会社の役員や従業員を後継者に選ぶとき、株式買い取りのために高額の資金が必要となります。その手配の仕方や注意点を見てみましょう。

資力不足ならMBOやEBOの活用も一手

会社の後継者として親族内に候補者がいない場合、まず考えるのが役員や従業員への承継かと思います。また、一時的に役員や従業員に承継しておき、時期を見計らって親族へバトンタッチするなどの方法も考えられます。

 

このとき、会社の株式あるいは株主総会における議決権を後継者候補の方に集中させる必要があります。なぜなら、会社をコントロールするためには株主総会における決定権が必要だからです。しかしながら、通常は役員や従業員に株式を買い取るだけの資力がない場合も多く、この株式買取資金をどのように調達するかが大きな問題となります。

 

役員が会社の株式を買い取り、支配権を得ることをMBO(マネジメント・バイ・アウト)、従業員が同様に行うことをEBO(エンプロイー・バイ・アウト)と呼んでいます。

 

会社の株式を買い取る際には、多額な資金を必要とするため、ファンドと組んで資金を調達したり、金融機関から資金を借り入れたりします。一般的に用いられる手法は、後継者が買収会社を設立し、投資ファンドや金融機関から買収資金を調達する方法です。買収後は買収会社を吸収合併することにより、投資ファンドや金融機関からの出資や借入は、会社のキャッシュフローから返済していくことになります。

創業者一族は株式を現金化できるチャンス

 MBOやEBOを行う際のメリットとして、①創業者あるいはオーナーが株式を資金化できる(納税資金を確保できる)、②後継者に役員や従業員を指名することで、モチベーションをアップさせることができる、③他社への売却(M&A)に比べ、買収価格の交渉がスムーズであることや会社売買のマイナスイメージを回避することができる、といったことが考えられます。

 

一方、注意事項としては、①取引先や取引金融機関等、関係者の理解を得ておく必要があること、②借入金等に対する個人保証や担保提供について、手当てをしておく必要があること、③借入により資金を調達した場合、買収会社を合併した後の財務内容が悪化するため、あらかじめ資金繰り等を検討しておく必要があること、などが挙げられます。

 

MBOやEBOは、株式の全部または大部分を譲渡して事業を承継する場合に用いられる手法です。この場合、創業者(オーナー)は、ほぼ全面的に経営から退くことになります。一方で、一部の株式のみを譲渡して経営権を承継する方法もあります。この場合には大部分の株式は創業者(オーナー)が保有し続けることになりますから、経営に対する大きな影響力を残すことになります。

 

いずれの手法においても、承継後の事業を想定しながら前もって計画的に手続きを進めておく必要があります。

 

 

この記事はGTACホームページより転載したものです。

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