S&P500種指数採用企業のEPSは18年が前年比+23.3%、19年は同+10.2%の増益が予想されています(18年8月31日現在、トムソン・ロイターズI/B/E/Sベース)。一方、日本の予想経常利益増益率は、18年度(19年3月期決算)が前年度比+9.3%、19年度(20年3月期決算)が同+8.5%と予想されます(東証1部除く金融、QUICKコンセンサスベース、18年8月31日現在)。業績はおおむね好調ですが、引き続き米中貿易摩擦には注意が必要です。米国では、対中制裁関税第2弾(2,000億ドル分に25%)に関する公聴会等の手続きが9月6日に終了する予定です。米中貿易摩擦が再度激化する可能性もあります。
EPSと株価指数の推移(米国)
EPSと株価指数の推移(日本)
5.金融政策
<現状>
米連邦準備制度理事会(FRB)は、6月12日、13日に開催した連邦公開市場委員会(FOMC)で、政策金利(FFレート)の誘導レンジを0.25%引き上げ、1.75%~2.00%とすることを決定しました。続く7月31日、8月1日開催のFOMCでは、政策金利を据え置きました。
欧州中央銀行(ECB)は、7月26日の理事会で政策金利、預金ファシリティ金利(金融機関が手元資金をECBに預け入れる際の金利)をそれぞれ0.00%、▲0.40%に据え置きました。量的緩和政策である資産購入プログラムについては、予定通り10月に規模を現行の月間300億ユーロから同150億ユーロへと縮小し、2018年末まで継続する方針です。
日本銀行は7月30日、31日に開催した金融政策決定会合で、金融政策の枠組みを一部変更し、「長期金利の操作目標である10年物国債利回りをゼロ%程度で維持しつつ、経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうるもの」としました。買入れ額は保有残高の増加額の約80兆円を目処としながら「弾力的な買入れを実施する」としました。
<見通し>
米国では、景気、雇用が順調に拡大していることから、今後も概ね四半期に1度の緩やかなペースで利上げが継続される見通しです。
ユーロ圏では、18年末に量的緩和が終了した後も、しばらくECBは再投資により国債等の保有残高を維持する見込みです。政策金利は19年9月に預金ファシリティ金利の引き上げ、同年12月には主要リファイナンス金利の引き上げが予想されます。
日本は、経済が緩やかな拡大を続け、物価上昇率は高まるものの、日銀が目標とする2%に到達するには時間がかかる見通しのため、当面、金融政策を据え置く見込みです。
各国・地域の政策金利の推移
(2018年9月5日)