人民元国際化指数は16年から下落傾向
1期目経済運営の主要政策看板のうち、第3は金融分野だ。中国政府は伝統的に「社会安定」を最優先政策課題とし、その前提として「経済安定」を重視している。2015年の株価暴落、16年からの資本流出や人民元相場下落はこの安定志向をさらに強め、それまで漸進的にせよ進んでいた資本取引や人民元の自由化・国際化の流れが逆行した。資本・貿易取引決済、各国外貨準備で保有される人民元の割合等を基に算出される人民元国際化指数は、12〜15年初上昇していたが、その後一転して大きく下落した。
[図表1]人民元国際化の程度
第4は河北省雄安新区計画で、中国で言う「頂層設計」、トップダウン手法の典型だ。発表が政府内からさえ、大きな驚きを持って受け止められたことは、計画が習主席とその周辺のごく一部の上層部のみが関与して策定もので必ずしも市場から発生した実需をベースにしたわけではないことを物語っている。
当局は否定しているが(国務院「雄安新区8項目決議」)、ネット上では、中国内で批判の絶えない都市農村分離戸籍制度になぞらえ、「雄安特別待遇戸籍を新設して、北京の戸籍を放棄し雄安戸籍に乗り換える者が出てくるほどにならないと、計画は成功しない」という国家主導の人為的手法が憶測されている。
[図表2]河北省雄安新区
「市場の失敗」ならぬ「政府の失敗」が懸念のひとつに
この他、「一帯一路」が1期目の看板政策だが、10月の党大会で党章修正が行われ、党の外交政策の文脈に盛り込まれたことからも明らかなように、そもそも経済政策というより、極めて政治外交戦略の側面が強い。
[図表3]一帯一路構想を主導する要因
(第19回党大会、党章改正決議抜粋)
「、、、、人類運命共同体構築を推進し、共にビジネス・建設を行い、共に利益を享受するとの原則の下、一帯一路建設推進等の内容を党規約に記載する。これらの内容を充実させることは、党の人民解放軍に対する絶対的な指導、国防・軍隊の近代化、民族団結強化、我国の開放型経済の水準向上に資する。」
(出所)10月24日付新華社報道より筆者訳出。
自らの政権基盤をより強固にしたことで、大胆な改革が進むという見方もできるが、それが1期目に見られたような、党・政府が市場を統制する傾向をさらに強める形で行われる可能性がある。習主席は市場の「見えざる手」より、党・政府の「見える手」をより信用しているということだろう。
欧米によく見られる「市場原理主義」からの中国批判は一面的で、党や政府が関与するから直ちに不適切というわけではないが、「市場の失敗」ならぬ「政府の失敗」、経済が一部指導層の政策立案・実行能力に過度に依存し、諸々の政治要因に左右されるリスクが一層高まるおそれはある。