直近の決算期では過去最高益を達成
――小山田様の経営されていた株式会社鷗文社、株式会社ビブリについてご紹介ください。
小山田 鷗文社は大正3年に創業した書店がルーツの会社で、私は3代目の経営者になります。事業の柱は、新刊書店のハートブックスのほか、TSUTAYAのフランチャイジー、そしてブックス&カフェとして展開しているドトールコーヒーショップ・エクセルシオールカフェのフランチャイジーです。
創業の地である栃木県の那須を中心に営業基盤を築いていますが、TSUTAYAは東京都、埼玉県にも出店しており、3都県合わせて11店舗を展開しています。それに新刊書店のハートブックスが5店舗、ドトール・エクセルシオールが2店舗というのが鷗文社の全体像ですね。
株式会社ビブリは、私自身が15年前に創業した会社で、こちらはブックオフ6店舗のフランチャイジーが事業の中心です。年商は2社合わせて38億円ほどですね。
――直近の決算期は過去最高益だったそうですね。
小山田 そうですね。お陰様で経常利益は1億2,000万円を超える水準となりました。営業体制という点では、これまででも最高の布陣になっていると思います。
個人のリスクマネジメントからも状況を直視
――そういった状況の中、引退を決断された理由をお聞かせください。51歳というご年齢を考えると、かなり思い切った選択だったと思いますが。
小山田 まず、社長業が大変だったわけではありません。サラリーマンの方々に比べれば自由度が高いし、やりたくないことはやらなくてもいい。それなりの所得もありましたから、その意味では非常に居心地が良い立場だったのですが、将来のことを真剣に考えると、実はこのままずっとうまくいく保証など全くないんですね。一方で、銀行融資には個人保証を入れ続けなければならない。個人のリスクマネジメントという観点から状況を直視した結果、まだ若いからといった理由で漠然と社長業を続けるのだけはやめようと考えていました。
具体的に、引退しようと決めたのは1年前です。実はそのとき、これから社長として得るであろう収入と、いまM&Aで事業を引き継いだときに得るであろう収入を、「税引き後の手残り」でざっくり比較しました。すると、驚いたことに金額はほとんど変わらないか、後者のほうが高いんです。もちろん先ほど述べたように、前者の収入については不確定要素が極めて多いですし、先に確実に受け取るお金と、将来受け取るであろうお金では、金額が同じでも自分にとっての価値・意味が大きく異なります。
――ご自身の抱えるリスクと金銭面の現実を直視したわけですね。
小山田 はい。それに私は常々「人の二倍、生きたい」と考えてきました。経営者としての人生は良いことも悪いこともありましたが、正直、一通り経験してきたという思いがあります。これからたとえば65歳まで15年間、鷗文社・ビブリの経営者を続けたとしても、その反復に過ぎないのでは…と強く感じたわけです。今、ここでスパッと区切りをつければ、これまでとはまったく違う人生を生きることができる、このチャンスを掴むかどうかは、まさに自分の決断次第ですし、私は実際に決断しました。