建設プロジェクト全体の利益率が変わる!? 資金調達の新たな手法

日本の社会と経済を支えている建設業。直近は景気回復と東京オリンピックによる官民の建設需要で空前の好業績を記録しているが、重層下請け構造や就業者の高齢化など課題も多い。本企画では、建設業界の現状と将来展望について、国土交通省建設流通政策審議官の青木由行氏に、Tranzax株式会社代表取締役社長の小倉隆志氏がお話を伺った。第5回目のテーマは、建設プロジェクトの新たな資金調達手法についてである。

下請けの資金調達に活かす「発注者の信用力」

国土交通省 建設流通政策審議官青木由行 氏
国土交通省 建設流通政策審議官
青木由行 氏

青木 これからは元請けも下請けを買い叩くだけでなく、ある程度先のことを考えると、下請けや技能者がきちんと仕事を続けられる環境をつくっていく必要があります。プロジェクト全体のコストをいかに管理していくか、ということも連動してくるはずです。

 

その点、Tranzaxの金融サービスは、プロジェクトの発注者の信用力で受注者(元請けや下請け)の資金調達能力を上げるものであり、示唆に富んでいると思います。特に、民間工事の世界においては、思考回路をチェンジするきっかけになります。

 

小倉 下請けの資金コストはすごく大事なポイントです。元請けのスーパーゼネコンであれば、おそらく今は、メガバンクから0.3%とか0.4%で必要な資金が借りられますが、一次下請けになると地域金融機関から借りてくることが多いでしょうから平均2~3%くらいでしょう。さらに末端の大工さんなど個人事業主になると、運転資金を消費者金融で借りるのも良くあると聞きます。

 

金利は、高いところでは年10%以上になるとも言われています。法人化していても、その多くが零細企業ということもあり、大手金融機関からは借りるのは難しい。だから、個人名義で足りない資金を借りて、会社の運転資金に回していたりするというのが実態です。

受注段階で電子債権化、資金調達できる仕組みも

Tranzax株式会社 代表取締役社長
小倉隆志 氏
Tranzax株式会社 代表取締役社長
小倉隆志 氏

小倉 我々が提供している「サプライチェーン・ファイナンス」は、納入企業(中小企業)が持っている売掛金を電子記録債権化することで、支払い期限の前に、発注企業(大企業)の信用力を利用し、低利で資金調達できるサービスです。すでに大手の賃貸住宅メーカーであるレオパレス21での利用実績もあります。

 

また、新しく始めた「POファイナンス®」というサービスは、売掛金になるよりもっと早い受注段階で、受注書を電子記録債権化し、受注後の仕掛中に必要な資金を調達することが可能です。いずれにしろ発注企業や元請けの信用力を利用し、重層下請けの末端まで同じ金利で資金調達できれば、プロジェクト全体の利益率が全然違ってくるはずです。

 

青木 いままでは、下請けの資金調達コストが高いといっても、元請けは面倒を見ませんでした。それが技能者にしわ寄せがいく一因にもなっていたのでしょう。いま眺めてみると、それで全体最適なのか。施主にとっても将来、決してハッピーでない構図になっているように思います。

 

小倉 余計な金利は払う必要はありません。我々も頑張っていきたいと思います。

国土交通省 建設流通政策審議官

1962年12月生まれ。山口県出身。1986年東大法学部卒、建設省採用。国交省大臣官房付(兼)復興庁統括官付参事官、土地・建設産業局建設業課長、総合政策局政策課長、道路局次長を経て、2017年7月より現職。

著者紹介

Tranzax株式会社 代表取締役社長

一橋大学卒業後、野村證券に入社。金融法人部リレーションシップマネージャーとして、ストラクチャード・ファイナンス並びに大型案件の立案から実行まで手掛ける。主計部では経営計画を担当。経営改革プロジェクトを推進し、事業再構築にも取り組んだ。2004年4月にエフエム東京執行役員経営企画局長に。同年10月には放送と通信の融合に向けて、モバイルIT上場企業のジグノシステムを買収。2007年4月にはCSK-IS執行役員就任。福岡市のデジタル放送実証実験、電子記録債権に関する研究開発に取り組んだ。2009年に日本電子記録債権研究所(現Tranzax)を設立。

著者紹介

連載国土交通省・建設流通政策審議官に聞く「建設業」の現状と将来展望

取材・文/古井一匡 撮影/永井浩 ※本インタビューは、2018年4月9日に収録したものです。