今回は、大手チェーンへの売却に成功した飲食店M&Aの具体的事例を見ていきます。※本連載では、株式会社日本経営承継支援の代表取締役である笹川敏幸氏が、「小規模M&A」の有用性を成功事例をもとに説明します。

第三者への経営承継を希望した飲食店経営者

今回は、半世紀近く地域の方々に愛されてきた飲食店複数店舗を運営する株式会社の、M&Aの事例を紹介します。

 

 

この飲食店のオーナー社長は70代半ばで、親族や従業員で後継者になりうる適任者がいないことから、第三者への経営承継が有効な手段であると考え、M&Aにより会社の譲渡をしたいと弊社にご相談がありました。

 

このようなご相談を受け、弊社はこの飲食店とは別の業態を専門としている大手の飲食チェーンに買収提案をいたしました。

 

本件の買い手となった企業は、首都圏を中心に100店舗以上のファミリーレストランを展開する上場企業で、自社で行っていない業態の飲食店買収を模索しており「既存事業を買収することで、ゼロから新規業態を立ち上げるより成功確率を高め、時間を短縮したい」というニーズを持っていたためです。

 

提案の結果、弊社の想定どおり、この買い手企業より「新規事業として魅力的である」と評価いただき、M&Aのプロセスが進みました。当初は比較的短期間で成約するものと思われましたが、結果としてこのタイミングからクロージングまでに9ヶ月の時間を要しました。

過去の契約トラブルが発見されたものの・・・

■成約までに9ヶ月間もの時間を要した理由

 

本件では、対象企業が保有する飲食事業外の資産(不動産、有価証券、ゴルフ会員権)の整理や、金融機関に対するオーナー社長個人の連帯保証、担保提供の解除等の調整項目が複数あったことに加え、M&Aプロセスを進める中で店舗賃借にかかわる過去の契約トラブルが発見され、その解決が必要となったためです。

 

 

株式譲渡ではその会社が背負っている借入金等の負債及び潜在的な契約リスクも引き継ぐ事になるため、本業以外の資産や過去の契約トラブルは事前に整理することが必要となります。

 

これらの課題を整理・解決するため売り手、買い手だけでなく、店舗不動産の貸主や金融機関をはじめとした複数の関係当事者との調整を重ねました。利害が相反する交渉では何度も破談になりかけたものの、最終的には利害関係者全員が合意できる条件を見出すことが出来ました。

現状を正確に把握し、リスクを排除することが重要に

■M&A専業だからこその細かい対応が活きた事例

 

M&Aのコンサルティングでは、複数の関係当事者との交渉や、現状を正確に把握しリスクを排除するようにプロセスを導いていくことが求められます。

 

飲食店のM&Aは、飲食店舗専門のコンサルティング会社や不動産会社が居抜き物件譲渡の1つのパターンとして簡易的に取り扱うケースもありますが、複数店舗を有する会社の場合は利害関係者が多いため、M&Aコンサルティング専業ならではのノウハウや、きめ細かい対応が重要であると確認した事例となりました。

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