最終契約を済ませたあとにも、業務や外部とのスムーズな引き継ぎや、これまでどおりの運営のために、前オーナー社長が勤務を続ける例は増えてきています。ここでは、その後の運営を円滑にするための取り決めなどについて解説します。

M&A後も前社長がいる理由

最終契約の当日は、一般に次のような事務手続きが行われます。

それは大きくわけて4つとなります。

 

①売り手のオーナー社長が必要な機関決定を行う
②最終契約の締結
③買い手が対価を支払う。売り手は、株式譲渡の手続きを行う
④新株主(買い手企業)のもとで新役員を選出する

 

ただ、このように最終契約を済ませたあとにも、前オーナー社長が引き続き“勤務”を続ける例も少なくありません。

その理由は、最大のキーマンともいえる前社長がしばらく残ってくれたほうが、業務や外部との引き継ぎがスムーズとなり、会社がこれまでどおり、回ってくれるからです。

つまり、それは買い手側の希望でもあるのです。

 

前社長が引き継ぎのため残留する場合は、「雇用形態、期間、報酬」をよく詰めておきます。一般に、肩書きは「顧問」や「相談役」で、週3日程度の勤務、報酬額は業務に見合った額に設定します。

 

取引銀行や取引先にも、現顧問の前社長が引き継ぎの挨拶に同行し、M&A後の会社との関係維持や強化にあたります。

 

このような効果を期待して、「前社長の一定期間の残留」を条件にする買い手企業もあるのです。

引き継ぎも含めるとM&Aは長丁場!

通常、M&Aの決意から交渉、最終契約には早くても半年~1年はかかると述べました。

加えて、オーナー社長本人や買い手の希望から、2年前後など、新会社に引き続き勤務する例も多くなっているのです。

つまり、M&Aは3年前後のスパンで考えなければならないということです。「まだピンピンしている」という社長も3年後にはどうかわかりません。

自身の健康状態などもよく考え合わせて、先手の対応が必要なのです。

 

 

本連載は、2013年7月2日刊行の書籍『オーナー社長のための会社の売り方』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

オーナー社長のための会社の売り方

オーナー社長のための会社の売り方

編著 GTAC

幻冬舎メディアコンサルティング

オーナー社長にとって、会社人生の最後で最大の仕事こそが事業承継。 創業以来、長年に渡って経営してきた会社を次代に残す。また、従業員の雇用を守りつつ、買い手企業の新たな資本の元で、会社の価値をさらに高めていくこと…

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