本連載は、鈴木淳巳氏が代表社員弁護士を務める弁護士法人アディーレ法律事務所の著書『弁護士が教える!小さな会社の法律トラブル対応』(あさ出版)の中から一部を抜粋し、会社経営を守るための法律知識を紹介していきます。

積もり積もった売掛金が150万円に達したケース

社長の相談

 

うちは長年、老舗の菓子店にお菓子の包み紙を販売している印刷会社です。実は最近、ある菓子店へのこれまでの売掛金が積もり積もって150万円に達してしまいました。

 

こちらから電話等で請求すると、その都度3万円、5万円といった感じで少しずつ払ってはくれるのですが、そんな調子では一向に回収できず、売掛金はたまっていく一方です。老舗の菓子店で昔から繁盛しているので資金はあるはずです。

 

どのような手順で売掛金を回収すればよいのでしょうか。

 

 

弁護士の回答

 

売掛金の支払いをのらりくらりとかわされている印象です。「売掛金回収の本気度」を伝えるために、可能ならば弁護士名義で内容証明郵便を送りましょう。

 

今回のケースでは、相手が債務の存在を認めていますので、相手に資力があれば売掛金を回収できる可能性が高いと予想されます。

まずは回収姿勢を見せるため「内容証明郵便」を送付

弁護士の見解

 

売掛金の回収が滞ってしまっているという今回のようなケースで相談に来る社長さんはとても増えています。

 

今回のケースは、これまでも電話等で請求をしているにもかかわらず、その都度、一部しか支払わないということで、のらりくらりと支払いを延ばしている相手に、より強硬に回収の姿勢を見せる必要があります。まずは、内容証明郵便を送りましょう。内容証明郵便は、相手に心理的圧力を与え、売掛金回収の後押しとなる可能性があります。

 

それでも動きがないようならば、弁護士名義で内容証明郵便を送ります。相手は訴訟を起こされることを警戒して、資力があれば支払う可能性が高まってくるでしょう。それでも支払いが行われない場合には、訴訟の提起をすることになります。

 

今回のケースでは、相手も債務の存在を認めているので、比較的紛糾することなく判決を取ることができると考えられます。資産がある人なら判決が出ても支払いが行われないということはあまりありませんが、もしも支払いが行われなかった場合には、取得した判決をもとに強制執行に踏み切ります。強制執行とは、文字通り、強制的に相手方の財産を差し押さえる手続きをとることです。

 

[図表]内容証明郵便

ただし、日本の現行の制度では、相手方の財産の所在は債権者が調査する必要があります。訴訟の手続きを進めている間にも、相手方の財産調査(不動産や動産、取引先や口座を有する銀行支店名など)を進めておきましょう。また、万全を期するなら、訴訟中に相手方が財産を処分・隠匿することを回避するために訴訟前に仮差押をしておくのも有用です。

 

 

今すぐ実行!

●相手に内容証明郵便で売掛金の支払いを求める

●訴訟の準備とともに、相手方の財産調査を行う

●万全を期するなら、訴訟前に仮差押をしておく

本連載は、2017年8月3日刊行の書籍『弁護士が教える!小さな会社の法律トラブル対応』(あさ出版)から抜粋したものです。最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

弁護士が教える! 小さな会社の法律トラブル対応

弁護士が教える! 小さな会社の法律トラブル対応

鈴木 淳己

あさ出版

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