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「昇進=昇給」という期待を打ち砕いた辞令
中堅のITサービス企業で法人営業チームのリーダーを務め、年収650万円を得ていた高橋翔太(32歳・仮名)さんは、前年度の営業目標を150%達成し、同期トップの早さで課長昇進の内定を受けました。上司である部長から個室に呼び出され、「来期から営業課長を任せる。君の実績なら当然の抜擢だ」と告げられた際、高橋さんはこれまでの努力が報われたと実感していました。年収アップと裁量の拡大を期待し、意欲を高めていたといいます。
ところが、人事部から提示された新たな労働条件通知書を手にした瞬間、高橋さんは目を疑うことになります。基本給への加算となる役職手当の額は、わずか月額3万円に過ぎませんでした。さらに、管理監督者扱いとなることで、これまで毎月確実に支給されていた平均40時間分の時間外労働手当(約10万円)が全額不支給となる旨が明記されていました。
「責任と業務量は一気に増えるのに、支給額はこれまでより実質7万円も減る計算です。あまりの待遇の理不尽さに愕然としました」
高橋さんは当時の衝撃を淡々と語ります。管理職になれば相応の待遇改善が得られると思い込んでいた高橋さんにとって、手取りが逆転する現実は到底納得できるものではありませんでした。周囲の先輩社員が「課長になると生活が苦しくなる」とぼやいていた愚痴の意味を、身をもって知ることになったのです。
厚生労働省『令和7年賃金構造基本統計調査』によると、非役職者の平均月収(所定内給与額)は31.05万円。係長級が39.92万円、課長級が52.92万円と、昇進するにつれて給与は上昇していく傾向にあります。しかし、企業規模や業種によっては役職手当の額が月額数万円程度にとどまるケースが少なくありません。
また、管理監督者として扱われる階級への昇進に伴い、時間外労働手当の支給対象外となることで、残業時間の長い現場社員ほど「昇進後に総支給額が減少する」という賃金の逆転現象が生じることも珍しくないのです。