写真:The official website of the President

2015年1月の大統領選挙で、劇的な政権交代が行われたスリランカ。その政権移行は民主的に行われましたが、前大統領との確執や経済政策の混乱などが今も見られます。8月の総選挙の結果、二大政党が「統一政府」を組むことに合意。そんなスリランカの政党政治についてお伝えする連載の後編です。

ポピュリズムが許容する範囲に制限される新自由主義

2015年8月の総選挙で追認を受けた形になった政権与党の国民統一党(UNP)が、どれだけ国民の期待に応えることができるのかは予想不可能である。そもそも、UNPは自立しているわけではない。経済に関してのアジェンダを持っているとは思えない大統領はさておき、内閣自体も一枚岩ではない。UNPと統一政府を組む、もう一つの二大政党であるスリランカ自由党(SLFP)の議員は、5年もすれば選挙で現政府と対峙することになる。


統一政府の一員として「野党」のSLFPが、与党UNPのアジェンダを推進していく、その動機は何なのだろうか。一体どれだけ真剣なのだろうか。厳しい判断局面で政府をサポートするリスクをおかせるのだろうか。いずれ時がたてば分かるだろう。

 

たとえUNPが単独で政権をとっていたとしても、前回の政権時に行なわれていたような新自由主義政策が、そのまま続行されていたかは大いに疑問である。なぜなら当時のUNPの経済政策のスタンスが、UNPが権力を瞬時に失うこととなった決定的な要因のひとつであった。そしてその後10年にわたって、対抗勢力の躍進を許すことになったのだ。

 

とりわけ新自由主義的な「小さな政府」を維持するための政策として、公的機関での新規雇用制限を行なったことは、UNPにとって厳しい向かい風となった。UNPが35万人という国家公務員の数に苦労した一方、次のラージャパクサ前大統領はその数を150万人に難なく増員し、人気取り政策による恩恵を確実に得たのである。

 

UNPはこの苦い経験から教訓を学んでおり、再びこのような失敗を繰り返すとは思えない。大衆向けの人気取り政策をやめると、上手くいかないのである。そのため今回の新自由主義は、ポピュリズムが許容する範囲内に制限される。公的機関の雇用増大、さらなる「フリーランチ」、さらなる規制、さらなる温情主義・・・これらは経済界が思い描いている政策とはとは必ずしも一致しない。

スリランカの「最良の未来」を思い描くと・・・

一番良いこれからのシナリオは何だろうか。まず政治情勢が安定を保たれること。そして国際的な支援の手が差し伸べられ、スリランカがそれを受け入れることではないだろうか。シートベルトを引き締める必要はない。海外の投資家が招かれ、投資にふさわしい環境が提供される。より多くの工場、より多くのBPO センター や旅行者がやってくる。収益性の高い仕事はほとんどが政府ではなく、プライベートセクターによってうみだされる。そして社会経済改革が成功し、新たな秩序がもたらされる。

 

これらは、理論的に考えられる最良のシナリオだ。まずはスタートを切り、実際の条件下での成果を見極めなければならない。今の時点でわれわれにできることは、この最良のシナリオに限りなく近いものになることを願うということだ。

この連載は、GTACが提携するスリランカのメディア「ECHELON」が2015年10月に掲載した記事「The New Brooms」を、翻訳・編集したものです。

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