「経費の割合」を見守り続ける税務署
節税法で忘れてはならないことはいくつかあります。たとえば、新規に立ち上げた企業では問題ありませんが、すでに5年、10年と決算を行ってきた企業では、毎年行われる企業の経費の構成比のようなものが重要になってきます。
都内で食品卸業を営むK社長は、創業10年目にあたる昨年、税理士から通常の会計年度に比べて交際費と広告宣伝費が異常に多い、という指摘を受けました。創業10年目に行った創業記念パーティーやゴルフコンペ、社員旅行などの経費が大きく膨らんでしまった結果ですが・・・。
「税金のプロは、前年、あるいは前々年といった具合に、時系列で経費の使用状況を見ているんだな、ということがわかりました。経費の割合が、通常の年に比べて異常に多い、あるいは極端に少ないといった“変化”に対して敏感なのです。幸い、創立10周年というイベントがあったために、税理士さんには納得してもらい、税務当局からも何も指摘を受けませんでした。」
時系列的に極端なズレが生じると・・・
周知のように、税務上さまざまな経費は、交際費とか福利厚生費、広告宣伝費、通信費などの「科目」に分類して、それらの合計額から全体の経費が算出されます。経費以外の部分でも、時系列的に極端なズレが生じるとチェックされる場合もありますが、企業経営に継続性が重要なように、貸借対照表や損益計算書といった企業の決算書でも「継続性」が問われるのです。
確かに、突発的に利益が増えてしまったときなど、何とか経費をいっぱい使って利益を圧縮したいという気持ちもわかりますが、大切なことは、たとえば福利厚生費だけ突出して多くなってしまったり、高級外車やクルーザーといった、いかにも節税対策のために多額の出費をしました・・・という決算内容では、税務当局ににらまれる結果になります。