「従業員の横領」…会社の財務上どのように扱われるのか?

さんきゅう倉田
「従業員の横領」…会社の財務上どのように扱われるのか?

今回は、「従業員の横領」が会社の収益として扱われるか否かについて見ていきます。※本連載では、東京国税局での勤務を経て、フィナンシャルプランナー、芸人として活躍するさんきゅう倉田氏の著書、『元国税局芸人が教える 読めば必ず得する税金の話』(総合法令出版)の中から一部を抜粋し、会社に関連する税金の知識をご紹介します。

社員の失敗は「会社の責任」である

事業を行っていると、常に従業員の不正を心配しなければなりません。社員の失敗は会社の責任。税法では、社長が知らなかったとしても、会社がその責任を免れるものではありません。

 

『千と千尋の神隠し』より

 

Q:油屋の従業員が勝手に拾って隠匿したカオナシがまいた金(きん)の取扱いとして、最も近いのは次のうちどれか。ただし、油屋は湯婆婆(ゆばーば)が社長を務める法人とする。

 

①千の給与

 

②油屋の所得

 

③釜爺(かまじい)のボーナス

 

④千尋の両親が変化した豚の一時所得

 

『千と千尋の神隠し』(監督・宮﨑駿)は、2001年に公開されたスタジオジブリ制作のアニメ映画。神々の世界に迷い込んだ10歳の少女・荻野千尋(千)が、魔女の湯婆婆の銭湯「油屋」で働きながら、元の世界に帰るために奮闘する。カオナシは、千にハマるために、手から金を出しました。千には受取を拒否され、その後、油屋内に金をまきました。

 

A:正解は「②油屋の所得」でした。

 

カオナシがまいた金は、銭湯としてのサービスの対価と考えられます。よって、金は油屋の所得となり、それをカエルを中心とした従業員たちが横領したことになります。このあと、油屋には横領したカエルたちに対する横領損と損害賠償請求権が発生します。

横領損や従業員に対する損害賠償請求権が一般的

横領等の不法行為があった場合にどのように取り扱うか個別の規定は存在しません。判例では、従業員の地位や立場・権限の状況等から見て、判断することとしていますが、概ね、法人の収益とされています。

 

具体的には、取引先からのリベートなどですが、従業員が私的に流用しても、横領の発覚ののちに法人の収入として計上します。その後、横領損や従業員に対する損害賠償請求権が発生するのが一般的です。

 

また、主人公・荻野千尋は10歳です。このような児童を労働させることについて、法律的に問題はないのでしょうか。

 

憲法27条で「児童は、これを酷使してはならない。」とあります。

 

さらに、労働基準法56条では、児童が15歳になって最初の3月31日が終了するまでは働かせてはならない、とされています。時折、中学生の頃から新聞配達をしていた、という方がいます。これが、労働基準法違反になるかというとそうではなく、13歳以上であれば児童の健康及び福祉に有害でなく、かつ、その労働が軽易なものについては、行政官庁の許可を受けて修学時間外に働かせることができる、とされています。学校にちゃんと行って、早朝や放課後なら中学生でも働くことができるわけです。では、CMに出ている赤ちゃんとか、ドラマの子役の子はどうでしょう。労働基準法では、13歳未満でも映画の製作又は演劇の仕事であれば働かせることができる、とされています。

 

<まとめ>

社員の横領は会社の責任。

元国税局芸人が教える 読めば必ず得する税金の話

元国税局芸人が教える 読めば必ず得する税金の話

さんきゅう倉田

総合法令出版

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