渋谷と横浜を結ぶ東急東横線の元住吉駅から徒歩1分の地に本店を置き、東京・神奈川・千葉の3都県で14店舗を展開する住吉書房。ほとんどの店舗が駅ビルや駅高架下という好立地にあるため、関東圏にお住まいの方であれば、その名前を目にしたこともあるのではないでしょうか。その住吉書房で、17年間にわたって代表取締役社長を務めていたのが片桐和彦氏。2015年9月にM&Aで事業を引き継ぎ、新たな一歩を踏み出した同氏に、事業の引継ぎを決めた理由、なぜM&Aという手法を選択したのかなどを伺いました。今回はその前編です(本インタビューは2015年10月に収録されたものです)。

「経営再建」が社長としての最初の仕事

――経営されていた住吉書房さんの沿革と社長就任の経緯について教えてください。


片桐 書店経営は昭和46年に先代社長である父が始めた事業です。もともとの家業は蕎麦屋で、先々代が昭和2年に創業しました。昭和24年から25年頃、先代社長がスーパー事業に乗り出し、一時は十数店舗を構えたのですが、大型チェーンの進出攻勢を受けて、何か新しい事業を、ということで始めたのが書店経営というわけです。


先代は新しいお店を出すのが大好きで、住吉書房も100回以上は出店したのではないでしょうか。しかし、そのうち70回は採算が合わずに撤収という感じで、平成10年頃には過剰な投資でついに立ち行かなくなり、銀行や問屋さんと相談した結果、当時専務だった私を社長とする新体制で経営健全化を図っていくことになりました。


――社長就任は何歳のときですか?


片桐 37歳です。学生時代からお店に入って、店長時代も合わせると20年近くは店舗で働いていたと思います。その間ずっと、先代の出店戦略を心配しながら見ていたら、結局、社長を継ぐことになったかたちです。


引き継いだときは34店舗あったのですが、何から何まで各店舗の店長任せという経営でした。そこでまずは本部機能を作り、すべてのお店がきっちり利益を出せるような体制を作っていきました。結果、社長を継いでから最初の13年間はずっと増収増益となり、経営の建て直しはそれなりに成功したと思います。現在は14店舗ですが、売上げは34店舗の頃よりもずっと大きい状況です。

気になって仕方がなかった「会社の数字」

――そういった中での、今回のM&A。引退を決めた理由は何でしょうか。

 

片桐 やはり、書店経営については「やり切った」という思いが出てきたからです。社長になってから17年間、それこそほぼ365日、朝昼晩と会社に出て、現場から上がってくる数字やメールをすべてチェックし、指示を出し続けてきました。これは性格的なものですが、すべて自分の目で見ないと判断ができないんです。もちろん、長期旅行には一度も行ったことがないですし、ちょっとした旅行に行ったとしても、会社の数字が気になって仕方がない。

 

現在54歳で、引退には早いと言われることもありますが、これまで働いた時間を足したら、一般的な定年年齢まで働くのと遜色ないくらいになっているのではないかと思ったわけです。

 

 

本原稿は、GTACのクライアントインタビューを編集・転載したものです。完全版はGTAC公式サイトをご覧ください。

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