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真面目な息子の過ち
「息子は『自分の遊ぶお金くらいは自分で稼ぐよ』と一生懸命バイトしていたんです。でも、会社の総務から知らされて、さすがに血の気が引きました」
都内のメーカーに勤め、月収約75万円を得ている佑さん(54歳)。妻、そして都内の私立大学に自宅から通う長男・雅也さん(20歳)の3人で暮らしています。
雅也さんは責任感が強く、真面目な性格です。「サークルの遠征費や飲み代くらいは自分で工面したい」と、スキマバイトアプリを活用し、空いた時間を見つけては精力的に単発の仕事に入るようになりました。飲食店のホールやイベント会場の設営、物流倉庫の仕分けなど、授業の合間や休日に都合のよいシフトを選んで働けるスキマバイトは、雅也さんにとって都合がよい働き方でした。アプリ経由で報酬が即座に振り込まれる手軽さもあり、「今月少し厳しい」と感じたときの臨機応変な対応も可能です。
佑さんも雅也さんから「バイト代で自分のものはやりくりできている」と話を聞くたび、「学生のうちから自分で稼ぐ感覚を身につけて偉いな」と温かく見守っていました。
しかし、年が明けたある日、勤務先の総務部から佑さんのもとへ一本の内線が入ります。
「息子さんのアルバイト収入ですが、申告された金額が扶養の基準を大きく超えているようです。また、特定扶養控除が適用できなくなるだけでなく、会社から支給していた家族手当の返還手続きも必要になります」
驚いた佑さんが帰宅後に雅也さんへ確認したところ、思わぬ実態が明らかになりました。複数の事業者で入った単発バイトの給与を合算すると、年間のアルバイト収入は約205万円に達していたのです。
固定のアルバイト先であれば、年末調整の時期や労働時間が長くなった段階で、店長や責任者から「扶養の範囲は超えていないか?」「シフトを少しセーブしたほうがいいんじゃないか」と声をかけられるケースもあるでしょう。しかし、案件ごとに勤務先が変わる単発のスキマバイトでは、雇い主側がほかの事業者での就労状況まで把握することはできません。誰からも注意を促される機会がないまま、雅也さん自身も年間の累計額を意識することなく、シフトを入れ続けてしまっていたのです。
19歳以上23歳未満の学生を扶養する場合、一定の年収枠を超えると親が受けていた「特定扶養控除」の適用から外れてしまいます。佑さんの年収水準では、所得税と住民税を合わせた控除の消失による増税額は、実に約17万円にのぼりました。
さらに追い打ちをかけたのが、勤務先の家族手当(扶養手当)の取り扱いです。佑さんの会社では税法上の扶養親族であることを要件に「子1人につき月1万5,000円」の手当が支給されていましたが、扶養から外れたことで過去1年分に遡り、18万円の一括返還を求められることになったのです。
税金の追加負担と手当の返還を合わせると、支払わなければならない総額は約35万円に達しました。
事情を知った雅也さんは、「かえってお父さんに大きな負担をかけてしまった……」と真っ青になり、深く頭を下げて謝罪しました。息子の自立心と家族を思いやる真面目さを痛いほど知っているだけに、佑さんは激しく叱責することもできず、ただ苦笑いを浮かべながら「つ、次からは気を付けてくれよ……」と震える声で許すしかありませんでした。