タックスヘイブンといえば、税負担の軽さを武器に海外から投資を集める国や地域として知られています。しかし、所得税や法人税を課さない地域は、どのように行政サービスを維持しているのでしょうか。また、税負担が同じように軽くても、投資先として人気のある地域とそうでない地域があるのはなぜでしょうか。国際課税研究所首席研究員の矢内一好氏が、タックスヘイブンをめぐる3つの基本的な疑問を解説します。
税収がなくても行政を維持できる…ケイマン諸島の収入源
次に、②の質問について考えてみましょう。
② 全所得軽課税国等は、税収がなくても行政などを維持できるのでしょうか。
所得税や法人税による税収がなければ、行政サービスを維持するための費用をどのように調達しているのか、という疑問が生じます。
その一例が、ケイマン諸島です。人口が約5万人の同諸島には、8万社を超える会社が登録されているほか、9,000を超える投資ファンドや、760社の自社専用保険会社(キャプティブ)が存在します。こうした会社やファンドなどから徴収する登録料が、同諸島の重要な収入源となっています。
また、ケイマン諸島はカリブ海クルーズの寄港地としても知られており、観光による収入もあります。
このように、所得税や法人税を課さなくても、会社やファンドなどの登録に伴う手数料や観光収入などによって、行政を維持するための財源を確保しているのです。
国際課税研究所首席研究員 博士(会計学)。
中央大学大学院商学研究科修士課程修了。昭和50年東京国税局に勤務、平成2年退職。産能短期大学助教授、日本大学商学部助教授、教授を経て平成14年中央大学商学部教授(平成30年退職)。税務大学校講師、専修大学商学研究科非常勤講師、慶應義塾大学法学研究科非常勤講師、新潟産業大学経済学部非常勤講師、武蔵大学経済学部非常勤講師を歴任。
著書に『国際課税と租税条約』(ぎょうせい、第1回租税資料館賞受賞)、『租税条約の論点』(中央経済社、第26回日本公認会計士協会学術賞)、『移転価格税制の理論』(中央経済社) 、『詳解日米租税条約』(中央経済社)など。
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