労働政策研究・研修機構「転勤に関する個人web調査」(2017年公表)によると、直近の国内転勤時に配偶者が働いていた既婚者のうち、転勤に際して配偶者がそれまでの会社を辞めた割合は24.1%でした。共働き世帯が増えるなか、転勤は本人だけでなく、配偶者のキャリアにも大きな影響を与えます。福岡への転勤が決まった38歳の会社員男性は、妻も当然ついてきてくれるものと思っていました。しかし、妻は同行を拒否。さらに、妻から投げかけられたある質問に、男性は言葉を失ってしまいます。※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したものです。
ここに住みたいって言ってたじゃないか…〈世帯年収1,400万円〉38歳夫、福岡転勤への同行を拒む36歳妻に困惑。「私が海外赴任になったら?」の逆質問に言葉を失ったワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

昇進を伴う福岡転勤。喜んでくれると思っていた妻から意外な反応

東京都内で暮らすケンジさん(38歳・仮名)は、大手メーカーで営業職として働く会社員です。年収は約750万円。妻のリサさん(36歳・仮名)はIT企業の企画職で、年収は約650万円。夫婦の世帯年収は約1,400万円です。

 

結婚7年目で子どもはおらず、都内のマンションで2人暮らし。夫婦ともに仕事が忙しく、平日はそれぞれ帰宅が遅くなることもありますが、休日には旅行や外食を楽しんできました。そんなケンジさんに、勤務先から福岡支社への異動の打診がありました。翌年4月から営業課長として赴任するというものです。

 

「入社してからずっと営業畑を歩んできましたが、ようやく管理職を任されることになったんです。福岡は取引先も多い重要な拠点ですし、今後のキャリアを考えても大きなチャンスだと思いました」

 

転勤の期間は3年程度の見込み。ケンジさんは前向きに受け止め、上司にも異動を受ける意向を伝えました。帰宅後、妻に転勤の話をすると、リサさんも昇進については「よかったね」と喜んでくれたそうです。

 

ところが、その後の会話で思わぬ食い違いが生じます。

 

「来年の春からだから、引っ越しの準備もしないとね」

 

ケンジさんがそう言うと、リサさんは不思議そうな顔をしました。

 

「引っ越しって、あなたの? 単身赴任になるんだよね?」

 

ケンジさんは驚きました。結婚以来ずっと一緒に暮らしてきたので、今回も当然、妻がついてきてくれるものだと思っていたのです。

「福岡に住みたいって言ってたじゃないか」

ケンジさんが妻の反応に納得できなかったのには、理由がありました。数年前、夫婦で福岡を旅行したときのことです。博多で食事を楽しみ、糸島まで足を延ばした2人は、街の雰囲気や食べ物の美味しさをすっかり気に入りました。その際、リサさんは「福岡っていいところだね。ここに住んでみたいな」と話していたのです。

 

「だから、妻も喜んでくれると思っていたんです。東京と比べて家賃も抑えられるでしょうし、自然も近い。福岡なら東京に戻るのも比較的簡単ですから」

 

ケンジさんが「前に福岡に住みたいって言ってたじゃないか」と伝えると、リサさんはあきれたように答えました。

 

「旅行で住みたいって言うのと、実際に仕事を辞めて引っ越すのは全然違うでしょう?」

 

ケンジさんは、妻の言葉に戸惑いました。

 

「妻はIT企業で働いているので、福岡でも仕事は見つかるんじゃないかと思ったんです。リモートワークもあるでしょうし。今の会社を辞めたくないなら、福岡で働けるように相談してみてもいいのではないかと」

 

しかし、リサさんは現在、都内の本社で新規事業の企画を担当しています。前年には管理職に昇進したばかりで、今後のキャリアにとって重要な時期を迎えていました。リモートワークは認められているものの、原則として出社する日も決まっており、福岡から現在の仕事をそのまま続けられるわけではありません。

 

「妻も転職経験がありますし、福岡でも働けると思っていました。仕事を辞めてほしいと強く言ったわけではなく、何か方法はあるんじゃないかと思ったんです」

 

ところが、その言葉を聞いたリサさんの表情が変わりました。