▼月末、そばかす娘の家
田舎領主「ほっほっほ! 娘を迎えに来てやったわい。さあ、娘をわがはいに引き渡すのじゃ!」
父親「領主様……」ガバッ
母親「……お待ち申し上げておりました!」ガバッ
田舎領主「ふふふ、苦しゅうない。面を上げよ。……それで、おぬしらの娘はどこじゃ?」
父親「その件ですが、やはり娘をお渡しするわけにはいきません」
田舎領主「何をぉ! では、手鏡はどう弁償するつもりじゃ!」
母親「こちらをお受け取りください!」
チャラ……
田舎領主「これは?」
母親「15万Gが入っております」
父親「手鏡の弁償費用に充分なはずです」
田舎領主「な……」
ぱくぱく
田舎領主「な、何をした! 貴様らのような農奴ふぜいが15万Gを準備できるはずがない! さては盗みを働いたのだな!?」
母親「盗みだなんて、滅相もありません!」
父親「女騎士さんたちのおかげでございます」
母親「あの3人のお力で、このお金をご用意できたのです。どうぞ、お受け取りください」
田舎領主「そ、そんなバカな!」
ジャラッ!!
田舎領主「……ほ、本当に15万Gじゃ。ニセ金ではなさそうじゃ」
母親「正真正銘、本物の金貨でございます」
田舎領主「そ、それで……あの娘はどこにいるのじゃ?」
父親「今は帝都です。女騎士さんに同行しております」
田舎領主「農奴が勝手に土地を離れるとは……許さんぞ!」
母親「そのことについて、慈悲深き領主様にお願いがございます」
田舎領主「うるさい! 貴様ら農奴に居住移転の自由は無い!」
母親「ここに、追加で5万Gがございます」
父親「手鏡の弁償代とあわせて、しめて20万Gです」
母親「このお金で、どうか娘に自由を与えて欲しいのです」
田舎領主「そ、そそ、そんな勝手が許されるはずが──」
父親「私たちには私的財産の自由があります」
田舎領主「!」
母親「もしも領主様がご不要なら、この5万Gはお渡ししません。私たち一家の財産にいたします」
父親「ところで領主様、噂に聞きました。近いうちに帝都銀行へ20万Gを返済しないといけないそうですね」
母親「私たちの20万Gで、領主様のお役に立てないでしょうか?」
田舎領主「~~~!」
父親「私たち一家は、古くから領主様に庇護を与えていただきました。せめてもの恩返しをしたいのです。分不相応な生意気だとは承知しておりますが……」
田舎領主「よ、良いだろう……。そういうことなら、仕方あるまい。その20万Gを受け取ってやろう……」
母親「では、私たちの娘は?」
田舎領主「……自由の身だ」しぶしぶ
両親「「ありがとうございます!!」」
田舎領主「しかし、分からん。貴様らがこんな大金を手にするとは……いったいどんな魔法を使ったのだ?」
父親「魔法ではありません」
母親「商売をしたのです」