栃木県を中心に、東京都、埼玉県においても書店、TSUTAYA、ブックオフなど多数の店舗を展開している鷗文社グループ。2013年12月、代表の小山田昭仁氏が引退を決め、M&Aによって事業の円滑な引継ぎ・継続を実現させました。引退を決断した経緯、引継ぎにあたってのエピソードなどを伺いました。今回はその後編です(本インタビューは2013年12月に収録されたものです)。

地域の消費生活者に欠かせない事業をどう持続するか?

――M&Aという方法を選択されたのはなぜですか?

 

小山田 私には直系の後継者がいませんから、親族内の事業承継という選択肢はありませんでした。第一に考えたのは、鷗文社とビブリが手がける「本」を中心とする事業は、地域の消費生活者にとって欠かせないインフラであり、これは自分が引退するしないにかかわらず永続的に運営し続けなければならない、ということです。そのためには、やはり同様の「本」を中心とする事業を営んでおり、鷗文社・ビブリのインフラを確実に地域に提供し続けることができる、経験豊富な外部の経営者にM&Aで引き継ぐことがベストだと考えました。

 

もちろん、単に引き継ぐだけでなく、「鷗文社・ビブリを買いたい」と一番高く手を挙げてくれる経営者の方に託したいという思いもありました。そういった方であれば、M&Aでそれぞれの事業がより大きく発展するようなシナジーを想定しているはずですし、それなら地域の皆様に対しても、また鷗文社・ビブリの役職員の皆さんにとっても大きなプラスになるはずだと信じていたからです。結果的には、その理想にピッタリといえる経営者の方に事業を引き継ぐことができ、今は本当に一安心といった心境です。

 

――役職員の方々の反応はいかがでしたか。社長の突然の決断に戸惑う方も多かったのではないでしょうか。

 

小山田 引退については、まずキーマンである幹部2人に話をしたのですが、こちらが驚くほど、私が経営から退くことを悲しんでくれました。

 

従業員の皆さんには社長交代の手続きが完了した後、全体会議の場を設けて報告したのですが、こちらも驚いたことに、新社長の紹介をしたところ、みんな挨拶をするために新社長の前で列を作ったのです。しっかりとした手続きで経営者が交代しており、今後もこれまでと同様の会社運営が行われるということを、従業員の皆さんが理解してくれたからだと思います。本当にスムーズな事業の引継ぎができたことを実感した瞬間でした。

自ら「意思決定」できるポジションにいるのが経営者

――これからのライフプランはいかがですか。時間はたっぷりありますが。

 

小山田 物事や知識のインプットとアウトプットでいうと、社長業に従事している間は、アウトプットがほとんどで、インプットの時間はほとんど確保できなかったという印象です。英語をもっと勉強したいという思いも強いですし、ひとまずはインプットに注力した時間を過ごそうと考えています。私がやっていた事業は、店舗のビジネスですから、基本的に、店舗のある地域に張り付いていなければなりません。生活の質を上げるためには、多くの移動距離を持つことが必要だとも考えていますので、これからは国内外を広く回って見聞を広めたいですね。

 

――最後に、これから事業承継のステージを迎える方々にメッセージをお願いします。

 

小山田 これからは、書店業界に限らず、あらゆる業界でもっともっと再編が進んでいくと思います。そうした状況の中で、私は、資本の論理に巻かれて飲み込まれてしまうのではなく、自らの意思で決断をし、向かっていく方向を決めていきたいと考えていました。今回の事業引継ぎは、それがひとつの形になったものです。経営者の皆様は、ご自身で決断をできる、意思決定をできるポジションにいますから、それをしっかり生かしていただければよいのではないでしょうか。

 

 

本原稿は、GTACのクライアントインタビューを編集・転載したものです。完全版はGTAC公式サイトをご覧ください。

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