国策などによっても生産量が急増・急減する綿花
農業は自然が相手ですので、年によって豊作・不作がありますが、それだけでは説明できないほど生産量が急増・急減するのがプランテーション作物です。国際価格の変動や国の政策、大口需要先の思惑などによって産地や収穫量が大きく変わります。プランテーション作物として長い歴史を誇る綿花の生産量の統計を地図化してみました。
まず、2013年の世界の綿花の生産量に1995~2013年の生産量の増減率を重ねました(図表1)。世界の綿花の生産国を上から挙げていくと、1位:中国、2位:インド、3位:アメリカ、4位:パキスタン、5位:ブラジルですが、アメリカを除いた各国で生産量を大幅に伸ばしていることがわかります。
[図表1]世界の綿花生産量(2013年)と増減率(1995年との比較)
次に1995年から2013年にかけての生産量の伸びが高い国を色分け地図にしてみました(図表2)。もともと生産量が上位の国々に加え、オーストラリアやブラジルなど、広大な国土を持つ熱帯~砂漠気候の国で生産量が伸びていることがわかります。
[図表2]綿花の生産量が増えた国(2013年)(10000t 以上)
逆に、綿花の生産量が大きく落ち込んだ国を塗りつぶしてみると(図表3)、イランから西の中東諸国や旧ソ連の中央アジア諸国、アフリカ、アルゼンチンで落ち込みがひどいことがわかります。
[図表3]綿花の生産量が減った国(2013年)(3000t 以下)
アパレルチェーンの大量仕入れが環境悪化を促す!?
中央アジア諸国やエジプトでは、旧ソ連が主導して1970年代から1990年代にかけて、巨大なダムや灌漑水路によって砂漠に近い半乾燥地帯(ステップ)を綿花畑に変える国家プロジェクトが相次いで行われました。
アラル海に注ぎ込む大河、アムダリア川の水をカスピ海方面に流すことで砂漠を綿花畑に変えた「カラクーム運河」計画や、1970年にソ連の援助でナイル川に建設されたエジプトの「アスワンハイダム」による環境への悪影響が懸念されています。
グローバル化を極めるアパレルチェーンでは、均質な原料を大量に安く仕入れることを大前提としていますが、こうした悪影響を促すおそれがあります。