●9月CPIの伸びは予想を上回ったが、すでに複数回の利上げが見込まれており過度な警戒は不要。
●コアウィーブ報道を受けた株式市場の反応も行き過ぎ、ただ巨額の設備投資などへの警戒は強い。
●明日のウォーシュ議長発言と、米大手ハイテク企業の決算内容に注目、ショック消化の余地はあり。
9月CPIの伸びは予想を上回ったが、すでに複数回の利上げが見込まれており過度な警戒は不要
10月14日に発表された9月米消費者物価指数(CPI)は総じて予想を上回る伸びとなりました(図表1)。これを受け、市場では10月の利上げ観測が強まり、米10年国債利回りは一時5.32%水準まで上昇、米ドルは対主要通貨で買い優勢の展開となりました。米主要株価指数は軒並み下落しましたが、これは後述の米コアウィーブを巡る懸念の広がりが影響した面も大きいと推測されます。
なお、フェデラルファンド(FF)金利先物市場では、25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の利上げについて、年内1回程度、来年は2回程度の織り込みが進んでいる状況です。先行き複数回の利上げが相応程度見込まれていることを踏まえると、今回のCPIの結果を受けた長期金利上昇、ドル高、株安の持続性は乏しいと思われます。インフレ抑制のための適切な利上げは、むしろ金融市場の安定には好ましいことと考えます。
コアウィーブ報道を受けた株式市場の反応も行き過ぎ、ただ巨額の設備投資などへの警戒は強い
また、この日は英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)が、人工知能(AI)向けクラウドサービスのコアウィーブは生命保険会社からAIインフラ投資用の巨額資金の調達を検討していると報じ、コアウィーブ社の社債価格が急落しました。これを受け、ハイテク企業の資金調達に対する不透明感やAI投資の持続性への懸念が強まり、AI・半導体関連銘柄に売りが広がりました。
FTの報道は、あくまで個別企業に関するもので、AI・半導体業界の成長性を否定するものではないため、同日のAI・半導体関連銘柄の下落は、やや行き過ぎた反応と思われます。ただ、旺盛なAI需要を背景とする大手ハイパースケーラー(大規模クラウド事業者)の巨額の設備投資や、「循環投資」(大手ハイテク企業が新興AI企業に投融資を実施し、その資金で半導体やクラウドサービスを購入してもらう形態)への警戒は根強い模様です。
明日のウォーシュ議長発言と、米大手ハイテク企業の決算内容に注目、ショック消化の余地はあり
この先は、今回のいわゆる米CPIショックと米コアウィーブショックを、市場がどう消化していくか見極めることになると思われます。前者については、明日10月16日、米連邦準備制度理事会(FRB)のウォーシュ議長が国際通貨基金(IMF)のゲオルギエバ専務理事と対談を行います。ここでは、ウォーシュ議長が物価に関する見解を示すか否かが注目されますが、少なくとも物価安定に取り組む姿勢を維持することは、市場に好ましいと考えます。
後者については、大手ハイテク企業の決算内容が重要となります(図表2)。確認すべき点は、①先行きのAI需要と設備投資計画、②設備投資と収益成長のバランス、③フリーキャッシュフロー(純現金収支)の変化、④AI関連売上高における循環投資の構造、⑤AIインフラ投資の資金調達方法、⑥決算発表後の信用リスク動向などであり、いずれも懸念がなければ、AI・半導体関連銘柄に買い戻しの余地は広がるとみています。
※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。
※当レポートの閲覧にあたっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『米CPIショックと米コアウィーブショックを市場はどう消化していくか【三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】』を参照)。
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト
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