判断基準になる「社会通念」とは?
節税については、さらに注意しなければいけないことがあります。結論から言えば、「社会通念上、合理的な経費」であることです。社会通念上という言葉は、社会常識という言葉に置き換えてもいいかもしれません。
大阪府で貿易商を営むM社の代表取締役社長だったJさんは、あるとき比較的利益が出たので、資産形成の目的もあってオーストラリアのゴールドコーストにリゾートマンションを購入しました。貿易商という職業柄、オーストラリアは2カ月に1度ぐらいは出張があり、従業員が出張に行くケースもあります。
さらに、利益がたくさん出たために、数千万円もするクルーザーも購入。マンションとクルーザーの両方を、マンションは海外の営業所として会社の必要経費に、クルーザーは会社の福利厚生として減価償却費で計上しようとしました。
ところが、担当税理士から、リゾートマンションはぎりぎりセーフかもしれないが、クルーザーはアウトだといわれました。従業員がオーストラリアに行く機会はほとんどなく、また金額的にも「社会通念上、ちょっと無理がある」と指摘されたのです。
結局は社会常識に照らして妥当か否か
これを受けてJさんはこう言います。
「社会通念上というのがポイントで、福利厚生費として落とすのであれば国内でクルーザーを買って、社員でも使える別荘などとセットになっていればよかったのかもしれません。実際にはオーストラリアの取引先とか、国内の商社などの取引先のオーストラリア駐在員を招いて使うこともありますが・・・」
このあたりの判断は、税理士レベル、税務署レベルでも違いが出てくる可能性がありますが、ようするに大切なことは社会常識の範囲内であることです。たとえば社員旅行も世界一周とか、豪華客船で海外旅行なんていうと、税務署から指摘を受けることになるでしょう。
節税に失敗しないノウハウのひとつとして覚えておきましょう。