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「名義貸し・偽装法人契約」の最新手口
賃貸借契約では、申込書、本人確認書類、法人登記、決算書、保証会社の審査などを確認したうえで契約するのが通常です。しかし、これらの書類上は一見問題がないように見えても、実際の使用者や利用目的が見えにくいケースがあります。
たとえば、登記簿上は存在するものの事業実態が乏しい法人が契約者となる場合や、信用力のある個人・法人の名義を使って、実際には別の人物が部屋を利用する場合です。なかには、報酬目的で名義を貸すケースや、契約後に無断で第三者へ使用させるケースもあります。
このような場合、オーナーや管理会社から見ると、契約時点では通常の法人契約・高属性入居者に見えます。しかし、実際には荷物の受取場所、違法行為の連絡拠点、実態不明の事務所などとして利用されるおそれがあります。
特に注意すべきなのは、「契約者」と「実際に出入りしている人」が異なる場合です。法人名義であっても、誰が、どのような目的で、どの範囲で物件を使うのかを確認しておかなければ、あとから無断転貸、使用目的違反、反社会的利用などの問題に発展する可能性があります。
筆者自身、匿名・流動型犯罪グループの拠点といった深刻な事案に直接遭遇した経験はありませんが、たとえば契約者が勤務先の後輩などに無断で部屋を使わせていたという相談を受けたことはあります。契約名義と実際の利用者がずれる問題は、賃貸管理の現場では決して珍しいものではありません。
物件が「社会問題の舞台」になったとき、大家が直面するリスク
物件が違法行為や不適切利用の拠点として使われた場合、オーナーが直ちに刑事責任を負うとは限りません。しかし、「知らなかった」で済む問題でもありません。警察からの照会や立入り、近隣住民からの苦情、他の入居者からの不安の声など、管理上の対応に追われることになります。
さらに、物件名や所在地が報道やSNSで拡散されれば、いわゆる風評被害が生じる可能性があります。既存入居者の退去、入居希望者の減少、賃料の下落、売却時の評価低下など、収益物件としての価値に影響することもあるのです。不動産投資において、物件の信用は目に見えにくい資産ですが、一度損なわれると回復には時間がかかります。
また、不審な利用実態を把握していたにもかかわらず放置していた場合には、オーナーや管理会社の管理責任が問題となることもあります。通常の賃貸オーナーが直ちに犯罪収益移転防止法上の義務違反を問われる場面は限定的ですが、契約書の条項が不十分であったり、警告を受けても対応しなかったりすれば、民事上の責任や社会的批判を受けるリスクはあるのです。
つまり、入居者の不適切利用は、単なる「入居者トラブル」ではありません。オーナーにとっては、物件のブランド、収益性、金融機関や近隣との関係にまで影響し得る重大な資産管理リスクなのです。
「疑わしい」だけでは動けない、契約解除の法的な壁
入居者の利用実態に不審な点がある場合、オーナーとしては早く契約を解除し、退去させたいと考えるかもしれません。しかし、日本の賃貸借契約では借り主の保護が強く、「疑わしい」というだけで一方的に退去させることはできません。
契約者と実際の使用者が異なる、頻繁に知らない人物が出入りしている、郵便物や荷物の受取場所として使われているといった事情があっても、それだけで直ちに解除が認められるとは限りません。無断転貸、使用目的違反、反社会的勢力排除条項違反、迷惑行為、賃料不払いなど、具体的な契約違反を整理し、信頼関係が破壊されたといえるだけの事情を主張・立証する必要があります。
特に危険なのは、鍵交換、荷物撤去、電気・水道の停止などの自力救済です。裁判手続きを経ずに排除しようとすると、かえってオーナー側が損害賠償請求を受けるおそれがあります。
実務上は、管理会社と連携し、出入りの状況、近隣苦情、荷物の状況、契約者との連絡履歴、警察への相談内容などを記録化することが重要です。そのうえで、是正催告、解除通知、占有移転禁止の仮処分、明渡訴訟など、状況に応じた手続きを検討します。不適切な入居者対応では、早く動くことと、正しい手順で動くことの両方が必要です。
「一から入居者を厳選できる」という新築アパート投資が持つ防衛力
中古物件を購入する場合、利回りや立地だけでなく、既存入居者の属性や契約内容も引き継ぐことになります。過去の入居審査が十分だったのか、無断転貸禁止、使用目的制限、反社会的勢力排除条項などが契約書に入っているのか、実際の使用者と契約者が一致しているのかは、購入後に初めて問題化することもあります。
一度入居している賃借人については、疑わしい点があっても直ちに退去させられるわけではありません。借地借家法上、契約解除や明渡しには相応の根拠と手続きが必要です。
これに対し、新築アパート投資では、最初の入居者募集段階から、審査基準、契約条項、管理方針を設計しやすいという利点があります。法人契約であれば、事業実態、利用目的、実際の使用者、緊急連絡先などを確認する運用を整えられます。
また、契約書に無断転貸・名義貸しの禁止、実使用者変更時の通知義務、不適切利用時の解除条項などを明記し、管理会社と連携して入居後の利用実態を把握する体制を作ることも重要です。新築でもリスクはゼロではありませんが、「誰に貸すか」「どう管理するか」を入口から設計できる点は、大きな防衛力といえます。
もちろん、すべての入居者を疑ってかかればきりがありません。しかし、法人名義や第三者名義を利用した転貸・無断使用は、いったん発覚しても直ちに排除できるとは限らず、対応には時間とコストがかかります。収益不動産の運営では、利回りや立地だけでなく、「誰に貸すか」「どのような契約条件で貸すか」「入居後にどう管理するか」が資産価値を左右します。入居者選定は、単なる事務手続きではなく、オーナーの信用と物件を守るための重要なリスク管理といえるでしょう。

