自らの老後を守るための大切な蓄えが、働かない大人の子どもの生活費に消えていく――。そんな過度な経済的依存に頭を抱える高齢の親は少なくありません。親には成人した子どもをどこまで養う義務があるのでしょうか。老後資金の枯渇を防ぎ、納得のいく資産継承を実現するために知っておくべき法的備えと対処法を考えます。
「お前には1円でもやるもんか!貯蓄3,500万円・東京在住74歳元大手部長父の憤怒…有名私大卒48歳無職長男が平然と言い放った「親の金で暮らして何が悪い」 ※写真はイメージです/PIXTA

「息子のために働いてきたのではない」…74歳元エリート父の憤激

「息子に毎月15万円も渡してきました。もう5年になります。こちらも老後の生活がありますし、いつまでもこのままではいけないと思っています」

 

東京都内の持ち家で暮らす山田茂さん(74歳・仮名)は、苦々しい口調で語ります。

 

茂さんは大手企業で部長職まで務めた人物です。現役時代の蓄えと退職金を合わせ、退職時には約3,500万円の預貯金がありました。現在は月20万円ほどの公的年金を受給しており、住宅ローンも完済しています。派手な暮らしを望まなければ、老後の生活を維持できるだけの準備はできていたといいます。

 

ところが、5年前、思いもよらない事態が起こります。有名私立大学を卒業後、中堅商社に勤務していた長男の大輔さん(48歳・仮名)が、突然会社を辞めて実家に戻ってきたのです。

 

人間関係に疲れたという息子の説明を聞き、茂さんは当初、無理に再就職を急がせることはしませんでした。現役時代、人間関係に悩み、心身を病んでしまった同僚を見てきたからです。しばらく休んで、次の仕事を探せばいい。そう考え、当面の生活費を援助することにしたのです。

 

しかし、いつまでたっても大輔さんが仕事を探す気配はありませんでした。日中は自室で過ごし、深夜までネット通販や動画視聴に興じる毎日。茂さんが再就職について尋ねても、「今は働く気になれない」「そのうち考える」と話をそらします。

 

やがて大輔さんは、生活費や小遣いとして毎月15万円を要求するようになりました。茂さんが「いつまでも親が面倒を見るわけにはいかない。そろそろ仕事を探したらどうだ」と促すと、大輔さんは不満を露わにして反論します。

 

「親なら子どもの生活の面倒を見るのが当然だろ」

 

茂さんは、息子に仕事を探すよう何度も促しましたが、そのたびに反発され、口論になりました。近所に住む人たちに親子の揉め事を知られたくないという思いもあり、強く言い切れずにいたといいます。「今月だけ」「仕事が見つかるまで」と自分に言い聞かせ、要求されるたびに現金を渡しているうちに、援助は5年間も続いてしまいました。

 

息子に渡したお金は、毎月15万円で5年間、合計900万円。さらに、食費や光熱費など、同居によって増えた生活費も重なり、茂さんの預貯金は3,500万円から2,400万円ほどに減っていました。