いま、アジア中の本格的な投資家が集う「香港」で注目を集めている投資対象がある。FinTechによりアジアからもアクセスできるようになった「米国消費者金融市場」だ。本連載では、米国消費者金融市場への投資に詳しい、FinEX Asia社の共同創業者・CEOのマギー・ンー氏に、各種の最新事情を伺った。第1回目のテーマは、「投資対象としての米国消費者金融市場」。聞き手は、香港の金融機関であるニッポン・ウェルス・リミテッド(NWB/日本ウェルス)のシニア・マネージャー幾田朋彦氏である。

実は安定している「消費者金融」という資産クラス

幾田 マギーさんが「米国消費者金融市場」に着目し、投資家に向けてモバイルアプリでのサービスを展開するに至った経緯をお聞かせください。


マギー 私は、シティバンクにおいて、リテールバンキング事業・住宅ローン・クレジットカード・個人ローン・自動車ローンなど、消費者金融業務の担当を約20年間務め、ポートフォリオを管理していました。

 

業務を通じ、様々な状況下における数値の変遷を見てきましたが、消費者金融という資産クラスには、興味深い特徴があると知りました。金融危機時もボラティリティが低いのです。2008〜2009年の厳しい金融危機の期間でさえも、致命的な損失をはありませんでした。非常に安定した資産クラスと言えるでしょう。

 

実際、消費者金融という資産クラスは、従来の銀行によって、何世紀にも渡って独占されてきた歴史があります。しかし現在では、FinTechを活用することで、個人投資家レベルでも投資の機会があるのです。

 

携帯電話のアプリでポートフォリオを表示するマギー
ブロックチェーンやAIなどFinTechのイノベーションが「アプリ」に凝縮されている。

現在はFinEx AsiaのCEOとして、米国の消費者金融市場への投資機会を、アジアの投資家に提供しています。

 

投資家が求めているのは低ボラティリティ、適度なリターン、毎月の配当支払いです。

 

当社は、投資リターンを最適化するAI(人工知能)リスクモデル、投資家を保護するブロックチェーンによるソリューション、および投資ポートフォリオの完全な透明性とリアルタイムでのモニタリングを可能にするモバイルアプリを構築しました。

 

システムにはブロックチェーンやAIなど、様々な最新テクノロジーが活用されていますが、実際に投資家が手にして使用するのは、当社が開発したモバイルアプリです。このモバイルアプリを通じて、私たちは投資家に真の透明性とリアルタイムの監視体制を提供しています。まずは、アプリ上でどのように投資ポートフォリオを確認できるのか、説明しましょう。

 

投資家は、年次および月次の投資リターンの要約、ローンの配当およびローンの返済状況を見ることができます。ローン契約がいつから始まったのか? 最後の支払いはいつなのか? 金利はどうか? 最後の延滞はいつだったのか? 借り手のFICOスコア(米国で広く使われている、信用力の目安となる点数)、住んでいる州、所得など、それぞれ固有の情報を見ることができます。これは投資家を保護する上でとても重要なことです。

 

投資対象の明確かつ最新の情報に、投資家がアクセスできることは、本来は当たり前の権利のはずですが、FinTech以前には、相当な労力をかけて調べない限り、運用マネージャーから送られてくるレポートくらいしか情報が手に入らない環境にありました。

 

自身が投資している資産に対する理解が不十分だったり、そもそも情報が遮断されていれば、リスクの低減にはつながりません。リスクに対する理解の低さが過去の金融危機の損失を増加させたと言っても過言ではないでしょう。

 

このモバイルアプリでは、米国消費者金融市場の最新情報を、リアルタイムで、どこにいても確認することができます。香港で開発されましたが、ボラティリティの低い米国消費者金融市場への投資は、自国の預金金利が低く、もう少し金利の高い安定的な代替資産を求めている、香港以外のアジアの投資家にもお勧めです。

資産クラスとしての「米国消費者金融ローン」の安定感

幾田 アジアの投資家に提供する投資先として、米国の消費者金融市場を選んだ理由について、もう少し詳しくお聞かせください。


マギー 米国の消費者金融市場の歴史は、30年または40年以上前まで遡れますが、米国連邦準備理事会(FRB)は、消費者金融における過去の実績について過去30年間に及ぶ透明性を提供しています。また、米国の監督当局の姿勢も透明性に重きを置いています。

 

アジアの多くの地域では、市場における規則と規制が米国のように明確ではなく、投資家のコントロール外のところで変化をするため、いくら他の投資環境を整えたとしても、利益を安定させることは困難です。一方で、米国の消費者金融市場は、透明性のある過去データが蓄積されており、なおかつ、規則と規制の安定性を兼ね備えているため、投資家を余計なボラティリティから保護する環境が整っています。


もう一つの理由は、この市場が非常に多くの危機を経験しているからです。投資家にとっては困難を伴う時代もありましたが、直近の金融危機の最中においても、消費者金融市場の投資家はプラスのリターンを得ることができました。こうした実績は、金融市場に最悪の事態が発生した場合、どのようにこの資産クラスが動くかを予測するにあたっての指標になります。


幾田 消費者金融ローンでは、オンライン貸出プラットフォームが一般的に使われていますね。誰でも簡単に借りられそうなイメージがあるのですが、これは投資家にとってリスクにならないのでしょうか?


マギー 実は、米国のオンライン貸出プラットフォームは、従来の銀行よりも融資基準が厳しいのです。銀行は借り手のFICOスコアの高さで融資の可否を判断しますが、伝統的な銀行のほとんどは最低要件を約580に設定しています。一方で、ほとんどのオンライン貸出プラットフォームでは、620以上が融資の基準です。

 

銀行貸出と比較したときの、オンライン貸出プラットフォームの優位性について、もう少し説明しましょう。他業種においてもオンライン取引を早期導入した企業は、取引コストの面で圧倒的優位に立ち、従来の競合他社を凌駕します。それと同様に、オンライン貸出プラットフォームも、銀行やその他金融機関と比較して、コスト構造が遥かに低いのです。

 

銀行が抱える取引コストは、人件費だけではありません。支店や過去から引き継いだシステムの維持費、間接費なども含まれています。取引に掛かるインフラ維持の運用コストが高額のため、その分、借り手には高い金利を設定する必要があります。しかし、オンライン貸出プラットフォームには、インフラ維持にかかるコストはほとんどありません。そのため、銀行と同じ層の顧客をターゲットにし、より低い金利を設定できるのです。

 

FinEX Asiaでは、訓練されたAIを駆使して、米国のオンライン貸出プラットフォームに流通するものの中でも、最良なローンを選択しています。これらのローンが質の面において、従来の銀行債権などよりも良いか、控えめに言っても同程度であると捉えているのです。

 

本稿は、情報提供を目的として、インタビュー時点での経済データ等をもとに個人的な見解を述べたもので、FinEX AsiaおよびNWBとしての公式見解ではありません。また、特定の金融商品への投資の勧誘を目的とするものではありません。

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