▼月末、帝都・中央広場
書籍商「さて、と……。この辺りにしましょうか」
チュンチュン
ぴーちちちち
書籍商「まだ朝の早い時間……人通りはまばらですね。しかし、まさか私がこんな仕事をすることになるとは……。銀行家さんも面白いことを考えるものです」
ガタッ ガサガサ……
書籍商「台車を組み立てて……営業許可証を出して、と……。これで、よし。仕事を始めましょう」
書籍商「さあさあ、紳士淑女のみなさま! 寄ってらっしゃい見てらっしゃい! 本日お目にかけますのは、帝都住民のみなさまにこそふさわしいご逸品。これを見逃す手はございませんよ!」
通行人・男「……?」
通行人・女「何かしら……?」
書籍商「どうぞ、お近くでご覧くださいませ!」
▼月末、グーテンベルクの工房
コンコンッ
支店長「帝都銀行の者です。玄関を開けてくれますかな!」
秘書「このあと、田舎領主から20万Gを取り立てる仕事が待っています。ドワーフ相手の仕事は手短に終わらせましょう」
支店長「おっしゃる通りです。……おおい、玄関を開けてくだされ!」
ギイッ……
ドワーフ「なんだ、あんたたちか」
秘書「お金を受け取りに参りました」
印刷機 ガシャン! ガシャン!!
男の子「刷り上がりました!」
ドワーフ「よし、検品に回せ!」
女の子「印刷用紙が無くなりそうです!」
ドワーフ「倉庫に予備がある! 取ってこい!」
支店長「こ、これは、どういうことだ?」
ドワーフ「すまんな、慌ただしくて」
チャラ……
ドワーフ「この革袋に約束の3千100Gが入っている。受け取ったら帰ってくれ。今日は忙しいんだ」
支店長「活版印刷機がフル稼働しているだと? いったいどうなっている! あの経典が売れるなんてあり得ない!」
ドワーフ「女騎士さんたちのおかげだよ」
秘書「女騎士? どういうことでしょう?」
ドワーフ「あんたら、事務室にこもってばかりで世間のことを知らないのだろう」
支店長「と、言うと……?」
ドワーフ「今、港町ではこれが流行っているんだよ。特別にプレゼントしてやろう。わしの工房は、今はこれの印刷に追われているんだ」
秘書「こ、これは──!?」